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さいこ

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 日曜日、というとせっかくの休日なのに
「明日から仕事かぁ」という思いが付きまとう日だ

 しかし私は少し緊張していた…

 「日曜はエマんとこにご飯食べに行こう」

と理人が勝手に予定を組んでいたのだ

 エマちゃんとテオさん夫妻、テオさんなんて話すのは初めてだし…
しかもきっと先日のマスターみたいに「彼女です」と紹介されるのだろう
 …馴れ初めとか聞かれたらどうするのよ

 うっかり「セックスしちゃって」なんて言わないだろうね?!

 …そんな小さな不安もあったので、夕方の約束までの間憂鬱な気分で居た

 
 理人は自分の身内だから気構えることも無いだろう
今日も出かけるまでの時間、作業部屋に行ってしまった

 私は着るものを選び、顔面にパックを張り付けたままベランダで喫煙タイムを過ごしている

 エマちゃん達は、煙草なんか吸わなそうだよなぁ~  
 この調子で行くといつかご両親にも紹介されるのだろうか…

 「ご両親」というワードに妙にリアルさを覚えてさらに緊張した

 
  
 「慶さぁ~ん、ただいまぁ~」

理人が戻ってきた

 「お疲れぇ」

私は化粧の真っ最中だった
 ヘアバンドでおでこは全開、ファンデーションだけを塗り終わったデコレーション前の顔面と遭遇する理人…

 「あ、これからメイク?楽しみ~」

 理人は動じない…
これがうちの優だったなら「あひゃひゃひゃ!」と爆笑して大騒ぎだ 

 「…え?盛る前の顔面面白くない??」

と逆に聞いてみる
 
 「ん~…どこら辺が?」

こ…これが育ちの違いなのか…?!
私は馬鹿なこと聞いちゃったな、と思い黙って手を動かした 


 「うちさ、母ちゃんと姉ちゃんが居たでしょ?だからメイクするのいつも見てたんだ~」

そうなんだね…
 優にも確か母と姉が居るはずなんだけどね、まぁあのバカは笑うだけ笑ってとくに見てはいなかったわ


 さて、お顔も完成したことだしバッグの用意…
と寝室に取りに向かうと、ちょうど理人が着替えをしていた

 「うん、慶さん今日も綺麗!」

と、付けたばかりのリップグロスに遠慮なくキスをした
もちろん理人は唇の左側にリップがはみ出ちゃった人、みたいになってしまった





ーーーーーーーーーー





 理人の部屋を出て車で15分ほど走ると
1軒の戸建ての駐車スペースに車を停める

 「はい、ここだよ」

と車から下りる
 
 呼び鈴も押さず玄関ドアを開ける理人
 
 「来たよ~」

と中に入るので、私も続いた
 廊下の奥からエマちゃんが出て来る

 「やだぁ~!慶ちゃん、久しぶりぃ~!!」

と、エマちゃんが熱い抱擁で迎えてくれた
続いてご主人のテオさんもお出迎えに来てくれた

 「理人待ってたよ」

と理人の背中をバンバン叩いた後、私にもハグをして

 「いらっしゃい、よく来たね」

と優しい声で歓迎してくれた
そうか…この人達ハグが挨拶なんだ…自分だけ慣れない日本人で恥ずかしかった


 「今日は理人が恋人を連れて来るっていうから、俺たちのほうが緊張して待ってたんだ」

というテオさん

 「ちょっともういいから座ってゆっくり話そうって~!」

エマちゃんもそう言うと、私たちを中に通してくれた


 ちょうどいい広さのリビングはナチュラルなウッドが暖かい空間だった
ダイニングテーブルにカトラリーなどの用意がされていた

 「すぐにあっためるね」

とテオさんがキッチンへ行き、エマちゃんは珈琲を出してくれた


 「最近は慶ちゃんとすれ違いで会えなかったから、こうして外で会えるのは嬉しいよ~」

 そうだ、最近テオさんしか見かけなかった気がしていたが、気のせいじゃなかったんだ
   
 「店に出ると立ち仕事だから奥の事務所でデスクワークだけやらせてたんだよ」

とテオさんが続けた
奥の事務所で?どうして…

 「そうそう、店より俺の甥っ子をちゃんと育てろよなぁ」

理人のひとことで理解した
 なるほど…赤ちゃんを授かったんだ


 「…おめでとうエマちゃん、ママなんだね!」 

これからママになると決めたエマちゃん、仕事や自身の変化に不安が無いわけでは無いだろう
 きっとテオさんというパートナーが居るから安心して任せられるんだろうな…

 私は理人のそういう人になれるのだろうか
 

 「…しかし理人が自分の恋人を紹介してくれるなんてな!こんな日が来るとは思わなかったよ~」

とテオさんが嬉しそうに言った
 恋人を紹介するのが初めてである、という意味だろうか
 
 「理人はメンドクサイから大変だよぉ?慶ちゃんw」

エマちゃんも嬉しそうに言う
理人はそう大変じゃないですよ、むしろ私が良くしてもらっています…


 「俺はね、やっと自分が好きになれる人を見つけたんだ…」

と理人は隣に座る私に子供が甘えるように抱きついた

  「…あ、あはは~!これだから男の子はねぇ~!!(白目)」

…恥ずかしさに耐え、笑顔でヨシヨシしてあげた
まさか姉夫婦の前でどついたりなんか出来ないもんね…


 「慶ちゃん、理人と一緒に居てくれてありがとうね」

エマちゃんはそう言ったけど、お礼を言うのは私のほうです



 そして、もう家族の一員だね!という流れで連絡先の交換をすることになり、エマちゃん宅をあとにした







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