私、去年から祈ってる

あおなゆみ

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夢の製造者

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「待っててくれたの?」

そう言われ、私はいつも、そこで目覚めてしまう。
目覚めた時は、いつも虚しい。
だって、夢の中の私はずっと、あの人を待っていたということで。
待っていたということは、これからようやく何かが始まるはずだったのに。



「待っててくれたの?」

そう言われる未来を願いながら、あの人を待ち続けたのはいつのことだっただろう。
あの人は結局来なかった。
そして、二度と会うこともなかった。



「待っててくれたの?」

夢には、自分が経験したこと、見たものが必ず現れる。
完全再現とはいかなくても、沢山の要素が混ざったり、誰にも分からないようなヒントみたいになったりして、表現される。
欲望だって含まれる。



「待っててくれたの?」

その言葉を聞きたかった私は、あの日の後悔を生きているようだ。
約束したこと自体を後悔して、出会ったこと自体を後悔してもみた。



「待っててくれたの?」

夢を支配できないのなら、私は一生、あの日に影響を受けた夢を見続けるのだろう。
それを繰り返せば、あの日の感情を、騙し騙し保ち続けることもできるのだろうか。
来なかったあの人を恨むのではなく、来なかったあの人が私の夢の製造者だと。
そう思えるくらいなら、この気持ちは多少、救われるかも知れない。
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