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理人について
しおりを挟むその「理人」について
話すようになったのはここ数ヶ月ってところだ
素敵なマスターが美味しいお酒を出してくれるその店は、オープンした日から通っていた
私はお酒が好きなので、仕事帰りにふらっと1人でカウンターに座ることが多いが
理人は複数人でテーブル席に居ることが多かった
いつもTシャツにスウェット、もしくはジャージという格好で見かけるので、暇な学生が友人と飲みに来ているものと勝手に解釈していたが、話してみれば「仕事の打ち合わせ」で人と居ると言っていた
確かに思い返せば
必ずテーブルにPCを広げていたような気もする
仕事は動画関係の…編集だったか、いわゆるフリーのクリエイターと呼ばれる仕事をしているとのことだった
会社員として出社し、営業時間内で仕事をする私には未知の世界だと思った
理人とは映画がきっかけで話すようになったが
それ以降は、彼のお気に入り漫画をお勧めされ読んでは感想を話したり、私のお気に入り書籍をお勧めしては感想を聞かせて貰ったりした
ただ、ゲームに付き合うのは私の腰が重く未だに実行できずに居る
理人はフリーで仕事をしているからか、元々の性格なのか
非常に社交的でマナーも分かっているしなにより気の利く人間だった
そういう面が見えるとき、人間って年齢じゃないよなぁ~!とつくづく実感する
…今のところ把握している彼についての情報はこんな程度だ
まぁ、話していて楽しいのは確かだ
利害関係が無いから気楽に付き合える、ということもあっただろう
…あれからしばらく私はマスターの店には寄っていない
週に2回も3回も通い詰めていた常連がパッタリ姿を現さなくなって、マスターも不審に思っているだろうか…
私もあの日のことはソレとして、しれっと店に顔を出せばいいのだが
あんなことに付き合わせてしまった、という後ろめたさがあった
理人がもっと頭の軽そうな子だったらこんなに気にならなかったのかもしれない
それに、「今度からセックスの相手は俺にしろ」との申し出を曖昧にしてしまったのも理由のひとつだ
次に会ったらまた返事を求められるのではないか、というのが煩わしかった
今まで年下の男と付き合ったことは無い
単純に年下で心を惹かれるような人間に出会ったことが無い
仮に魅力的な年下男子が居たとして、自分はもうすぐ30歳になろうというのに、若い彼氏の心変わりに怯えて生きるのは現実的でないとも思う
また、男性として頼れるかと考えた時に、自分よりも若い人間のことを考えたことが無かった
少なくとも自分より経験を積んでいる年上で堅実な人間が頼れる男と考えていた
ま、そんなことを言っているから今まで独身でいるわけだが…
とにかくそういうことで理人には申し訳ないが
おそらく私は理人をパートナー候補として考えることは無いだろう
あの日だけのものとして割り切って欲しいと祈るばかりだ
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