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さいこ

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プライド

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 優の部屋に来てみれば、肝心の百海が居なかった

 しかし優の昇進の話を聞くことが出来た

 
 バタンと玄関の開く音がすると「遅くなりましたぁ!」と百海が入ってきた
 手には酒のボトルが握られていた…さすが百海だ、と可笑しくなった

 「あれ?優くん先に出してくれれば良かったのに…」

 と2人でキッチンに立ち、なんだかんだとやり始めた


 「2人…初々しいね~」

 理人がそう言った
 まぁ私と理人はもう一緒に生活して時間が経つから、確かにあの2人のような初々しさは無い

 私たちが座っている前に次々と出される酒の肴…
 酒のボトルとグラスもテーブルに並んだ


 優と百海もやっと座ると、先ほど握りしめていたボトルを開ける

 「ママさんはこれがいいと思って買ってきました」

 と、フルートグラスにスパークリングのグレープジュースを注いでくれた

 「俺も運転だからそれ貰っていい?」

 と理人もジュースにした

 
 酒豪共はグラスにシャンパンを注ぎ乾杯する

 「慶さんお仕事お疲れさまでした!」
 
 と百海が労いの言葉を

 「それと、結婚おめでとう~!」
 
 と優がお祝いの言葉をくれた

 
 
 「…ありがとうだけどさ、2人がどうなってるのか教えてよ」

 私はこのところ自分のことでドタバタしていたので、落ち着いた今こそ2人の話をちゃんと聞きたかった

 「え~と、どこから話せば…」

 と言う百海に

 「あんた最初のデートで、優くん帰っちゃった…って言ってたでしょ?そこからお願いします!」

 「そこから…」

 

 「まぁあのデートのあとは、次のデート、またその次のデート…って感じで会うようになったんですよ」

 ふむふむ
 デートの後メッセージのやり取りが頻繁になり次のデート、という流れか
 
 順調に交際をスタートするや否や、優がサロンのほうを任されることになり会える時間が激減した
 だったら!と不屈の闘志を燃やす百海が「じゃあ夕飯の用意しようか?」と申し出た

 百海は優の部屋で夕飯の支度をして帰りを待つ
 ヘロヘロになって帰って来た優が、自分の用意したご飯を「おいしい!おいしい!!」と言って食べるのを眺めて帰る


 「…つーわけで、このところ優くんと慶さんの部屋で会ってまして」

 という百海

 「じゃあ、完全に付き合ってるってこと?」

 「慶さん!それ優くんに追及して!!」

 え?…てことは、付き合うとはっきり決まったわけでは…無さそう…か?
 おい、優よ…男としてそれはどうなんだ…

 という目で優を睨む


 「あ…それでね、最初はただ新店の手伝いのつもりでいたけど、今はちゃんと店長の役職付いて給料も上がったから自分で部屋を借りました!」
 
 おやおや、それはいいことだ
 
 …ん?
 
 「借りました??」

 もう借りてるってこと??

 「そう、今自分で少しづつ荷物運んでて、目処が立ったら姉ちゃんに報告しようと思って」

  
 …だから荷物がなんか少なかったのね
 まぁいいだろう、頑張ってみたまえ若造よ

 「で、理人さんが大家さんだからよろしく…」

 うん?
 私なにも聞いてませんけど?と理人を見ると
 うふふふ、と嬉しそうにしている…
 
 「ちょうどいい場所に居住用が空いてたもんだから」

 と言うが、なんだか嘘くさい…本当か?
 理人は私の耳元で「ギャルんちのそば!」と教えてくれた、策士かw
 
 
 「その引っ越し、百海は知ってるんだよね?」

 「はいもちろん!手伝ってるんで」

 あ~、色々ハッキリしてくれない人に尽くしちゃう系かぁ~…
 ちょっと胸が痛くなった


 「お前…百海の期待に応えられないならそう言いな?」

 ちょっと言い方が悪いが、姉として女として、そういうことである

 「俺ね、任された店が動きだして、自分の生活もちゃんと出来るようになるまでは彼女作る余裕ない…」

 う~~~~ん、一人前の人間になるためには、それは一理あるな

 「…でも、もしそれまで待ってくれるなら、俺はももちゃんに彼女になって欲しい」


 …はいキターーーーーッ!!!

 これですよ!これからの2人に幸あれ! 
 百海が玉砕して泣かされなくて良かった!!
 私は理人の手をぎゅっと握った

  
 「…じゃあ毎日ご飯作って、気長に待ちますかぁ~」

 百海は明るい未来があると分かったからかスッキリした顔をしていた
 優の世話は頼んだよ百海…


  
 そうして、これが送別会だったのかどうかも分からないままお開きとなる

 「じゃあまたね」

 外まで見送りに来るという2人を断り、理人と外へ出た


 「…優の部屋のこと、隠してたの?」

 車の中で理人に聞いてみる

 「だって優くんが自分で言うからって…それに、男の子のプライドもあるんだと思うよ」

 プライドねぇ~
 自分のことがちゃんと出来るまでは胸を張って百海を迎えられないって感じはなんとなく分かるよ

 「とにかく優くんは、ギャルのことちゃんと考えてるってことじゃん」

 それはそう思う
 

 ちゃんと考えて、後悔の無いようにして欲しい



 …そろそろ家に到着しようかというところで理人のスマホが鳴った
 一旦車を端に寄せスマホを確認する理人

 「テオだ…」

 そう言って通話に出た

 「…うん、分かった、とりあえず向かうね」

 と理人は通話を終えた


 少しの間をおいて

 「慶さん」

 と、静かな声で言われ少し緊張が走る

 「テオさん、なにかあったの?」

 
 また少し状況を整理するような間があり

 「無事に生まれたって…」
 
 
 あぁ、エマちゃん…とうとう天使とご対面できたんだ…

 理人がゆっくりと車を走らせた
 
 
 




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