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さいこ

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退職

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 …時は経ち、私は妊娠5か月となった

 初期流産の可能性や「つわり」が一旦落ち着くことから「安定期」と呼ばれている期間とのことだが、幸い私には特につわりの症状は無かった

 私は今回の検診で入手した重大な事実を持って家に帰る

 
 
 「…おかえりぃ!」

 玄関に入るなり理人が飛んで迎えに出てきた
 本当は車で送っていくという理人を、体調が悪いわけでも無いし病人じゃないんだからと断って1人で検診に行ったのだ
 
 「ただいま」

 私は洗面所へ行き手を洗う
 それからリビングのソファに座った

 理人はデカフェを入れてくれた

 「おーい、ママは外でナンパされなかったかぁ~?」

 少し大きくなってきた私のお腹に口を付けて理人が言った
 そのあと返事を聞こうと耳を付けている

 …さすがに返事はこないと思うが…?


 「エマちゃんとこは甥っ子だったっけ?」
 
 と、そろそろ出産を控えているエマちゃんの話をした

 「そ!もうレオンにするって名前も決まったみたいだよ」

 へぇ~、レオンくん!かぁ~
 早く会いたいとワクワクしてしまう


 「理人はお腹の子、どっちか知りたい?」


 …私は前回の検診で
 「ちょっと違ってたらパパが可哀想だから、次もう一回確認するまで言わないでおいて」
 と医師から言われており、先んじて知っていた我が子の性別を本日!ガッチリ確定してもらったのだった


 「…へ?なんでなんでなんで、なんで…?!!」  

 理人が壊れた
 興奮のあまり「なんで」しか言えなくなってしまった
 
 「ん~待って!…聞いたら楽しみが…でもなぁ~…」

 うんうん考えたまえ
 男児、女児、どちらであっても君の子だ

 
 「慶さん…お、教えて」

 良し、腹は決めたか…私ももう隠さなくていいんだな?

 「言うよ?」

 「はい…いいよっ!」



 「理人が最初に抱っこするのは…娘です」


 「あ…女の子…女の子なんだ…」


 そう、理人は女の子のパパになるのである
 お腹に顔をくっ付けた理人

 「慶さん…ありがとう…うぅっ」

 あ~あ、パパは嬉し過ぎて泣いちゃったよ
 でもこうして嬉しいときに泣いちゃうパパだから、あなたと私で支えて行こうね
 
 きっとパパにパワーをくれる子に違いない



 「慶さん、俺決めたことがあるの」

 と、理人はなんだか改まった
 
 「俺は、慶さんには家に居て欲しいと思ってる…」
  
 …専業主婦ってことね
 
 「毎日俺と天使のそばに居て欲しい」

 理人の希望は分かった
 私も今までは自分の生活のために仕事をしていただけだから、とはいっても恵まれた職場で仕事は嫌いじゃなかったけれど…
 
 そこは理人が希望するなら家に居てあげようじゃないか

 
 「…じゃあ退職の報告をしないとね」

 「無理…してない?」

 「してないよ、家でゆっくり出来るんだもん!理人が倍働いてくれるんだよね?」

 「…が、頑張りま…す(震え)」


 こうして仕事は辞めて、また両家へ報告に行き入籍の準備を進める方向に決まった

 
 
 

ーーーーーーーーーー





 私は職場へ退職の相談をした
 めでたいことだからとすんなり受けてくれた
 
 従業員一同へも代表が報告してくれ、事務の引継ぎが完了次第、有給でも消化して大事にしなさいと送り出して貰うこととなった
 
 私の仕事に引継ぎは必要ない、すでに百海に叩きこんであるからだ
 私の穴を補充するのであれば大変なのは新人に仕事を教えることになる百海だ 

 
 その百海と並んでいつも通りに仕事をする

 「…辞めちゃうんだ」

 そう百海が言った

 「うん、専業主婦ってやつだねぇ」

 百海とは2年弱一緒に働いた、寂しくなるなぁ
 

 「慶さん、あたしのこと面倒見てくれてあり…が……」

 そこまで言って、「うわぁ~っ!」と豪快に泣き出した百海
 職員たちは遠巻きに優しい目で眺めていた 
 
 本当に、百海と一緒に居た時間は私も楽しかった
 公私ともに妹と思えるほどの友人になった
 こんな人間関係は、この先誰とも築くことは出来ないだろうと思う
 
 
 「会社とは別で送別会やります…」

 「…2度と会えなくなるわけじゃあるまいし~」

 「あたしが話したいこととかあるし」

 なるほどね、まぁ私は会社に来なくなってしまうのだから百海の気が済むまで付き合いますよ…
 てか、別に普通に会えばいいじゃん!




 それから…
 両家それぞれに報告を考えていたが、「顔合わせ」という形で一緒に済ませてもいいかという話になった
 今はちょうど理人のお母様も日本に居るのでスケジュールを組んだ

 緊張はしたが、以前のような体調不良は無かった
 
 理人から子供を授かった報告と、2人で結婚を決めたという旨を報告した
 うちの両親も理人の両親も喜んでくれたと思う

 結婚式は子供が生まれた後、落ち着いたら挙げようという話になった
 
 
 こうして話を進めているうち、これから先は「平川家」の人間になるのかぁ…
 と、なんだか不思議な気持ちになった

 
 




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