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お祝い
しおりを挟む月曜の仕事帰りにマスターの店に顔を出した
早い時間ということもあり、私が一番のりだった
「いらっしゃいませ……、お元気そうでなによりです」
マスターの優しい声が出迎えてくれる
しばらく顔も出さなかった私を許してくれる大人の包容力だ
この店へは百海も何度も連れて来ているのでマスターも知っている
「わぁ~私サプライズ大好きなんですよ、楽しみだなぁ~」
と百海のお祝いミッションの話をすると快く引き受けてくれた
事前に購入したプレゼントもマスターに預け、当日はよろしくとお願いして店を出た
この日は長居もしなかったので理人にも遭遇しなかった
あとは当日、百海をここに連れてくるのみとなった
ーーーーーーーーーー
さて、計画実行の日の仕事終わり、百海とご飯に行く約束をしていた
もちろんご飯の後にマスターの店へ行きお祝いをする流れだが、そこは本人に伝えていない
百海の好きなイタリアンの店で夕飯を済ませる
「よし、次行こうか」そう言ってマスターの店へと歩いた
「いらっしゃいませ」
とマスターの声
「あら、今日はご一緒で…」
マスターがしれっと久しぶり、みたいな言い方をする
「うん、マスターも元気そうで~」
と百海も嬉しそうにしていた
最初は桃のカクテルが出てきた
マスターは百海が最初に店に来た時にコレを出して、本人が「これ好き!」と言ったのを覚えている
それから最初は必ずコレを出してくれるのだ
「今週もお疲れ~!」
と最初の一杯は普通に乾杯した
しばしお喋りした後マスターに目配せをする
私が預けたプレゼントを出してくれた
「百海、ちょうど一緒に仕事するようになって1年だよね」
と、綺麗な紙袋を渡す
「え…どゆこと?」
と百海は何を渡されたのか理解していないようなので
「就職1周年のお祝いだよ!」
と分かるように伝えた
「今日は特別なお祝いだと伺いましたので…」
続いてマスターが、私も聞かされていないケーキを出してきた
「「えぇーーーーー!?」」
百海と2人ですごい声が出た
だって…ケーキって、マスターが用意してくれたって、こと?
百海が「まさか、私の人生にこんな日が来るとは!」と言いながらめちゃくちゃ写真を撮っていた
その小ぶりで上品な、崩してしまうのがもったいない芸術品のケーキをマスターに切り分けてもらおうとしたとき、店の入り口ドアのベルが鳴った
「いらっしゃいませ」
「…ぃ~っす」
…入ってきたのは例の彼、理人だった
まぁここに来れば会っちゃうよなぁ~…
…気まずい
彼はカウンターに陣取っていた私に気が付いて寄って来る
「あ~!慶さんじゃん!!……と、ギャル」
そう言った
いやギャルの名前も覚えてやれよ、と心の中で突っ込む私
「百海です~…あたしは慶さんの後輩ですけど、あんた慶さんのなに?」
百海…なんでそんな喧嘩腰なのよ!普通に自己紹介できないもんかね…
こじれても嫌なので慌てて間に入る
「…理人さぁ、今日は百海のお祝いなんだよ、一緒にケーキ食べない?」
と、おめでたい席なのだと主張した
「えっまじ?マスターお祝いだって!俺からさ、ちょっといいやつ出してもらっていい?」
という理人と
「ええ、ちょうどお出ししたいボトルがありましたので…」
とサラっと用意するマスター
マスターは上品なボトルとフルートグラスを用意してくれた
グラスに注いでもらったシャンパンは、ほんのりピンクでとても綺麗だった
「じゃあギャル、おめでとう!慶さんに迷惑かけんなよ~!!」
名前を覚えない理人からお祝いのシャンパンをいただいて、マスターも一緒に4人で乾杯した
ケーキを4人で分けて、なぜか男性が甘いものを食べるという光景に感動も覚えながら、楽しい時間を過ごしていた
そのとき、また店の入り口ドアのベルが鳴った
「いらっしゃいませ」
マスターが迎える
「………アッ!」
理人が変な声を出した
「俺…打ち合わせでここに来たんだった…」
と、その入ってきた人と一緒にテーブル席に移動していった
まさか、自分の用事を忘れていたとは…
ブー、ブー、ブー、ブー…
カウンターに出していた私のスマホが鳴った
見ると「内山 湊」と表示されている
なぜ………
「慶さん、出ないの?」
そう百海に言われ、ちょっと出てくるねと化粧室のほうへ向かいながら電話に出た
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