愛してると伝えるから

さいこ

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決壊

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 ピンポーン…

 俺は黙ってエントランスを開けた
 少しすると今度は玄関のベルが鳴る

 「はっ…はぁっ…どうしたの…一条さん」

 ドアを開けると息を切らした瀧が立っていた
 俺のことを気にして走って来たんだよな

   ただそれだけの事で嬉しいなんて
 俺は複雑だよ瀧…
 


   
   「なぁ、瀧…俺はお前のことが好きだよ…」




   「…え?」



  
 一瞬フリーズした瀧だったが

 「あの、中に入れてくれないの…?」

 と言った


 瀧がソファーに座る
 俺も少しでも頭を整理しようとキッチンで珈琲を入れた

 瀧に話してどうなるか?
 そんなことを考えても仕方がない

 素直に話して、野郎の考えも聞くだけだ


 珈琲のカップを持ってソファーに移動した


 「一条さん、ちょっと落ち着いた…?」

 俺がちょっとカッとなっただけだと、少し待てば落ち着くものだと、お前はそう思ってるだろうが…


 「…落ち着いてるから聞いて?」

 「はい」

 
 はぁ…
 なんで俺がこんなに緊張しなきゃいけないんだ…


 「まず、俺はお前が好きだと思う…ってことと」

 そうだ、ちゃんと話してやるからお前も考えろ

 「すぐ終わるような関係にはなりたくないから、その可能性がありそうなら最初に断ってくれ」

 終わりの寂しさには耐えられそうにないんだ


 
 黙っていた瀧が話す

 「俺のことが好きなの?…そういう意味で、ってこと?」

 「そうだよ、セックスしたいって意味だろ」

 「言い方…」

 あ、言い方…でもちゃんと理解してもらわないと俺も困る


 「…でも終わるのは怖いんだね?」

 「始まって終わったら、お前は居なくなるだろ…?」

 「なら、始めないでずっと居たい?」

 「そうだよ…でももう……」

 蓋をしておくにはしんどい


 
 「お前は…?瀧…」

  

 瀧はソファーに座る俺の正面に膝をついて向かい合う

 「俺はしつこいから覚悟して…」

 瀧は照れたような顔をしてからキスをする


   俺は瀧の唇と舌の動きに神経を集中した
 男同士でこんなことをすることになるなんて思ってもみなかったよ

   でも…気持ちいいなぁ、ジワジワと時間をかけて効いてくる感覚が癖になりそうだ…


 「んん…あぁっ……」
 
 「ちょ…なんて声出すの…」

 「もっと、瀧…ん…」

 瀧のキスは気持ちいい、あの日見た夢みたいに…
 コレは思ったより下腹部に…きて…やばい


  「…瀧…こっちも触って…」   

   俺は自分の股間に瀧の手を誘導した

   「もう、せっかちなんだね一条さんは…」
 
 瀧は俺の下着に手を入れ左手で俺のソレをゆるゆると撫でるが、少しもどかしかった

   俺は瀧の左手の上に自分の手を重ねて押さえ、グイグイと腰を動かした


   「あぁっ…気持ちいっ…い、瀧…」

   「そんな!えっちな声出さないでよ…」


   瀧が俺の唇を噛んで、俺も快感を求めて腰を動かす…本能ってやつだ
   気持ち良さからは逃げられない

   「瀧…イきそう…あっ、…んんっ!」

   「…いまっ!」
  
   瀧はタイミング良くティッシュを用意し、俺の体液を最小限の範囲に留めた、すご!



 …野郎2人でも普通に気持ちいいことが分かった 
 
   「はぁ、はぁ…あ~気持ちよかったぁ…」

 無理してケツを使わなくても大丈夫という学びも得た

   「えっちな顔してたなぁ…一条さん」

   それは仕方ねぇだろ、どうせお前だってそんな顔するに決まってるよ


    

 お前は言葉で確認しないと分からないバカだから言うけど
 
 「なぁ、俺お前のこと好きだって…」

 「一条さんちょっと待って、今の今で脳が爆発しそう…」 

 瀧は俺の体に顔をうずめてそう言った



 「す、スイマセン、今ぼんやりしたくないので珈琲のおかわりをいただけますデショウカ」

 「…待ってな」

 俺は吹き出しそうになるのを堪えてキッチンへ移動した
 サイフォンを加熱しながら瀧の様子を確認する


 「……!!!!!」

 せっかく目が合ったのにすぐに下を向く瀧
 まだソファーの下の床に座っている

 なんでだよ、たった今人のイチモツ握ってたくせにそこ恥ずかしがるってどういうこと?
 ほんと面白いよな…そういうのが可愛いよ


 カップに珈琲を注ぎ、瀧に声をかける

 「おい、これミルク自分で入れろよ」

 声は聞こえているようで、立ち上がってフラフラとキッチンへやってきた

 「さっきは適当に入れたから…」

 
 ミルクのボトルに手を伸ばすと、デカい瀧は少しかがむ格好になる 
 俺はその機を待ち構え、目線に降りてきた瀧の唇にキスをした

 ゴトン!

   …とミルクのボトルをシンクに落とす瀧
 
 「……!」

 「おい!落とすなよ、シンクがへこむだろ気を付けろ」

 そんな理不尽なことを言う俺


 瀧はシンクからボトルを取り上げると作業台に置いた

 「…一条さん」

 「ん?」

 「びっくりするじゃん…色々さぁ…」

 まぁ俺もそうだよ
 今まで男性をそういう目で見ると思っても無かったから

 キッチンで向き合う格好の瀧と俺


 「俺の方がびっくりしてるけどね…」

 瀧の首に腕を回し、少し体重をかける
 瀧はシンクのふちに両手をついて前かがみになった

 「嘘つき…ズルいよ、一条さん…」

 瀧は小さい声でそう言うと俺の唇にキスをした


 「ねぇ、本当なんだよね?俺のこと…」

 「本当だよ、でも本当だからこうなるのは嫌だった…」

   嫌だったけど、俺に気を使って触らないようにしたり、申し訳なさそうに謝罪をしたり

   こうして一緒にいてもいいかと聞くお前を見てたらさぁ…
  

 俺は壊れちゃったんだ



 「もし…俺の前から消えるときは、そう教えてくれな…」

 「………!」

 「終わりが来るのが怖いから…好きな人なんて欲しくなかった…」

 矛盾してるよなぁ
 でもそれが俺の気持ちだ


   「お前はもう…俺に飽きたの…?」

   「…そうじゃない!一条さんに嫌われたくなかったから見栄張ってただけ…だよ」

   「それが本心かどうかなんて聞いたところでな?」

   また余計な嫌味が口をついて出る



 「俺が死ぬまで隣に居たら…その時は信じてくれる?」

   俺の体を抱きしめて瀧が言った

 
   そんな先のことなんて分かんねぇだろ…馬鹿が…
 そう心の中で思いながら、瀧の体に体重を預けた
   


  




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