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第59話 勇者、サラちゃんと戦う

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「サラマンダーって喋れるのね……」
「サラちゃん……可愛いなのよ」
「モゴー! モゴー!」
「見たところ、人間と魔族よねー? こんな所までどうしたのー? あ、炎袋が欲しいの? でもごめんねー、今は産卵中だから炎袋はあげられないのー」
「産卵中じゃ無かったらくれるのか……」
「人と争いたくないしねー。無益な争いをするくらいなら、炎袋を差し出すわよー?」

 平和主義なサラマンダーらしい。

「まぁ、俺達は炎袋が欲しくて来たわけじゃないんだがな……」
「じゃあ、どうして来たのー?」
「卵を守るためだ。サラマンダーは、自分達で産んだ卵を食うんだろ?」
「あぁ、成る程ねー。確かに私達は、自分達で産んだ卵を食べるわねー。かわいそうな事に……」

 かわいそうって……自分達でやってる事だろうに。
 しかしこのサラマンダー……サラちゃんと話してると気が抜けるな……喋り方の問題か?

「それで貴方達は卵を守りに来たんだねー、ふーん……」

 何かを考えているサラちゃん。
 何か引っかかる事でもあるのか?

「どうした?」
「んー、どうしても守らなきゃいけないのかなー、と思ってねー」
「卵を守らなきゃ、絶滅するだろ? そうなると炎袋を手に入れられなくなるからな」
「ふーん、そうなのねー」

 段々と、サラちゃんの声が低くなっていく。
 何だ、どうかしたのか?

「サラちゃん、どうかしたの?」
「何を考えてるなのよ?」
「トカゲって、喋る事ができるんですねー」

 リィムとマイアは、サラちゃんの雰囲気が変わって行くのを感じて首を傾げてる。
 フランだけは、暢気に喋るサラちゃんを感心するように眺めてた……というか、いつの間に魔法が解けて喋れるようになったんだ? せっかく静かだったのに。
 少しの間サラちゃんが黙り、沈黙がその場を支配する。
 ……ん、段々熱くなって来たような……?
 魔法があるから大丈夫だが、少しだけ汗ばむような……?

「……私達の食料を奪わせないわよー!」
「サラちゃん!?」

 温度が上がって来た事を気にしていたら、サラちゃんが急に牙を剥き、襲い掛かって来た!
 口から火のブレスが吐き出され、俺達に降りかかる。

「くっ!」
「大丈夫だ。魔法が効いてるからな」
「ちょっと熱いけど、我慢できるくらいなのよ」
「サラちゃんがおかしくなっちゃった……」

 サラちゃんの吐き出したブレスは俺達を覆い尽くしたが、俺の掛けた魔法で熱さはほとんど感じない。
 マグマには触れないが、火を防ぐくらいはできる……燃えないように魔法で覆ってるからな、火を通さない。

「卵を食べない事には反対なようだ……平和主義は何処へ行ったんだか……」
「やるしかないのね……」
「鱗が硬いから、サラマンダーは嫌いなのよ」
「サラちゃんがおかしくなっちゃった……」

 フランはそろそろそこから離れろ。
 サラちゃんからの火を浴びながら、俺は剣を抜いて構える。
 リィムもマイアも、それぞれ構えてるが、それは必要ないぞ。
 特にリィム……お前は素手の格闘が得意だからな……サラちゃんを殴ったら、リィムの手がボロボロになってしまうだろう。

「二人は、このままここにいれば良い」
「どうするの、カーライル?」
「何をするなのよ?」
「こうするんだ……ふっ!」

 サラちゃんから降りかかる火の中を飛び出し、空中へ飛び上がる。
 そのままサラちゃんの頭上まで来て、剣で一閃……と思ったけど柄の部分で殴るだけにしておいた。
 普通に話せる相手を、剣で斬るのは気が咎めるからな……。
 ドガッという音と主に、サラちゃんから放たれる火のブレスが止まり、地面を揺らしながら、全身を地面に横たわらせる。
 ……目も白目向いてるし、完全に気絶したか。

「……カーライル、こんな事できたの?」
「凄い力なのよ。今まで見た事なかったなのよ」
「ふふん、どんなもんですか」
「お前は何もやってないだろ、フラン」

 何故かフランが、自己主張の激しいお胸を誇るようにしているが、お前はただサラちゃんが襲って来た事に驚いてただけだろうが。


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