温度

さいこ

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ご対面

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 理人と仲直りのセックスをした

 喧嘩と言うほどのことでも無かったけれど
それでも、2人で肌に触れ合うと安心できちゃう不思議…

 「はい、お待ち!」

 理人は元気にラテ係に復帰した


 「そろそろ外で煙草吸うの、冷えない?」

理人がそう言った
 私は寒さには強いから大丈夫だけど、理人は真冬になっても私の喫煙に付き合うつもりなのだろうか

 「理人はもう中で待ってなよ」

 私も1人なら長居はしないし 

 「え?やだよ…ベランダ用のヒーター置くから平気」

 …ほんとにやりそうで笑う


 「あ、そうだ」

理人が思い出したように言う

 「母ちゃんが採寸いつ来るの?って…」

…!!!!!!!!!!!
 
やっばい!早く言ってよ!!お母様のご厚意が!!!

 最短でお母様の都合のいい日に予定を入れるよう伝えた
 
 


 
ーーーーーーーーーー





 理人にお母様とスケジュールのすり合わせをしてもらって
 今日の夕方にお時間を空けていただいた

仕事が終わったら、もうお母様とご対面だ…
 緊張から胃が気持ち悪くて、心臓も止まりそうである
 
会社を出るとビル前に理人が車をつけていた

 「慶さん乗って」

…理人は相変わらずTシャツにスウェットという格好だった
 
 お母様はご自宅で私たちの採寸をしてくださるようで
期せずして理人のご実家にお邪魔する運びとなったのだった


 「お家はどこら辺なんだっけ?」

意味のない質問をする

 「エマんちのそばだよ」

そうか、エマちゃんちのそばなんだ…
え?近くね?!すぐ着いちゃうね…!

 あ~胃がキリキリする…
 それを考えると理人はこないだよくウチに来たよな…

外を流れる景色を眺める、けど、まぁ見えてはいなかった 


 「はい、ここ」

 理人の声にハッとして外を見る
 ガレージの木製ドアがガバッと上に開いた

 ガレージに車を入れてエンジンを切ると、ドアが勝手に閉まった 

 「自動なの?」

 「うん、俺ここの鍵持ってるから」

へぇ~、私は車に乗らない(免許が無い)から、これが普通なのかの判断が付かない
 理人はガレージ奥のドアに手をかけてから

 「あ、やっぱ玄関から入ろう」

と、ガレージを出て玄関へと歩いた
 
 私の中で理人の実家イメージが「ヨーロッパの古城」くらいにまで膨れ上がっていたから、実際に訪れたご実家が「普通の大きい家」であったことに安堵した


 理人がまたインターホンも鳴らさずに玄関を開ける

 「ただいまぁ~!」

 靴を脱いで並んでいたスリッパを履く

 「ちょっと、待たなくていいの?」

 私の立場も考えてくれ!と理人に声をかけた

 「行かないと気が付かないと思うよ…」

まぁ、この家のご子息がそう言うなら、と私もあがってついて行く
 廊下を進み、突き当りのドアに入る
 

 そこはリビングなどでは無く、作業のための部屋だという事が分かった

 大きな作業用デスクの周りにはお針子さんが使うような道具とミシン、トルソーがいくつも並んでいて
 型紙や生地、レースや糸がずらりと場所を占領していた


 「…わぁ、ここがお母様の…?」

思わず声が出るほどの光景だった
  
 「あれ?居ないんだ」

じゃああっち、と移動する理人について行く
 作業部屋から玄関の方へ戻り、今度は右のドアに入る 

 今度は暖炉のあるリビングのようだった…暖炉…?
 
 「…は?誰もいないの?」

静かで人影もない家の中に理人の声だけが響いた

 「お?…理人かぁ?」

リビングの奥の方から男性の声が聞こえた

 「あ!親父いんの~?」

理人が声をかけると、奥から男性が出てくる
 

 「おお~君が慶だねぇ?会えて嬉しいよ!」

 そう言う男性は理人くらいの長身で、さらに身体に厚みがあって大きく見えた
 その大きなクマさんのような腕で私を抱きしめる

 「お父様、は、初めまして…」

 「やぁ!妹が出来たらエマも喜ぶよ~」

そう言ってお父様がなかなか離してくれない…

 「つか、母ちゃんは?約束してんだけど」 

理人、先にタスケテ!
 
 「さっきはここで電話してたけどなぁ~」

 お父様がそう言うと、私たちが先ほど入ってきたリビングのドアが開いた




 「…お待たせしちゃった、ごめんなさい」

と慌てた様子で、お母様と思しき女性が入ってきた

 「どっから出たんだよ、あっちにも居なかったし!」

 と、理人が文句を言うも

 「ちょっと緊張で…胃が…」

 というお母様…

 
あ、それ、ワタシもです… 
と非常に共感できた瞬間だった

 



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