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傷
しおりを挟む翌日、早い時間に理人の車で帰ることにした
「今度はゆっくりおいでね~」
と、うちの両親に送り出された
車で1時間ほどのドライブになる
私は理人に会ったらなにを話したかったんだっけ…と考えたけど
こうして私を迎えに来た理人を見ていると、それだけでいいんじゃないかって気になった
「慶さん、昨日はごめんね」
スカした顔で左ハンドルを転がしながら理人が謝った
「…なにに対してのごめん?」
そこが重要だ、私がどこに対して謝罪を求めているのかを理人は理解しているか、という大事なところである
「う~ん、俺に包容力が足りなかった…こと」
なるほど…
確かに大きく言えばそうかもしれない
「俺ほんとに慶さんには…余裕がなくてごめんね…」
そんな言い方はズルくないか?
まるで私に振り回されてます、みたいな…
「…お父さんも素敵な人だったね」
そうね…なんか通じ合ってたみたいだったよね、私にはさっぱりだったけど
まぁ好印象だったなら良かったけれど
それはいいとして、一晩経って私のタトゥーにはノーコメントですか?
「じゃあ改めて私のタトゥーに対しての感想は?」
「ん~、デザインのこと?…まぁ慶さんらしくてカッコいいなって思ったよ…」
なんか、歯切れが悪くない?
「え?デザイン以外の感想もあるってこと?」
「綺麗な身体に…大きい傷が出来ちゃったんだなって…」
タトゥーのこと?
そんな…私は綺麗なアートだと思ってるよ
「…それもそうだし、俺が1番気になるのはね…」
ん?まだあるの…?
「今は良くても、そのうち慶さんが後悔するんじゃないかって…それが怖いなって…」
あぁ、そっか…
私を気遣ってくれて、それで怒鳴ったりしたんだろうなぁ…
父の言う「分かってやれよ~」は、そういう事だったのかもしれないと思った
「…そっかぁ」
ーーーーーーーーーー
道中でランチを食べて、理人の部屋に戻った
1日部屋を空けただけなのに久々に戻ったような気がした
私は玄関に荷物を置くとベランダに向かった
いつもはラテを入れてきてくれる理人が、この日はそのまま着いてきて
「タトゥー、ちゃんと見せて」
と言った
見せるのはいいけど、もう外で裸になるには少し寒いんじゃないかという季節…
「これ(煙草)が終わったらね」
…部屋へ戻ってソファーに座る
理人が私の膝の間に入って、私の着ていた薄手のニットを捲りあげる
私の左胸の下の肋骨辺りには、
トライバルの蠍と「Licht」というレタリングが入っている
「…こんなに大きく入れて…」
理人はタトゥーに舌を這わせ音を立ててキスをした
まだ触れたら痛いのに、その肌を伝う理人の唇の動きに身体がゾワゾワする
「理人、抱っこ…」
スイッチが入った私
「…慶さんのえっち!」
自分でこういうことをしておいて私にだけ「えっち」という理人
…照れ隠しの一種?…なのかな?
そういうことにしておいてあげよう…
理人は私を抱っこしてベッドに移動する
「ねぇ…大きい傷が出来ちゃったけど嫌いにならないで…?」
少しだけ理人の言った言葉が気になってしまう
「なんでそう思うの?…もう離れられないくらい愛してるんだよ、慶さん…」
そうして1枚、また1枚と着ている物を脱ぎながら
互いの体温を確認するように貪り合った…
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