109 / 1,903
騒がしい夜の開幕
しおりを挟む俺達がこれからどうするかと話し合っている間に、ユノとエルサは夕食を食べた後満腹になって眠気が来たのか、椅子に座ったまま寝てるユノに抱かれてエルサも寝てる。
まぁ、こちらは魔物達が襲ってきたら返り討ちにすればいいとしか考えて無い組だから、寝ててくれて良いんだけどね。
「リクさんはどう思う?」
「どうするんだリク」
「リクがいれば魔物達を一斉に討伐するのも楽だろう」
「意見を聞かせて、リク」
モニカさんを始め、皆から視線を向けられて意見を求められた。
今まで、話しには加わらず状況を整理してたんだけどな。
「えーと、とりあえず確実なのは、減ったように見えない魔物の数でも、確実に洞窟方面に押し込められている、と」
「そうね」
「でも、魔物達はまだ洞窟付近だけじゃなくて、複数で森に散らばっているから、以前程の数では無くとも、また集落を襲われる可能性はある」
「そうだな」
状況を確認しながら考える。
さすがにいつまでもこの集落にいられるわけじゃない。
大分滞在してるから、マックスさんやマリーさん、ルディさんやカテリーネさん達が心配してるかもしれない。
王都に行く準備もしなきゃいけないしね。
だからと言って、焦って行動してもいい結果にならないかもしれない。
ここで俺は最近試していた探査の魔法の事について相談してみる事にした。
「……最近……ここ数日なんだけど、探査の魔法を色々試しててさ」
「探査の魔法を? 一体何をしていたの?」
森に入る前から、森を出るまでずっと探査の魔法を発動し続けていた。
魔力が大量にあるから出来る事だというのは当然だけど、イメージを保ったまま行動というのがいかに大変かを実感出来た。
まぁ、試したいのはそんな事じゃないんだけどね。
「探査の魔法が一体どれだけの範囲を探れるかを試してたんだ」
「あれ以上広がるの? 今まででも十分な広さなのに……」
俺の魔法に興味があるのか、フィリーナが身を乗り出して聞いて来る。
確かに今までの範囲でも十分だった。
だけど、森全てを把握する事は出来なかったんだ。
大体……半分くらいかな……だから集落からは洞窟程距離が離れてしまうと何もわからなかった。
「色々イメージを試してさ、多分今なら広場から洞窟までの距離を探れると思う」
「そんな距離まで……」
フィリーナを始め、皆探査の範囲に驚いているようだ。
俺はこの探査の魔法イメージを色々試して範囲を広げられないか考えた。
結局、一番やりやすくて範囲が広がったのは最初にイメージした魔力を水として、波紋が広がるというイメージだ。
そのイメージをしっかり固める事で、範囲を広げる事が出来た。
「それで明日、洞窟までの魔物達を調べてみようと思うんだ。一斉討伐をするかしないかはそれから決めるという事で良いと思う」
「そうか……リクの探査ならかなり詳細な情報が得られるな」
「それなら、魔物達がどう動こうとしてるのかもわかりそうね」
「そうね。どうするかはそれからでも遅くないわね」
「リクの魔法頼みというのがいつもになってしまっているが、頼りになるからな」
皆は俺の意見に納得してくれたようだ。
明日は広場で探査魔法で魔物達の詳細を調べよう。
話が纏まり、全ては明日の俺が使う探査から得られる情報次第となって、ユノとエルサを起こしてその場は解散となった。
いつものように風呂あがりの女性陣にドライヤーもどきの魔法を使って髪を乾かした後、俺はエルサと一緒に風呂に入ってエルサのモフモフを手入れして、ユノと俺でエルサを挟んで寝た。
エルサのモフモフを撫でながら寝ると気持ち良く寝られるんだよね。
ユノもそうなのか、寝ながらもエルサの毛を撫でていた。
――――――――――――――――――――
翌朝……とも言えないまだ寝始めてすぐくらいの頃、以前にも一度聞いた鐘の音が集落に響き渡った。
その音で起こされた俺とユノ、エルサはまた前のようにフィリーナとモニカさんに呼びかけられた後、石の家の玄関前に集まった。
まだ眠そうなソフィーさんはモニカさんに引きずられて、アルネは俺達より早く準備を済ませ、皆いつでも戦闘出来る構えだ。
……ソフィーさんだけ、ちょっと不安だけど……。
「また魔物の襲撃か……数は減らしたはずなんだがな……」
「もしかすると、魔物達が自分たちがやられる前にって事かもしれないわね」
「何にしても、前と同じように討伐するだけだわ」
「……リク、以前のように……エルサに乗って……後ろを突くか?」
アルネは眉間に皺を寄せ、フィリーナとモニカさんは気軽に、ソフィーさんだけは眠そうに問いかけて来る。
「ひとまず外に出よう。まずは状況を把握しないと」
「そうね」
魔物達の侵攻経路はウッドイーターを残す事で限定したから今回も西の入り口からだとは思うけど、一応確かめておかないといけない。
エルサに乗って空から確かめるのも手だけど、それをするにもまずは外に出ないとエルサが大きくなれないからね。
俺達が外に出ると、以前と同じように集落のエルフが俺達の所へ走り込んできた。
良いタイミングだね。
「リク様、皆さん。また魔物の襲撃です! ……ですが」
「ん? どうしたの、何かあったの?」
走り込んできたエルフが魔物の襲撃を伝えた後に言い淀んだ。
それに気付いたフィリーナがそのエルフに近付き問いただす。
「今回の魔物達が今までの魔物達と違うんだ」
「今までと違う……? オーガやオークじゃないの?」
「あれを見てくれ」
そのエルフはフィリーナの疑問に、集落入り口の方を指さす事で応えた。
俺達が指を指された場所、集落の入り口を見ると、その方向……さすがに家があるのでその場所が見えるわけじゃないけど、入り口がある場所の上空が赤く光るのが見えた。
「あれは……火? まさか!?」
「ええ、ゴーストが大量に集まっている。一応、柵に掛けてある氷の魔法のおかげで、集落内まで火は付いていないが……このままだと……」
「わかった、すぐに向かうよ!」
「お願いします」
俺がエルフにそう伝えると、まだ他に伝達する場所があるのか、来た道とは別の道を走って行った。
ゴーストか……火の魔法を使うから危険なのは把握してたけど、まさか数を減らしてもまだ大量に攻めて来るなんて……。
「リク、これは以前のように後ろからとはいかないわね」
「そうだな。入り口付近はエルフ達が集まってるだろうし……」
エルフ達がいるからエルサで飛んで行っても降りる場所があるかどうかわからない。
「フィリーナ、アルネ、案内してくれ。走って行こう。エルサだと降りられる場所があるかわからない」
「そうね」
「わかった」
俺はアルネとフィリーナに声を掛けて走り出す。
二人は俺達の先頭を走ってもらい、複雑な道の案内。
モニカさんは眠そうなソフィーさんの手を持って後ろを走って追いかけて来る。
ユノは俺の隣で一緒に走ってるが、こういう時しっかり起きれるユノは偉いな。
エルサなんて、俺の頭にくっ付いてまた寝なおしてるからな……。
今回は走って駆けつけるため、以前より時間がかかるけど、それでも早く辿り着いてエルフや集落に出る被害が少なるように願いながら走った。
ぜも、全力では走れないのはもどかしい……全力だとフィリーナやアルネを置いて行く事になるからね。
そうしたらまだ道を覚えていない俺は確実に道に迷ってしまうからね……。
1
お気に入りに追加
2,152
あなたにおすすめの小説
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
食うために軍人になりました。
KBT
ファンタジー
ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。
しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。
このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。
そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。
父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。
それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。
両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。
軍と言っても、のどかな田舎の軍。
リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。
おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。
その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。
生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。
剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
「お前のような奴はパーティーに必要ない」と追放された錬金術師は自由に生きる~ポーション作ってたらいつの間にか最強になってました~
平山和人
ファンタジー
錬金術師のカイトは役立たずを理由にパーティーから追放されてしまう。自由を手に入れたカイトは世界中を気ままに旅することにした。
しかし、カイトは気づいていなかった。彼の作るポーションはどんな病気をも治す万能薬であることを。
カイトは旅をしていくうちに、薬神として崇められることになるのだが、彼は今日も無自覚に人々を救うのであった。
一方、カイトを追放したパーティーはカイトを失ったことで没落の道を歩むことになるのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる