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さいこ

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たまご

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 私の居る控室
 喫煙場所も確保していることから時間までここで過ごそうと決めた
 
 21:00開始のパーティーだが時間は1時間を切った
 
 「そろそろお着替えしておきましょう」

 泉さんに手伝ってもらいドレスに着替える
 この日もアクセサリーを用意していただいてそれも身に着けた

 理人から「着替えは済んだか」というメッセージが来たので即返信をした 
 あまり動きたくなかったので水分はちょこちょこ口に含む程度に取り、煙草を吸って時間が過ぎる

 
 コンコン、とノックの音の後

 「入っても大丈夫~?」

 という理人の声が聞こえた
 泉さんが「どうぞ」と中に迎え入れる

 理人は毛先を巻いた髪を後ろで緩いお団子にまとめていた
 シャツをはだけた胸元からは美しいタトゥーがチラ見えというセクシースタイル
 艶のある赤いジャケットが世界一似合っていた

 
 泉さんがポーっと理人を眺めていて、目が完全にハートになっていた
 これがこのバシッと決めた理人を見た一般女性の反応なのだと思った

 「…さっき慶さんのリップでめちゃめちゃ怒られた」

 いや、そんな報告いらんけど

 「怒鳴られてんのこっちにまで聞こえてたよ…」

 自分もドレスに着替えてはいたものの、理人の格好を見るといよいよか…と緊張が走る
 

 並んだ椅子に座り、胃痛がしてきた私の手を握ってくれる理人
 泉さんが気を使って「会場の様子を見てきますね~」と控室を出て行った


 「慶さん、知らない人ばっかりで緊張するのは分かるけど…」

 理人が緊張をほぐす金言でもくれるのだろうか


 「でも、慶さんに必要なのは俺だけでしょ?」

 だから誰が話しかけてきても堂々として、上から「どーも」って言ってれば大丈夫だからね!という役に立たない情報をくれた…

 確かに今日集まる人はお母様に会いに来ている方々だ
 私はそのご子息のパートナー枠、私に必要なのはほんとに理人だけだった

 コンコン、というノックで泉さんが戻ってきた
 「そろそろ真理子さんも出ていらっしゃるみたいですよ」ということで
 私達も会場のあるフロアへと移動した



 エレベーターを降りると、エントランスには結構な人が集まっていた 
 
 庶民には馴染みの薄い「パーティー」という集い
 私たちはその慣れてそうな人たちを横目に会場へと向かった

 入り口付近にはお母様の姿があった

 綺麗なラインの黒のロングドレスに鮮やかなグリーンのボレロを羽織ったお母様
 まさに本日の主役と言った存在感、人に囲まれていたので理人は「あとでいいよ」と素通りした


 入り口のチェックを通り会場の中へ
 湾岸エリアの夜景を一望できる、広いバーカウンターのある会場だった
 
 それにしても広い…
 いったい何人集まるんだろう

 
 「入り口に居ると捕まるから奥に行こ…」

 と理人がバーカウンター奥の方の端に座った
 私も勝手がわからないので黙って一緒に座る

 会場に入るなり知った顔を見つけてはお喋りを始める、これがパーティーというものか
 
 先ほど入り口で囲まれていたお母様が会場の中央辺りに立ち止まった
 そこにゾロゾロと、今まで外に居たであろう人が中に入って来る
 お母様からひとこと挨拶があり、乾杯となった

 もう人が多すぎて50人なのか100人なのか分からない…というくらいの人が居た

 
 「理人~、慶さ~ん!」

 カウンターで静かに2人で飲んでいるとお母様に呼ばれて席を立つ

 お母様は一緒に居た若者を私たちに紹介した
 スラっと華奢で理人よりも身長がありそうな、色白の男の子、深いパープルのセットアップが似合っていた
 
 「この子はモデルのたまごなの、まだ田舎から出てきたばかりで顔見知りが居ないから今日は頼むわね」

 …今日は頼む、がちょっと引っ掛かるが

 「俺は理人、で彼女の慶さん、名前は?」

 と、理人はささっと坊やの名前を聞いた

 「あ、友樹ゆうきです…よろしく…」

 ちょっと神経質そうな顔をしていたように見えたけど、意外と素直に話す


 私達としばし一緒にお喋りをしたあと  
 理人は会場内をぐるっと見回した
 
 「友樹、あそこ行こうよ」

 理人は指を指した方向へ歩き出す
 そこは若い女子が4人ほどで座っている席だった

 「ねぇ、君たち須藤さんとこのモデルの子たちだよね~?」
 
 と理人はペラペラと声をかけた…

 「この子、今から唾つけといた方がいいかもよ?友樹くん、よろしくね!」 
 
 そう言った後
 小声で友樹くんに「飽きたら俺のとこに戻っておいで」と言い、その場に友樹くんを置いてきた

 
 「…これが今日は頼む、って意味?」

 と私が聞くと

 「そうだね…いいように使われてる感は否めないけどさ!」

 と笑う理人
 しかし慣れているんだな、迷いなくモデルの子に「たまご」の顔を覚えさせるなんて

  

 遠目で友樹くんの様子を見ながら飲んでいると、色んな人に声をかけられる理人
 私を「彼女」だと会う人会う人に紹介してくれたが…
 これは、ただ私を紹介する手間が発生しているだけなのでは?と気が付いてしまった

 イベント会場のオーナーさんだとか、広告業界の方、デザイナーさんやモデルさん…
 私は先日の、理人の「仲間会」ですら人が多いと思ったのに桁違い過ぎて現実じゃないような気さえした
   
 
 もう目まぐるしくて、理人に寄ってくる女に嫉妬とかいう状況では全然無かった

 

 



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