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さいこ

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挑戦

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 …エマちゃん達は素敵な夫妻だった
これから生まれてくるお子さんも家族みんなに愛されて育つのだろう


 理人との生活もすっかり馴染んだとある日
私は仕事で有休を取っていた
 
 実は、何週間も前に始まったこの計画が、いよいよ今日実行される…
向かうのは駅反対口の少々怪しいビルの1階に入っているショップだ

 
 「…こんにちは~」

とドアを開けて中に入る

 「あ、柏木さん、お待ちしておりました」

と中の人が迎えてくれた

 ここは、人生初のタトゥースタジオだ
先にデザイン諸々の打ち合わせで一度足を運んでいる
 そして私を迎えてくれたのが彫師ほりしの方、この店のオーナーさんだそうだ


 「ではまず、デザインの確認からしていただいて…」

と、私の希望を踏まえたデザインを初めて見る
 おお~、カッコイイ!と素直に感動した

 「じゃあデザインと、スペルの間違いが無いか最終確認していただいたら施術に入ります」

そう私、今日タトゥー入れまぁ~す!

 普段は洋服の中に隠れる位置に入れてもらう予定だ
その場所に転写シートにプリントしたデザインを転写する
 
 「…少し一服しますか?」

そう、このオーナーさんも喫煙仲間だった
それが終わると、いよいよ針の出番である…


 ーーー施術後、この後の注意点を聞いて終了となった

 チクチクとされたのは1時間半くらいだっただろうか
ちびるかもしれないという覚悟を決めていったけど、ギリちびらないで済んだ…

 針を1時間以上刺し続けるのだ、痛くないわけは無い!

 人生で初の挑戦なのでタトゥースタジオなんて知らないから、必死で調べて3件ほどカウンセリングに行ってみた
 その中でお願いしても後悔しないな、と思えたのがあのオーナーさんの対応だった

 私は決めた位置に12㎝×12㎝程度のデザインを黒一色で入れてもらった
 これでビキニなんかを着ては歩けなくなってしまったわけだが、上着でも羽織っちまえば堂々と歩けてしまう
 なんだかそう考えると、社会の矛盾のようなものを感じる
 
 見えなきゃ無いのと一緒ってことだもんね…本当はそこにあるのに
 
   夕方まで外で時間を過ごし、普段通り買い物をして部屋に帰った
   

 
 部屋に理人の姿はなく、タトゥーの事をなんと報告しようか少々緊張していたので気が抜けた 
   とりあえず着替えて夕飯の支度を始める

 20:00になっても理人からの連絡は無し、少し迷ったが先にご飯を済ませた
 彼の仕事やプライベートのこと、私が知らないことはまだまだあるわけで、お風呂に入りながら自分の頭を整理した

 お風呂からあがると私のスマホが鳴っているのに気がつく、慌ててバスローブを着てスマホに到着すると理人だった

  「……ごめーん、お風呂入ってた」

と出る

 理人も慌てた様子で

 「こっちこそごめん!時間かかると思ってなくて、先にメッセージでも入れておけば良かったんだけど……」

と、事前に聞かされていなかったお母様の知り合いと同席することになり、スマホを見る隙が無かったと言った  

 「とりあえずこれから帰るから!」

そう言って通話は切れた
 まぁ出先で倒れてたりしてなければ私はなんの心配もない、あんなに慌てさせて可哀想だったな…


 それから30分ほどで理人は帰ってきた
ベランダにいた私のところにすっ飛んできて

 「ただいまぁ!」

と元気よく顔を見せた


 「慶さん…あの、嫌だったら断ってくれていいんだけど…」

と、何やら慎重に話し始める

 「なに?悪いお知らせなら心の準備させて?」

と身構える     

  「いや、悪…くは無いと思うんだけど…」



 私はこの後とんでもない流れになることをまだ知らないのであった…
 







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