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さいこ

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 つい理人を呼んでしまった…


 私は部屋着から外出できる格好に着替えた
バッグに財布、煙草、ライターとスマホを入れた

 上着を着て玄関で待った


 少しすると、玄関の外から人の足音が聞こえた
それは徐々に近づいてきた

 ピンポーン…

インターホンが鳴ると、私は玄関のドアを開けた


 「…慶さん!」

 ドアを開けた私を、部屋の中に押し戻すように抱きしめる理人
階段を駆け上がって来たのか呼吸が荒い

 そのまま体重をかけられ床に倒れ込むが、理人の逞しい腕が私を支える
 

 「ねぇ…会いたかったぁ…」

 そう言って顔を寄せる理人
唇が触れると噛みつくように私の唇を貪る、この甘えん坊に私は抗えなかった

 「…んっ」

しばらく任せていると服の中に手を伸ばす理人

 「…タイム!!!」

私の声に、ビクッと理人の手が止まった


 「盛り上がってるとこ悪いけど、マスターのとこ行こうよ」
 
そう、私はそのつもりで着替えたのだ

 「…え?いま?」

 「だって、って言ってたじゃん」

揚げ足を取って悪いね、理人よ
私はマスターの顔も見たいんだ許して欲しい…


 ※ほんの3分ほどの停車でパーキングの清算をする理人


 久々にマスターに会うと思うとちょっと緊張しちゃうな
理人は少し前に出発したばかりの、自分の駐車場へ戻ってきた
 
 地下駐車場から地上への階段を上がり、 
斜め向かいの建物の地下にある「BAR ほまれ」への階段を下りる…

 店のドアを開けるとベルの音が鳴る


 「いらっしゃいませ」

マスターの声だ
私はいつもどおりカウンターの席に座った

 「…今日はお2人なんですね」

私の横に理人が座る
 マスターは特に何も聞かずにシェーカーを振り
スライスレモンを添えた綺麗な黄色のカクテルを出してくれた

 私と理人は「お疲れ」と言って乾杯した

 ふわっと甘いブランデーの香りとサッパリした飲み口の美味しいお酒だった

 
 「美味しい~!これおかわりしたい」

 「かしこまりました……てゆーか、慶さんには愛想を尽かされたのかと思いましたよ私は…」

そう言いながら私のおかわりを作ってくれるマスター
 色々忙しかったのよ~と言葉を濁しながら、お酒の名前を聞く

 「こちらはアプリコット・フィズです」


 …こうしてマスターとお喋りして、美味しいお酒も飲んで、やっといつも通りに戻れたような気がした
私は久々にとても気分が良かった





ーーーーーーーーーー





 「…ちょっと慶さん、寝ないでよ?」

理人に声を掛けられる
 マスターと理人が勝手にお開きの話をしているのが聞こえた

 「つぎ…おかわりぃ…」

私はまだ飲みたい気分なのに、2人で私を帰そうとしている
 

 「…じゃあねマスター、また来るわ」

理人が私を店から出そうとしている

 「ええ、階段気を付けてくださいねぇ…」

マスターまで帰そうとする…


 理人に支えられて階段をあがるが、身体がフワフワして上がっているのか下りているのか分からない
 
 「ん~、そこまで頑張って歩いてぇ~!」

なぜか応援されながら言われるままに歩く
そして見たことがある、理人の部屋に到着した


 ベッドに横になるとめちゃめちゃ身体が楽になった

 「今日は楽しかった?」

そう言う理人の声が優しかった 
  
 「…うん、まだ飲みたかった…」

 「いいよ、じゃあ毎日飲もう」
 
呼びつけておいて悪いけど…

眠気がマックスでもう返事もでき…ない…

 
理人の気配を近くに感じて眠りに落ちた







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