深い青を愛してる

あおなゆみ

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僕らはお互いの深い青の夜に存在していた

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 懐かしいその場所で、彼女は僕に優しい笑顔を見せた。
少し照れてもいる彼女は、幼さの面影よりも、現在の美しさが目立った。
小さな声で、

「久しぶりだね」

と言う僕に、

「はい。会いたかったです」

と真っ直ぐに伝えてくれる。


 図書館の外に出て、あの日と同じベンチに座った。

「僕がここに来た理由も、君がここで僕を待っていた理由も言葉にするのは難しいけれど...」

言葉に詰まる僕を見て、彼女が言葉を続けた。
あの日、発作を起こしたかのように具合の悪くなった僕の手を引いた彼女と同じだ。

「私の夜に...深い青の夜の中で、私を救ってくれたのはあなたでした」

彼女の瞳は涙で潤んでいた。
それは悲しみの涙ではなく、感動と言えば大袈裟で、喜びといえば少し陳腐な、表現できない涙だった。
僕ら二人だけの、涙だった。

 彼女は音楽を辞めた僕に、何かを訴え続けていた。
何を恐れていたのか、それすらはっきりしない僕なんかの為に。
 あのバンドメンバーの笑顔の写真の事は、よく思い出していた。
でもどこか使命感のようなものがあり、罪悪感を忘れないために、習慣的に思い出すようにしていた部分もある。
彼らが僕のせいで音楽を辞めたという確信もないのに。
音楽を捨てた僕は、まだ、彼女の深い青の夜でいられるのだろうか。

「僕はもう、音楽を始める事はないと思います。でもあなたは物語を描き続けている。僕を救い続けてくれる」

また優しい笑顔になる彼女。
やっぱり、時は流れたんだなと実感する。
最初に出会った日から6年。
彼女は美しい大人、そして素晴らしい作家になった。
僕は想いを伝える義務がある。

「あの日の約束があったから、また絶対に会いたかった。それに、僕を救い続けてくれた人だから、ここで出会った日よりも前から会ってみたかった」

心のそばにずっと居た人なのに、一番遠い人でもあった。
その切なさはある意味、誰だって経験した事があるのかもしれない。


「私は正直、あなたの音楽と、あの日の出会いだけで生きていくのに限界を感じました。これから、色んな話がしてみたいです」

「僕も、そうしたい。だから、会いに来た」

そしていつか。
離れ離れだった深い青の夜を共に過ごしたい、そう思った。
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