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男子の部屋
しおりを挟む理人の家のことがなんとなく分かった
素敵な国際ファミリーだということが
…話しているうちすっかり夕方になり、陽が落ち始めていた
さぁて、今日はどういう作戦があるのでしょうか
なにも無さそうなら私は買い物をして帰りますが…
「理人、帰ろうよ」
と促してみる
うん、と言いつつなにか考えている風な理人が
「慶さん、うち見に来ない?」
と言い出す
はいはい、今日は自分の部屋にお持ち帰り作戦なのね
「寄ってもいいけど、お部屋見たら帰るよ?」
ちょっとドライな感じもするけど
理人には「友達」の定義を考えて欲しい
「…………分かった」
なによ、その間は…
納得して無さそうだけど?
とりあえず理人の車に乗り込み、理人の部屋へと向かう
私のホーム、駅の反対口へ戻ってきた
理人の車はエマちゃんのカフェが入っているビルの地下駐車場へと進む
「…珈琲でも買うの?」
「いや、ここが俺の駐車場なの」
え?…こんな駅前エリアに住んでるってこと?
確かに理人が車を停めた駐車枠は「月極枠」のようで、通路を挟んだ向こうからが一般用の枠になっているようだった
車を停めたすぐ近くにエレベーターがあり、理人に続いてそれに乗る
エレベーターの表示は「4F」と「5F」そして「R」のみだった
4Fのボタンが点灯していたので、理人の部屋がそのフロアにあるのだろうか…
4Fでエレベーターを下りる
そのフロアには通路と、奥に非常階段のサインが見えて、ほかには通路しかなかった
理人が進むほうへついて行く
1つだけポツンと引戸があり、理人がその鍵を開けた
「はい、どうぞ…」
言われるままそこへ入る
そこは居住用というには広い玄関だった
玄関から見えるのは、玄関を上がった先に幅の広い廊下と、玄関タイルが続く通路が左に伸びている
「慶さん、そのままそっち行って」
理人は玄関左の通路を指す
私は靴のまま、そちらへ進む
少し進むと、通路の先にガラスのドアがある
それを開けるとなんと大きいベランダがあった
「えっ、これってもしかして…!」
私が声をあげると、後ろからやってきた理人が
「はい、これ使ってね」
と、水の入った綺麗なガラスの容器を持ってきてくれた
正方形のベランダには、ドアを出てすぐにチェアーとテーブルが置いてあった
私は手前のチェアーに座りさっそく煙草を取り出した
わざわざ喫煙コーナーを用意してくれるなんて!神!!
「このベランダ、ほんと意味わかんなかったんだけど、慶さんが使ってくれるならあって良かったね~」
と他人事のように言う理人
彼は喫煙者では無いので、まぁ家に居てわざわざベランダなんて出ないよね…
私が煙草を吸い終わる頃、じゃあ探検に行こ!という理人と先ほどの玄関に戻った
靴を脱いで、いよいよ廊下に進む
床は黒のフローリングで、壁はグレー、廊下は途中で折れていて
その先が筒抜けで見えないようになっていた
廊下の途中にあるドアが気になるが、まずは先へと進む
廊下の先に空間が開けた
イベントスペースのような広い…なに?
リビング??
「…ここはなに?」
「う~ん、LDK?」
はぁ…?
何畳あるの?と聞くと「40はあると思う」と返って来た
もう庶民には理解できない数字だよ?
40畳ってなによ…
白目になりつつリビング?の左右を見渡す
左の壁側にはデスクがいくつか並び、PCなどが置いてあるワークスペースのようだ
右のほうにはテレビ・ソファー・テーブルというリビングらしき一角がある
ひとまずソファーのあるほうへ向かう
すると右手にキッチンが見えた…キッチンもスペースが広く取ってある
ワークスペースの左手には大きなベッドが見えた
ベッドルームのようだ…
理人が私の部屋を見て「物が少ない」といった意味が分かった
この部屋も最低限の家具以外に余計な物が無い
廊下のほうも探検する
トイレもバスルームも全部が広くて綺麗で…
まるで金持ち用のショールームのようだった
「…脳が疲れた」
ここが全部、理人1人の生活空間だということに衝撃を受けた
「そこ座って、なんか飲もう…」
…なんか飲もう、という気分じゃなかった
理人が生きている世界は
私の生きている世界とは違うのだと思った
それがちょっとショックだった
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