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後日談:2 恋人
しおりを挟む瀧が休みの平日、2人で買い物に出る
珍しく駅前のデパートなんかに入ってみる
化粧品売り場に用のある連れが居るからだ
瀧はささっと決め打ちで欲しいものだけを購入してはブースをハシゴして行く
「…買えた買えた!」
両手にハイブランドの紙袋をぶら下げる姿は、まるで女性へのプレゼントを買い込んだ人みたいだった
「そんなに金使って元取れるのかよ?仕事用だろ?」
俺は瀧が購入した化粧品の金額を見て素直にそう思ってしまった
「いや、半分仕事で使うけど半分は俺の…と、一条さんのもあるから」
「俺のって…」
特にこだわりなんて無いから瀧が俺に用意してくれたものなら何でも黙って使いますけどね…
それから上の階に移動して、ベビー用品の売り場を目指す
「うわぁ、メルヘンだなぁ~」
確かに俺達が生きる上では用がない場所だ
でもさ、こうしてたまに人のお祝いを選ぶ機会はやってくるだろ
俺はそういうの嫌いじゃないんだよな
「なぁ、前に話したカップルがさ、そろそろ産まれるんだってよ」
「それでお祝い?青とピンクどっち?」
それは、男児か女児かという意味か?
青かピンクかって…
「一応娘さんが誕生するみたいよ」
「OK、一条さんはどんなものを考えてるの?」
いや、それが曖昧だから漠然と見に来たって感じなんだけど
「おそらくほら、この手の食器セットみたいのは複数からかぶっても使わないから…数があっても嬉しい消耗品がいいんじゃない?」
…え?…お前ママの経験ある?
なにその的確な物言いは…
「じゃあ…服は喜ぶかな?」
「最初の肌着系は沢山用意するし貰うっしょ、だから…こういうお出かけするようになったら使えそうな、いいヤツがいいかもね?」
へぇ~…そうだよな…
じゃなくてよ、何で詳しいんだって!
「うちの職場、女性が多いからママさんも居てさ…」
あ、そういうこと?
とりあえずお前がママじゃなくてよかったわ…
「この辺のが良さそう?女の子だからピンク?」
無邪気にそう言った滝の言葉に違和感を覚えた
「女の子だからピンクは安易過ぎるだろ」
そういう発想でピンクの物も沢山貰うんじゃないか?女の子だから、っていうだけで
「…この手の色味がいいなぁ俺は」
俺はメインで棚の場所を取っているパステルのピンクや水色では無く、端の方に少し並んでいたカラーの物を手に取った
黒や紺、茶があってもいいだろ
それの色味がキツイなら、くすみ系のグレーやベージュがいい
素材感がフワフワしているものは可愛いし、デザインがそもそもベビーに着せる物に出来ている
モコモコ素材のロンパースでフードには可愛らしい猫耳が付いている物の色味が気に入って手に取る
「なぁ、こういうの可愛くない?」
「なるほど…大人ってすげぇ~!」
安易にピンクを選ぼうとしていた瀧も、少しは俺の意見に賛同してくれたようだった
色違いで2着を購入し、お祝い用に包んでもらった…
「なんか…一条さんの感覚ってすごいね…」
「なんだよ、点数稼ぎのヨイショかぁ?」
「いやそういうのじゃなくて、ほんと…勃っちゃうって…」
俺が言えたことじゃないが、お前の病気も相当だよ瀧…
こんな生命の誕生を祝う神聖な売り場で勃起しちゃうなんてな(喜)
ーーー
そのうち無事に産まれたとの報告を受け、そのお祝いは理人の手に渡した
俺は子供が好きだ…自分の子供はいない
でも、だから理人のところの利奈を今は度々見に行ってしまう…近所だし…
行けば慶ちゃんも「助かる」なんて言ってくれてるけど本当は迷惑かもしれないと少し怯えていた
理人は元々そうだけど、慶ちゃんも今では完全にプライベートな付き合いをしている
「お客様」として気を使う必要は無い
そんな時に、あのカードを使うのは今かな?ってふと思った…
「なぁ、今度俺の友達にお前を紹介したいんだけど…」
そう瀧に話す
「…えっ?それは、ど、どういう意味で?」
「はぁ?ナニのデカイ彼氏で毎日大変って意味だよ」
「…………!!!!!」
耳まで真っ赤になる可愛い瀧
「…ん?そういうの、嫌?」
俺は自分の周りの人間にこんなに可愛いお前を自慢したいよ
「嫌じゃないよ、けど緊張はする…」
「じゃあお前のスケジュール教えて…?」
そうして慶ちゃんと予定を組んだ
俺の恋人が瀧だと向こうのご夫妻は知らない
もちろん瀧も、知り合いのところに連れていかれるとは気づいて無いだろうなぁ…
「一条さん!なに着ていけばいいの?!」
予定の前日、瀧は焦っていた
「気取る必要なんかねぇって、俺ジャージで行くかもだし」
「そんなの…俺は初対面だよ?しかも一条さんの、その…恥ずかしい格好では出られないよ…」
本当にカッとなるな、お前を見てると…
デニムでいいと言う俺とちゃんとするという瀧の口論は続いた
ーーーそして約束の日
「…んっ……この、えっち…っ!!!」
「はぁ…はぁ…あ~ご馳走様!」
瀧があまりにも緊張してるから、嫌がるのを無理矢理床に押し倒して乱暴に抜いてやった
俺は顔を洗って着替えをする
細身のニットにスキニーデニム
俺と入れ違いで洗面所に入っていった瀧
怒っちゃったかな…
俺は珈琲を持ってベランダに出た
瀧の支度が終わったら部屋を出よう
部屋に戻ると、瀧は黒のセットアップを着てスマホをいじっていた
インナーのVネックから見える鎖骨の上にプラチナのリングが揺れていた
長い髪もセクシーな後れ毛を残し、後ろでお団子に纏めている…好き←
「…行ける?」
俺に返事をするでもなく瀧はソファーから立ち上がった
理人の家は目の前だが、ただ歩いて向かったんじゃあ芸がないと、俺は瀧を車に乗せた
車を走らせるとビルの周りを一周して理人のビルの駐車場へ停める
「一条さん…さっきの…」
ああ、やっぱ怒った?
「ごめんね…」
「や、違う!…たまに、アレして…欲しい」
たまに…アレして…欲しい?
たまに乱暴にして欲しいってこと?(キューン)
「瀧…勃っちゃうから今それ言うのダ~メ…」
そう言って優しいキスをして車を降りた
瀧はさっきの「アレ」でぼーっとしていたようで、黙って俺が乗り込むエレベーターについてくる
俺は理人の部屋のベルを鳴らした
「は~い!待ってましたァ!」
勢いよく玄関ドアが開いた瞬間、理人がそう言って飛び出てきた
「…あれ?瀧さん??」
「…………(ローディング中)」
瀧は知った人間の顔を見て、脳の処理に時間がかかっているようだった
俺は先に洗面所へ行き手を洗った
奥へ行くと慶ちゃんが利奈と迎えてくれた
「慶ちゃん、利奈は元気にしてるぅ~?」
俺は利奈を抱っこしてその頬にキスをした
ん~ご機嫌、マジ天使!絶対嫁にはやらん!
「…へ?…瀧さん??」
慶ちゃんにも理人と同じ反応をされている瀧に可笑しくなった
「いや俺だってさぁ…まさかここに来るとは思ってねぇって!」
耳まで真っ赤にした可愛い瀧…
「ほらぁ~、だから普段通りでいいって言ったのに」
お前がこんなに可愛い俺の恋人なんだって
みんなに自慢したいんだ…
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