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さいこ

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後日談:4 恋人

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 誉さんはあれからというもの、たびたび利奈に会いに来ている 
 
 過去のベビーシッターの話もそうだけど子供大好きなんじゃん…
 だったらいっそのこと、自分のお子を作らなくて大丈夫なのかと要らんことを考えてしまう

 まぁ男性は焦らなくともお子は作れるのだろうと理解はしていますが


 そして今日も、午後からうちに来ている誉さん 
 おそらく開店準備ギリまでの時間を過ごして行くのだろう

 「誉さんも飽きないねぇ~」
  
 私もその間休めるしシッタ―代お出ししなくていいのかしら?
 なんて軽口をたたく


 「…慶ちゃんさぁ、俺も子供欲しくなっちゃったなぁ…」

 きたこれ!!!!!

 「え?いいじゃん!作ろうよ!!」 

 私が乗り気になってどうする?って話だけど
 こんなに人の子を可愛がれるんだから、自分のお子なんて1万倍可愛いに決まってますやん!
 この人なら本当に大事にしてくれそうである

 「まぁ、いいんだけどねぇ…」

 含みのある言い方をするマスター
 なにか問題があるのだろうか…


 「今いい感じの人がさぁ、男なのよ…」

 あー男ね…男…、男性???

 「え…と、なにか手立ては?」

 頭の処理が追い付かないまま言葉だけが口をついて出る

 「…プッ」
 
 手立てってなによ~、とマスターが爆笑した


 いや…だって相手が男性なら、お子を儲けるのになにか手立てを講じないといけないのかな?と瞬時に考えてしまったわけで…

 「まぁ純粋にね、こうして見てたら子供欲しいと思うってだけよ」

 そうか、今のお相手とどうにか…という話では無いのか…

 じゃなくて!!
 マスター男性もいけるんかい!
 ってトコロが気になってますけども


 「ちょっと、いい人居たなら紹介してよ~」

 マスターが自分のことを教えてくれるのは珍しいので、めちゃくちゃ気になる気持ちを封じて普通にその方のことに触れてみる

 「ん~気が向いたらねぇ」

 …そっか、マスターはべつに1人じゃないんだ、ということに安心した

 マスターだって店に立っている時間以外はプライベートがあるわけだし、1人で歩いてたら周りが放っとかないんだろうなぁ
 それにマスターの選ぶ人がどんな人なのか妙に気になった


 ーーーその夜

 夕飯のときに理人に話す
 マスターの恋人が男性であることを←
 
 「…理人、知ってた?」

 それを聞いた理人の反応も興味深かった

 「ん~知らなかったけど、なんっか分かるなぁ~」

 と…

 
 元々マスターは「男性だから・女性だから」に囚われない傾向があったようで、それが恋愛対象にも該当しているのでは?と、理人の見立てではそういうことらしい
 
 マスターに関しては20代の頃の「女性との結婚歴」しか知らなかった
 しかし男性も…となると、まぁ友達の枠に収まっている私や理人というのは性的な対象では無かったということか


 「でもなぁ、あの人にガチで迫られたら…俺も分かんなかったかも!」

 「おい!!!」

 悔しいけど、私にも分からんでもないのが正直なトコロだ
 マスターにはそこはかとなく漂う色気があるもの

 そのくせ、恋人の影をまったく見せないでやることやってんだから…
 プライベートで付き合うまではミステリアスな男みが半端なかったもんなぁ


 「でもさ、それを話してくれたってことは会わせたいんじゃない?」

 いやぁ…
 なんか私が調子に乗って「子供作ればいいじゃん」なんて軽々しく言っちゃったから、それを話す流れになってしまったんじゃないかと、今思えばそうも考えられて申し訳ない気持ちになった

 「いやいや、見ててみな?今に連れてくるって」

 理人は自信ありげにそう言った


 それから3日後

 マスターから「次の日曜時間ある?」とのメッセージが来た
 理人に確認するも「なんもない」とのことなので、そのように返信をした

 少しして「連れも一緒に行く」と…

 「り、理人ぉ~~~!!!」

 なんだろう、このてんやわんやは!
 私が盛り上がるのもしょうがないよね、あのマスターの「恋人」が拝めるチャンスに巡り合えたのだから


 
 ーーーそして日曜日  

 マスターたちと夕飯を一緒にしようということで、利奈をパパに任せ張り切って支度をする私

 「ママめっちゃ楽しみみたいだね~」

 利奈はパパに遊んでもらって上機嫌だ
 理人も器用に利奈の扱いを覚えてうまいことやってくれていて助かる

 この父娘2人のモチャモチャを眺めるのも楽しい 

 
 そうこうしているうち、インターホンが鳴った 
 本日の主役のお出ましに胸が高鳴る…

 玄関でのお出迎えは理人に出てもらい、私は利奈とリビングで待機する
 向こうで話をしている声が少し聞こえるが内容までは分からなかった

 「慶ちゃん、利奈は元気にしてるぅ~?」

 いつものテンションでマスターが利奈の顔を覗き込む
 その後ろから、きっちりとスーツを身に着けた大人の男が入ってきた

 「あ…これ、は、奥様…」

 低音ボイスでそう言ったビジネスマン…いや…


 「…へ?…瀧さん??」

 顔を見るなり見覚えのある人でパニックになる

 私と理人の撮影会でお世話になり、パーティーでの体調不良の時にご迷惑をおかけした、泉さん&瀧さんの、あの瀧さん…


 「なんで…スーツなんか着てるんですか?」

 そう、この方わざわざスーツを着るシーンなんか無いんじゃなかろうかと思いそう聞いた
  
 「いや俺だってさぁ…まさかここに来るとは思ってねぇって!」
 
 めちゃくちゃバツが悪そうにする瀧さん…
 そうかぁ、きっと恋人が知人に紹介するっていうからちゃんとしたかったんだねぇ、好感度爆上がりですわ

 「ほらぁ~、だから普段通りでいいって言ったのに」

 と、マスターは楽しそうに笑った 

 …は?こんな顔して笑うんだ?可愛いじゃないの…



 なにはともあれ全員顔見知りであったというオチ
 この2人の関係については、また別のお話かもしれない 
 
 




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