季節がめぐる片想い

さいこ

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未来

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 翌年…

   俺は無事に学生生活2年目に突入
   綾とはもうすぐ付き合って1年になる

   俺は相変わらず夜のバイトを続けている

   
   そして今日はバイトの無い日、綾のお迎えに行く日だ
      
   時間の10分前に到着して、外から中の綾を探す
   
   俺が時間前に到着するのを知っている彼女、今では向こうから手を振ってくれるようになった


   最近は彼女にも後輩が出来て職場が楽しいと話している
   …ちなみに綾に言い寄ってきてた男性のスタッフは、その後も女性スタッフに手をつけてクビになったとのことだ、一件落着


   「いおく~ん、おまたせぇ~!」

   元気いっぱいで突進してくる綾を両腕で抱きしめる、最近タックル強くなってない?

   「ぐふっ!…おかえりぃ~」

   そして必ず同僚たちに見せつけるように、ここで熱いキスをするまでがお迎えだ


   「お腹減ったぁ…」

   「…え?チョコ食べたんでしょ?」

   「なんで?!」

   「だって今チョコの味したもん」

   「………」


   黙るのほんと可愛いな
   
   ご飯を食べたら俺の部屋に帰る
   腕を組んで、珈琲を飲みながら歩いた

   「綾、もうすぐ1年記念だね」

   今は片想いの期間が夢だったかと思うくらいに彼女と時間を過ごしている

   「…どこか記念日に行きたいところある?」

   彼女とはどんな場所にもお出かけしたいし、いつも一緒に居たい


   「いおくんと一緒なら、お出かけしなくたっていいよ~」

   え?なんでそんな…
   俺が貧乏学生だから遠慮してるの?

   「1日ベッドから出ない日…とかいいんじゃない?」

   それって、1日中セックスしてたいって意味?
  


   「…早く帰ってセックスしよ!」


 これに関しては2人とも未だ落ち着く気配なしだった
 もう飽きるまでこれでいいとさえ思っている


   
   
 俺は今年の誕生日をもって「成人」となる
 彼女と同じ大人の仲間入りだ
 綾と一緒にバーで堂々と酒が飲めるなんてスゴイ!

 学生のあいだは何が変わるわけでもないだろうけど
   酒も煙草も許されて、自分の行動に責任を持たされることになる

 脱、子供!!!

 
   カッコイイ大人の男になって綾の自慢の彼氏になりたい(願望)

 いつだかそんな話をしたとき
 
 「え?今でも自慢の彼氏だよいおくんは…」

 綾はそう言ってくれた


 「盗られたら嫌だから本当は誰にも見せたくないし…地下深くに監禁しておきたいくらい素敵だよ~!」

 と、ちょっと怖いことも言ってたけどアレだろ?
 ものの例えだよね…?




 1年の時には、色んな男と遊んでいると噂されていた山ちゃんも
 あの後すっかり波多野さんというカッコイイ彼氏が出来た

 山ちゃんになんで教えてくれないんだよ、と詰めると

 「だってさぁ、私みたいな頭の弱い女マジで相手にしてもらえると思ってなかったんだもん」

 と、照れながら話した
 そんなことわざわざ聞かなくたって、山ちゃんが毎日嬉しそうにしているのは見て知っていたんだ


   ある時

   「ひがし!…波多野くんが迎えに来るって…」

   山ちゃんにそう言われた

   彼氏のお迎えってことだろうけど、波多野さん…しっかりマーキングまでしようって本気か…

   山ちゃんのこと、大事なんだな

   「山ちゃん愛され過ぎぃ~、俺のママなのに!」

   そんなお喋りをしながら2人で外に出ると
   正門付近に人だかりが出来ていた


   「山ちゃん…?」

   「う、うん、多分そう…」

   
   案の定、波多野さんは女子に囲まれていた
   歩いていく俺たちを見つけると

   「あ、めぐみ~!」

   と、女子の群れから離れて山ちゃんの元へ駆け寄った

   「波多野くん、モテモテだぁ…」

   そう嫉妬交じりに言う山ちゃんに

   「その他にモテたって意味ないでしょ、めぐみが見てくれなきゃ」

   なんて、サラッと言った
   ほ~んとカッコイイんだよなうちのママ!

   「じゃあな、いお~」

   そうして2人は手を繋いで歩いていった…

      

   どっちかが失恋したらお互いにいい人を紹介し合おうなぁ、と山ちゃんとは約束をしている
 まぁ?今のところお互いにその必要は無さそうだけど
 
 …寂しい場所に居た同志として本当に嬉しかった
 俺も山ちゃんも、一歩踏み出せたんだから…



 そして最近、俺は漠然とだけど将来のことを考える

 綾がもしネイルの仕事をずっと好きで続けるとしたら
 いつかは独立をするのかなぁ…とか

 俺は美容の道を選ばなかったことを少し後悔したけど、別の形で綾をサポートしていくことは出来るだろうか?


 俺はバイトを通じてバーテンダーという仕事そして酒の歴史を、ここ1年ほどで熱心に学んだ
 そのうえで酒を提供するだけではなく、カフェの営業も勉強しようと思っている

 「カフェバー」みたいな営業に興味があるんだ

 飲食店の開業についての下調べは今からでも手を付けられる準備のひとつだ
 学んだ結果どうするかは別として、必要そうな資格取得は無駄にはならないし、興味があるうちにパスしておけばいいかと思う


 俺はまだ勉強することがいっぱいだ…



 年末には、彼女と一緒に互いの実家へ顔を出した
 うちの家族も赤坂家のご両親も温かく迎えてくれた

 「あんた…けっこうやるわねぇ~」

 と、母からも謎の誉め言葉(?)をもらった
 俺は色々な意味でスタートラインに立ったのだと感じた

 
 実家を出て1人で生活をして初めて、父と母の愛の深さに気が付いた

 1人で暮らす部屋には物が少なく、けっこうミニマリスト的な感覚が自分にあることを知ることができた
 …同時に、料理スキルが無いことも判明した
  

   この先は…

 俺がしっかり自立して、そしたら綾と一緒に生活したいと思う
 そのために残りの学生生活をどう過ごそうかと、はじめて真剣に考えるようになった
 
 彼女と過ごす未来を想像出来ることが嬉しい… 
   
   

 「…俺、バイト変えようと思ってんだ」
 
 ある日、綾にそう言ってみたら

 「ママと離れるの寂しくて辞められないんじゃない?」
 
 と返された… 
 
 
 よくお分かりで!
 それなぁ…俺も本当にそう思う 

 波多野さんも、佐々木さんも店長も、俺大好きなんだよ… 

 ほぼ毎日一緒に仕事してるのに、この先会えない生活なんて想像もつかないな


 だけど、俺は残りの2年を新たな店で修業して関係を構築し、卒業と共にそこで社員として採用してもらうことが目標だ
 寂しいけど俺もママ離れをしなきゃいけないときなんだ、きっと


 「俺だって、早く綾を独り占めしたいから焦ってんの~」

 素直にそう伝える

 「焦んなくていいよ、私いおくんしか見てないもん!」

 …自分でそのような話を振っといてなんだけど
 そう真っ直ぐに打ち返されると照れる…


 「ねぇ、じゃあ俺が一人前になったら結婚してくれる…?」

 今すぐという話じゃないから何気なくそう聞いた



 「うん…でもその時飽きてたらごめんね?」


 
 ………!!!? 


 俺は耳を疑った
 というか、ショックだった…

 仮にも今いい感じで付き合っているというのに
 そんな返事が飛んで来るとは思ってもみなかった

 まぁ、そこは「お前油断するなよ」という意味なのだろうが


 「あ、冗談だよ~、いおくん怒っちゃった?」

 綾はそう言って楽しそうに笑った
 本当に彼女に悪気なんて無い、俺に自信が無いからドキッとしちゃっただけだ

 …そうだ、こんなときママだったら何て返すんだろう  
 「どうせ俺から離れられないでしょ?」な~んて、余裕で言えるんだろうな

 悔しいけどそういう部分も強くなりたいよ俺は…!
 人間として、男として、俺はまだ駆け出しのヒヨッコだ
 

 人生まだまだ勉強することがいっぱいだ


 神様どうか!
 未来の2人が一緒に笑っていられますように…



 



ーーーEND

この後「後日談」「あとがき」あり
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