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彼氏(仮)
しおりを挟む理人の部屋へ戻ると
「俺、3時間くらい仕事しようと思うんだけど…」
と理人が言った
もちろんそれは時間なんか気にしなくていいからして来てよ、と伝えた
「じゃあ、コレやっと渡せるね…」
と理人が私の手に握らせた物は
「…キーケース?」
それを開けると鍵が2本入っていた
左がこの部屋、右が仕事部屋、とのこと
「…セックスしたくなったら、我慢しないで襲いに来てね♡」
「ちょっ……………!」
「じゃあ行ってくるねぇ~」
そう言って理人は部屋を出て行った
理人の出て行ったドアを眺めていると
ウィーン…と音がして、2箇所設置されている鍵が自動で閉まった
…なるほど、オートロックになってるから
出る時には必ず鍵を持ってないと締め出されちゃうわけね
それにしても優のことはなにか考えないとな…
色々考えようと、私は外へ出た
歩きながら考えてみる…
仮に、優に奥の寝室を使わせるのはどうだろう?
引戸を閉めてしまえば完全にプライベートは守られる…のではないか?
防音でもない引戸で視界だけは遮っても、ちょっとした音でも聞こえちゃうかぁ…
だとすれば、やっぱり私がいない方が優は気兼ねなく生活が出来るよね
でも優に「一緒に」って言った手前、私が自分の部屋を出る理由を考えないといけないし
それに…理人の言うまま甘えてもいいものか…
無意識に自分の部屋に向かって歩いていたのだと気がついた
丁度いいので部屋に入り、ベランダで煙草に火をつけた
「もう明日には、優が来ちゃうのに…」
――――――――――
ブー、ブー、ブー、ブー…
リビングの床に置いたスマホが鳴っている
私は慌てて通話に出た
「はい…」
「もう~、どこ行っちゃったの?」
理人だった
仕事が一区切りしたのだろう、私も何も言わないで出ちゃったからな
「私の部屋の荷物、少し車で運んで欲しいんだけど…」
と、自分の部屋に居ることを伝えた
理人はすぐに車で向かってくれることになった
少しすると、玄関ドアの開く音がして
「慶さ~ん、入るよ~?」
という理人の声が聞こえた
「ねぇ理人…今朝言ってた優のことだけど…」
と話を切り出す
「うん、俺のとこに来てくれる気になった?」
…理人はどこか満足気に見える
ひとまず明日は優の引っ越しをする
その時私が部屋を出る説明をするから、理人には「彼氏です(仮)」と言って欲しい
恋人の所になら、私が部屋を出るのも不自然じゃないから納得して貰えると思う
優に関しては以上、だけど…
理人自身は、本当に理人の部屋に私の荷物を移動しても大丈夫なのか…
生活するとなると服や靴やバッグなんかは持っていきたいし…
と本人に確認を取るも
「…うちどんだけスペース余ってるか知ってるでしょ?」
と言われてしまった
…確かにそれはそう
「ねぇ…(仮)でも彼氏に昇格したんだから、国民の祝日にしなきゃねぇ~」
と理人はめちゃくちゃ喜んだ
ひとまず、今日持ち出すものは箱にまとめたので車に積んでもらった
理人の部屋に戻ると、また2人で夕飯を食べる
普通にお風呂も済ませて、私なんかスッピンで一緒に居ることの方が多いような気がする…
私の好きな映画を観ながらお酒を飲んだ
「慶さん今度から仕事が終わったら俺んとこに帰ってくるんだね…」
と理人が言う
なんか、そういう言われ方をすると少し身構えちゃうけど…でも実際そうなるわけよね…
「理人がどういう人間かちゃんと見定めないといけないからね…」
最もらしいことを言っても、ここまで来ると言い訳のようにしか聞こえない
「ちゃんと隅まで全部見てよ?慶さん…」
理人がそう言いながら私の首元にキスをする
その指はバスローブの隙間から差し込まれ、私の胸を撫でる
「ん……ベッドで…」
理人はいつものように
私を抱っこしてベッドへと移動した
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