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後日談:1 教え子
しおりを挟む波多野はすっかり店の顔となった
女性ファンを増やしに増やし、外では出待ちもあるようで
「マスター今度引っ越しが決まって住所変わるんで、また終わったら報告しますね」
という話があった
本人は女にチヤホヤされるうちが華だと、出待ちを排除しなくていいと、楽しんでいるふうに言っていたが…
波多野は近所に住んでるから、店の帰りに後をつけられたらすぐ家が割れちゃうのかもしれないな…
なんて俺は少し気にしていた
ーーー日曜日
瀧のアラームで目が覚めた
俺はキッチンへ行きサイフォンで珈琲を入れる
「…おい、お前仕事じゃねぇの?アラーム止めるなって」
起きてこないので寝室へ戻って声をかける
瀧は布団の中から腕を伸ばして俺を捕まえた
「おいっ!」
「ちゃんとえっちの時間分早くアラームセットしてたから…ん~」
瀧は部屋の中ではTシャツとパンツで過ごす
俺の目は瀧の股間にいってしまうわけで
パンイチだからその…バキバキになっているのを見て「あっ」ってドキドキしてしまうわけだ
…正直楽しい…そういうの含め毎日が楽しい…
「はぁ、はぁ…朝から無茶すんなってお前…」
口ではそんなことを言いつつ、俺は瀧のパワーのある性生活に大変満足している
お客様満足度ナンバー1!!!
キッチンに置きっぱなしだった冷めた珈琲を飲んで、瀧に食べさせるベーコンエッグを焼いた
仕事に出るのにきちっと支度を済ませた瀧は男前だ
長いウェーブの髪を後ろで1本に束ねて動きやすい格好が似合っている
「21:00か22:00か、その頃帰る」
「んん、しっかり働けよ…」
そう言って瀧の股間を撫でる俺←
「…外出るんだからやめろってぇ~」
ドアを開けると逃げるように出ていく瀧
「行ってきま~す!」
俺はドアを開けたまま手を振った
瀧は階段を走って下りていく、その足音がまた可愛いんだ
はぁ…楽しい……
俺は酒を持ってベランダに出た
煙草を吸いながら噛みしめる、この甘い生活を…
しばらく酒を飲んで俺は二度寝をする
目が覚めると夕方だった
顔を洗って買い物に出ようと支度をする
瀧になにを食べさせよう…
冷蔵庫の中を見ながら買い物リストをチェックして車の鍵を持った
家に戻るとビールを飲みながら夕飯の支度を始める
瀧サイズのハンバーグを焼いておく
付け合わせの色合いも美しく仕上げ、食べるときにチンするだけだ
ピンポーン…ピンポーン…
「はい」
最近は瀧の買い物の荷物が届いたりもするから、出来る限り居留守はしないようにしている
「隣に越して来た者です、ご挨拶させていただけますでしょうか?」
「少々…お待ちください」
…え?
ほかの住人とか今まで会ったことも無いのに…
俺は気を引き締めて玄関ドアを開けた
「…ど~も~!」
「……はぁ?!」
そこに立っていたのは波多野だった
店で面倒見てる、あの波多野…
「隣に越してきました、波多野と申します!」
「…え?ストーカー?」
「違いますよ…興味ないですよマスターに…」
興味ないは言い過ぎだろ、気をつけろ
「ちょっと待て」
俺は慌ててバッグを持って玄関に向かった
「お前の部屋見せて」
「どうぞ~」
波多野が部屋に通してくれた
「へぇ~…ここはワンルームなんだな」
「いや、そうなんですよ!」
以前、波多野がうちに来た時に「お前も越してこい」なんて言ったけどさぁ…まさかの隣…
「マスターに言われた時、検索してみたんです…」
そのときここが「空き予定」になっていたらしい
ちょうど前の住人が出たばかりでリフォームが入っていたので、それが終わり次第内見の予約をしたとのこと
「どのフロアも角部屋は広くて家賃も高いんですけど、間の部屋がワンルームで…」
なるほどな、俺は自分の部屋を決めた時ちゃんと見てなかったんだな、ということが分かった
「じゃあお前、毎日うちに来れるね?」
「嫌ですよ…まさかアンアン聞こえないですよね?ここ?」
「………」
俺と瀧が居ると知ってて来たのはお前だろーが
なんなら毎日壁際で致して聞かしたろか?
「あ、じゃあお前のセフレもここに出入りすることになるんだねぇ?」
「………」
波多野…もうやめよう…殴り合うのは…
「お祝いに欲しいものある?」
「そんな…それでなくてもマスターには勉強させていただいてますから…」
「あ~、そういうのやめろって…」
「じゃあ…マスターの使ってる道具一式が欲しいです」
「…いいよ、一式全部ね」
「やったぁ~!バーディーのツール!!」
まぁ嬉しいか、こいつも酒が趣味だもんな
うちのバカとは酒の話は出来ないから(分からないから)、波多野としっぽり酒談義をするのは俺も楽しいよ
…見たところ部屋はまったく荷解きが出来ていない様子だったが、瀧も帰ってくるし夜はうちに来ないかと誘ってみた
波多野も「行きます」とのことで、俺は一旦部屋へ戻った
21:00を過ぎると瀧が帰ってきた
「ただいまぁ~」
「瀧!」
俺は玄関に飛んでいくとお帰りのチュウをした
「んん、ぁっ…瀧、瀧!」
「なにぃ…えっちなんだから…」
違う、お前のキスが良くて大きい声を出したのでは無い…いや良いけど…じゃなくて
「違くて!隣の人呼んできてよ」
「……へ?」
俺は靴を脱ぐ前の瀧を再びドアの外へ出した
ーーー10分後
「お邪魔しま~す」
瀧がやっと波多野を連れてきた
「波多野が居るなら先に教えといてよ~、めちゃくちゃ怖かったじゃん…」
「マスターほんと変態ですよね、そういうとこ」
なんとでも言え、俺は気にならない
瀧が風呂に入っている間にハンバーグを温めた
多めに焼いておいて良かった、これなら波多野も余裕だろ
「波多野、運んで~」
「かしこまりましたぁ」
テーブルの上にサラダや酒のツマミやメインディッシュが並ぶ
瀧が風呂からあがったところで人数分のモヒートを用意した
「じゃあ波多野、これからお隣さんだからよろしくな、乾杯」
「かんぱ~い!」
「でもお前さぁ、こんなとこに越して出待ち勢どーすんの?秒でバレるじゃん」
「ああ、別にそれ対策で越したわけじゃないんで大丈夫ですよ…」
え?…あ、そういう対策的な意味での引越しじゃなかったんだ…
「…移動時間の短縮になるなって思って越してきました」
ああぁ…そうだった
忘れてたけどこいつ超効率人間なんだった
出待ちの女どもくらい適当にあしらって堂々と部屋に帰って行きそうな逞しさはあるか…
「なぁ、お前の部屋がめちゃくちゃダサかったら好感度上がるよなぁ~」
まだカーテンも付けていなかった波多野の部屋
「片付いた頃見に行こう」
インテリアに無頓着な瀧がそう言った
「残念ながらその期待には応えられないっすねぇ、そんなんじゃ可愛い女性に見せられないじゃないですかぁ~」
お~お~、さすが先生
仰ることが違いますねぇ…
酒を飲んでバカなことを話すだけの時間
まぁ、俺としてはこうして仲間が近くに居るというのは頼もしいことだ
これから先末永く付き合っていけると嬉しい
俺の可愛い教え子である…
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