35 / 41
新生活
しおりを挟む
伊之助さんと音楽活動を始めて半年が過ぎていた。
私は変わらずにスーパーでバイトを続け、伊之助さんは新聞配達と、コールセンターのバイトをしている。
「伊之助、声は良いし、聞き取りやすいって褒められたらしいよ。割と向いてるみたい。伊之助がよく深夜に観てた通販番組のところなの」
自分の事のように喜ぶ和美さんが教えてくれた。
確かに最近の伊之助さんは生き生きしている気がする。
まあ、出会った時から生き生きはしていたけれど、自信が見られるようになった気がする。
動じない男らしさが生まれたのかもしれない。
「最近どう?なんか変わった事ある?」
和美さんの左手薬指には婚約指輪がある。
そういう事だ。
「そうだ。妹の結婚式に一緒に来ませんか?和美さんの結婚式の参考にしてもいいですし」
「え?会った事ないのにいいのかな?」
「はい。許可は得てます」
「嬉しい!楽しみ!」
「実は、妹の為に歌おうと思っていて」
「伊之助も?」
「はい。承諾してくれました」
「最近、伊之助も人前に慣れてきたよね。最初のオーディションの時なんか、練習でさえ言葉はスラスラ出てこないし、おどおどしてたから」
私たちは頻繁にライブをしていた。
ライブハウスだったり、カフェだったり。
デモテープも作った。
「頼りにしてます。伊之助さんがいると、あまり緊張せずにいられるから」
「本当に二人は出会うべくして出会ったと思うよ」
「そうですか?」
「うん。二人の声が合わさった時、鳥肌がたったもん!感動した。妹さんの結婚式も楽しみだな~」
「撮影だけお願いします。始めて歌う曲だから」
「任せて!」
和美さんの次は妹とカフェで待ち合わせしていた。
「お姉ちゃん!こっち!」
妹が窓際の席から手を振る。
「お待たせ。あれ?みな香、また綺麗になった?それ以上綺麗になってどうするの?」
妹は式が近づくに連れて綺麗になってゆく。
少し痩せたのもあるだろう。
結婚式をするのは大変と聞くけれど、疲れは見受けられなかった。
「お姉ちゃんさ。すっごい明るくなったよね」
「本当?前からじゃない?じゃ...ないよね...?」
「そうだね。前も暗いわけじゃないけど、そんなに明るくなかったよね。誰がお姉ちゃんを変えたわけ?ん?」
「音楽だよ。みな香にビシッと言われて、目が覚めたの」
「まあ、お姉ちゃんを変えた人に結婚式で会えるからいいけど~」
「楽しみにしてて。本当に素敵な声だから。それに、良い人だし...」
「うん。本当に楽しみにしてる」
半年で私の生活は変わった。
単純に、努力する事を始めただけなのかもしれない。
そして、恋するという事。
前向きでいる事。
一緒に進む人がいる事。
ドラマみたいだ。
これまでは、ドラマに逃げていたけれど、今は一生懸命生きて、ドラマのように輝いている。
「お姉ちゃん、なんか手振ってる人いるけど...」
「え?」
窓の外を見ると、伊之助さんがこっちに向かって手を振っていた。
少しずつ近づいてくる。
「もしかして、お姉ちゃんを変えた...」
「そうそう。私を変えた人」
「良い笑顔だね」
「でしょ。この笑顔は反則でしょ」
伊之助さんは何やらチラシを持ってこっちに見せている。
私は変わらずにスーパーでバイトを続け、伊之助さんは新聞配達と、コールセンターのバイトをしている。
「伊之助、声は良いし、聞き取りやすいって褒められたらしいよ。割と向いてるみたい。伊之助がよく深夜に観てた通販番組のところなの」
自分の事のように喜ぶ和美さんが教えてくれた。
確かに最近の伊之助さんは生き生きしている気がする。
まあ、出会った時から生き生きはしていたけれど、自信が見られるようになった気がする。
動じない男らしさが生まれたのかもしれない。
「最近どう?なんか変わった事ある?」
和美さんの左手薬指には婚約指輪がある。
そういう事だ。
「そうだ。妹の結婚式に一緒に来ませんか?和美さんの結婚式の参考にしてもいいですし」
「え?会った事ないのにいいのかな?」
「はい。許可は得てます」
「嬉しい!楽しみ!」
「実は、妹の為に歌おうと思っていて」
「伊之助も?」
「はい。承諾してくれました」
「最近、伊之助も人前に慣れてきたよね。最初のオーディションの時なんか、練習でさえ言葉はスラスラ出てこないし、おどおどしてたから」
私たちは頻繁にライブをしていた。
ライブハウスだったり、カフェだったり。
デモテープも作った。
「頼りにしてます。伊之助さんがいると、あまり緊張せずにいられるから」
「本当に二人は出会うべくして出会ったと思うよ」
「そうですか?」
「うん。二人の声が合わさった時、鳥肌がたったもん!感動した。妹さんの結婚式も楽しみだな~」
「撮影だけお願いします。始めて歌う曲だから」
「任せて!」
和美さんの次は妹とカフェで待ち合わせしていた。
「お姉ちゃん!こっち!」
妹が窓際の席から手を振る。
「お待たせ。あれ?みな香、また綺麗になった?それ以上綺麗になってどうするの?」
妹は式が近づくに連れて綺麗になってゆく。
少し痩せたのもあるだろう。
結婚式をするのは大変と聞くけれど、疲れは見受けられなかった。
「お姉ちゃんさ。すっごい明るくなったよね」
「本当?前からじゃない?じゃ...ないよね...?」
「そうだね。前も暗いわけじゃないけど、そんなに明るくなかったよね。誰がお姉ちゃんを変えたわけ?ん?」
「音楽だよ。みな香にビシッと言われて、目が覚めたの」
「まあ、お姉ちゃんを変えた人に結婚式で会えるからいいけど~」
「楽しみにしてて。本当に素敵な声だから。それに、良い人だし...」
「うん。本当に楽しみにしてる」
半年で私の生活は変わった。
単純に、努力する事を始めただけなのかもしれない。
そして、恋するという事。
前向きでいる事。
一緒に進む人がいる事。
ドラマみたいだ。
これまでは、ドラマに逃げていたけれど、今は一生懸命生きて、ドラマのように輝いている。
「お姉ちゃん、なんか手振ってる人いるけど...」
「え?」
窓の外を見ると、伊之助さんがこっちに向かって手を振っていた。
少しずつ近づいてくる。
「もしかして、お姉ちゃんを変えた...」
「そうそう。私を変えた人」
「良い笑顔だね」
「でしょ。この笑顔は反則でしょ」
伊之助さんは何やらチラシを持ってこっちに見せている。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
史織物語
夢のもつれ
ライト文芸
地味であまり器用とは言えない史織が好きではない引っ越しのトラックで、本当の自分に気づいていく。
ヴァレンタイン・デイに派手にやらかした前の彼、ぼんやりしているところがかえっていい今の彼……そして、意外な新たなきっかけ。
短い章ごとの詩で史織の秘めた想いが綴られる。
選ばれたのは美人の親友
杉本凪咲
恋愛
侯爵令息ルドガーの妻となったエルは、良き妻になろうと奮闘していた。しかし突然にルドガーはエルに離婚を宣言し、あろうことかエルの親友であるレベッカと関係を持った。悔しさと怒りで泣き叫ぶエルだが、最後には離婚を決意して縁を切る。程なくして、そんな彼女に新しい縁談が舞い込んできたが、縁を切ったはずのレベッカが現れる。
野良インコと元飼主~山で高校生活送ります~
浅葱
ライト文芸
小学生の頃、不注意で逃がしてしまったオカメインコと山の中の高校で再会した少年。
男子高校生たちと生き物たちのわちゃわちゃ青春物語、ここに開幕!
オカメインコはおとなしく臆病だと言われているのに、再会したピー太は目つきも鋭く凶暴になっていた。
学校側に乞われて男子校の治安維持部隊をしているピー太。
ピー太、お前はいったいこの学校で何をやってるわけ?
頭がよすぎるのとサバイバル生活ですっかり強くなったオカメインコと、
なかなか背が伸びなくてちっちゃいとからかわれる高校生男子が織りなす物語です。
周りもなかなか個性的ですが、主人公以外にはBLっぽい内容もありますのでご注意ください。(主人公はBLになりません)
ハッピーエンドです。R15は保険です。
表紙の写真は写真ACさんからお借りしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる