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憂慮
しおりを挟む私は、この数時間の情報量の多さに脳がショートしそうになっていたので、グラスの片付けで手を動かしていた
「…慶さんもお疲れでしょう?」
片付けなんて私がやればすぐですよ、とマスターが気を使ってくれた
理人はテーブルを拭いていたが、その後洗い物をしようとしてマスターに断られていた
「私の大事なグラスなんですから、あなたに任せられません」
マスターは真顔でそう言った
でもそれはそう、彼がバイトを使わない理由も考えれば、マスターは自分で管理したいタイプなのだと思う
「…ほかに言い方あるでしょーよ!慶さんにだけ優しくしてさぁ!」
この2人のやり取りを見るのは面白い
あとはマスターがやるからと私たちは帰された
本当にマスターの店がお向かいで助かる
ヨロヨロになっていても、5分で部屋に帰れるんだから
「慶さんどうだった?あの人たち」
「うん、いい人達だったね」
そうでしょう!と、理人は自分が好きで付き合っている面々を認めてもらえて満足そうだった
私も理人の周りにいる人間がどんな人たちなのかを実際に見られて良かった
ただ、私の不安の種は残ったままだ
すでに関係のある仲間を集めてもらったのだから、まぁ考えればそうだけども
男性にも女性にも、理人は普通に接していた…
「理人、私ね…」
これはパーティー前にちゃんと話しておいたほうがお互いのためなんじゃないかと懺悔しようかと思った
「いいよ、慶さん…」
理人は私の言葉を遮った
「俺がさ、ちゃんと慶さんを不安にさせないようにするね」
…えーと?
それは私が漠然とどこか不安そうにしているから、ということ??
どこまで分かっていての発言なのか、私が分からない
「私ね…理人が離れるのが怖いの…」
「…なんて?」
…私がそこに不安を感じているということまではお察しでない…?
じゃあ逆になんだと思ったの??
「俺はさぁ…」と理人が言うには
パーティーに女性モデルも来るかもしれない、という流れから「仲間にも女性がいるだろ」と私が言い始めたので
私から見えないところでの浮気とか女遊びを疑われているのかと思ったそうだ
それで、あの集まりの場ではパートナーが居ると分かっている女性には、私に聞かせるようにそのお相手の話を振っていたと言う
なかなか知恵を絞ったね、あなた…
「だからね、そんなしょーもないことしないよ!って、女という生き物が好きなんじゃなくて、慶さんが好きなんだよって…俺は態度で示さないといけないと思ったから…」
正直、こうして言われのない女遊びを疑われたと思った理人が、私のために色々と考えてくれた事が嬉しかった反面、情けなかった
いつも真っ直ぐに私に向けられる理人の気持ちを知っていながら信じきれないでいる自分が情けない
というか、モデル登場くらいで「理人が居なくなるかも」と揺さぶられてしまう私のメンタル…それが一番の問題だと気がついた
「理人ごめん、それは疑ってなかった」
「はぁ~…まぁ違ったなら良かった」
ひとまず浮気疑惑でないことは先に伝えた
そのうえで、私はどこか自信が持てず、いい女の出現に理人が持ってかれるんじゃないかという不安が込み上げてきたこと
また、理人と一緒に居る今に幸せを感じているために、これを失うことが怖いという気持ちが生じているということを伝えた
「だからね、理人は悪くなくて私が過敏になってるだけだから…」
本当に私ってやつは拗らせる天才か?
最初から素直にこうして話していれば、理人も変な浮気疑惑にたどり着くことも無かったというのに
「…ねぇそれさぁ、やっぱ俺が悪いよ」
「あ、いやほんとにそういうのじゃな…」
「俺が見てるのは慶さんだけだって分からせないといけないね…?」
「…へ?…それはなんか違…くない?」
私は変なボタンを押してしまったのかもしれないと焦った
「俺がちゃんと慶さんだけを見てるよって安心させたい…」
優しい声でそう言う理人に抱きしめられた
こうしているだけで
ぐちゃぐちゃと考えていたものがスっと落ち着くんだから不思議だ
私を安心させてくれるのは理人しかいない…
私がなにかに怖がる度に理人はこうしてくれるんだろうな、という安心感
「理人…ありが…うぅっ」
気が緩んだとたん、吐き気がやってきた
「ちょっ!…トイレトイレ!」
理人は私を支えて廊下に出る
緊張で自覚のないままもの凄い飲んでいる時がたまにあるけど、今日がそれだったみたいだ
初対面の人のというよりも、理人に対してのイヤな緊張でそうだったかもしれないと思い当たる
「もう~!なんでこんなんなるまで飲んだの~」
私の背中をさすってくれる理人
ごめんね理人
これからも頼むね…
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