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さいこ

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 …久々に具合の悪い朝を迎えた
 気疲れしたのか、単純な飲み過ぎか…

 胃の辺りが気持ち悪かった

 
 お腹が空きすぎても気持ちが悪いこともあるかと、簡単なおかゆを作って少しだけ食べた
 起きてから時間が経つと具合の悪さも治まってきた


 理人はというと
 朝、私が起きられないでいるのを見て

 「じゃあもう今日はずっと寝よう」

 といって、私と一緒に2度寝したのだが、まだ寝ていた


 私はしばらく理人の寝顔を眺めていたが
 一服をしに珈琲を持ってベランダへ出た

 なんだか煙草も美味しくなかった

 私が手放しで理人を信じられなかった罰かもしれないと思った
 
 自分がもっと若いときだったら、こんなに神経質にならずに受け入れられただろうかと、また仕方の無いことを考えてはぼんやりした


 「…慶さん、居たぁ…」

 ベッドから出てジャージだけ引っ掛けて来ました、といった格好の理人が私を探してベランダに出て来た
 頭はモシャモシャだし、目は開いていない

 「はいはい、中に戻ろうね」

 と、私は理人と部屋に入った


 理人に食べさせるのに適当なご飯の用意をする
 ベーコンエッグの横にカットしたトマトやアボカド、ボイルしたブロッコリーを添えたもの、温めただけのコーンポタージュ、それから理人が好きなパン屋さんのベーグルを並べた

 「…もう動いても大丈夫?」

 理人はご飯を食べながら私に気を使ってくれる

 「うん、2日酔いとか久々だったわ…」

 まぁ酒を飲む人であれば、こんな悪酔いの経験くらいあるだろうが、私は本当に久しぶりだった


 
 このところ色々あったから、自覚が無くても疲れてるのかもしれないよ、という理人に甘えて
 この日は2人でゴロゴロと映画を観て過ごした
 
 「…明日は俺がいなくても寂しくない?」

 ふと、そう言う理人
 あ…そうだ
 マスターとバイク野郎の集う祭りに出かけるって言ってたっけ

 「なぁんで寂しいのよ、ビビッ!ときたバイクの写真撮って来て」

 なんなら寝てるかもしれないからマスターとゆっくり夕飯も済ませて帰って、と伝えた


 ぼんやり眺める映画のロマンティックなキスシーンで、理人が私にもキスをした
 そのまま映画を放棄してソファーの上でセックスになだれ込む…

 荒くなる理人の息遣いを聞きながら、私は理人の首を噛んだ
 
 
 
 

ーーーーーーーーーー





 日曜日、お昼ごろに理人は出かけて行った

 1人で過ごすのはいつぶりだろう
 理人と一緒になる前、自分が休日をどう過ごしていたのかが思い出せない

 
 ベランダにタブレットを持っていき、しばらく「自宅をDIYリフォーム」系の動画を見て過ごす
 「このインテリアいいなぁ」などと思いながら座っているとウトウトしてきて、部屋に戻って昼寝をした

 目が覚めると3時間ほどが経過していた
 がっつり寝てしまった…夜寝れないかもレベルの昼寝だ

 お腹が減っているような、そうでもないような…フワッとした空腹感を感じて、食事の置き換えドリンクを飲んだ

 
 部屋をささっと掃除してから、いい香りの入浴剤のお風呂に入った 
 身体が温まったところで簡単なストレッチをする

 …もう動画を見るのにも飽きたし、ひとまず音楽を流す
 
 「あ、こういうときこそ…」

 私はポータブルゲーム機を引っ張り出して、理人に誘われてはじめたクラフト系ゲームを久しぶりにやり始めた
 

 以前はモンスターが寄ってくるたびにキャーキャー言って理人に助けてもらったが、今日は1人だ、己の力で倒すしかない…
 そう腹を括ると、意外と慌てずにやっつけることが出来た

 「もしかして私、ソロでもイケるのでは?」

 変な自信を付け、まして日中に睡眠をバッチリ取った私の集中力たるや…


  
 鉱脈を発見し、ゾーンに入りゴリゴリと石を叩き続けているとき

 「…ただいま~」

 理人が帰って来た 
 私は手を動かしたまま「おかえり」と言った


 「…暇すぎてゲームやってんの?」

 と言う理人
 本当にね…1人でなにしていいのか分からなくなった結果だよ…

 私の手元のモニターを覗く理人から、知っている匂いがした


 「え…?理人、煙草吸った?」

 理人は煙草の匂いを纏っていた

 「あ~、それは誉さんだ」

 「はぁ?!マスター喫煙者なの?」

 私たちに見えるところで煙草を吸っている姿なんて1度も見たことが無かった


 「なんか、自分でヘビースモーカーだって言ってるけど、ほんと慶さんの5倍は吸ってるよ」

 という理人…
 今日の祭りでもいちいち喫煙所に立ち寄って時間が取られたと言う

 あのマスターがデカいバイクに跨ってる姿すら想像できないというのに、さらに「咥え煙草」なんて…
 
 私の中にある「繊細な指先を鍵盤に滑らせるマスター」像の方がよっぽど想像できてしまう


 
 「…風呂入って来るね」

 という理人の背中を見送ると、急にお腹が鳴った
 
 時計を見ると22:00近くになっていたけど、今日は何も食べていなかったのでセーフとする
 理人の朝ごはんに出した余りの野菜を食べながらゲームを続けた

 
 お風呂から上がってきた理人は、水を飲みながら私のゲームの進捗を確認しようとする

 「今なにやってるとこ?」

 「オオカミを連れて帰るとこ…」

 私は森の中で、いつかは欲しいと目を付けていたオオカミを見つけたのだった
 自分の拠点に連れ帰り、家の中でぬくぬくと育てようと思っている

 
 「ねぇ…それ明日にしてよ~」

 理人が私からゲーム機を取り上げようとする
 
 「やだやだやだ!今出会ったんだから~」

 激しく抵抗する私
 理人はそれ以上言ってはこなかった


 …代わりに

 
 ソファーの肘当てに頭を乗せ、仰向けで横になりゲームをしている私
 …の、ショートパンツの裾をめくり鼠径部辺りに舌を這わせた

 「やだぁ…もうすぐ家だから…」

 「嘘言わないの、嫌じゃないでしょ」

 そう言って、私の敏感な場所に指を伸ばす理人
 下着の上からそこをゆるゆると刺激する


 もう少し…もう少し集中できれば家に到着する、というところで私は力尽きた…


 「んんっ…りひと…」

 「…俺の勝ち~」

 ゲームから手を放してしまった私を抱っこして寝室に移動する




 「今日は慶さん補給しないと俺が死ぬ…」

 そう言って強く抱き締められた
 その力が緩んだ時に、理人の首筋が視界に入ると

 昨日私が噛んだ場所が痣になっていた
 

 今日はこの痣を連れてお出かけしてきたんだ…と思うと、一層愛おしいと思えた
 
 

 

 

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