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???②
しおりを挟む理想の相手と巡り合い、幸せな人生を手に入れた彼女に対し、私はと言えば特に好きでもないとある男性と結婚した。完全なる政略結婚だった。そして、その相手こそ件の王子……私の親友に恋をしていた人だった。
元々、伯爵家の令嬢である彼女と彼の婚約は、彼自身が強く望んだことによって結ばれたものだった。しかしその婚約は破棄され、彼の隣は空席となってしまった。王家としては出来るだけ早く次の相手を据え置きたかったらしい。そこで、公爵家の娘であり、王子の元婚約者の親友でもあった私に白羽の矢が立ったのだった。
婚約者候補として彼と初めて話をしたとき、私は彼が未だに彼女への思いを捨てきれていないということを悟った。彼は、決して実ることのない思いを抱え続け、酷く苦しんでいた。
私はそのとき、初めて彼に同情心を抱いた。
私の両親は、私と彼との結婚に対して消極的だった。親としては当然の反応だと思う。けれど、最終的には私自身が彼との結婚を承諾した。
私は、この結婚に愛を求めるつもりはなかった。彼の心に彼女の存在が在り続けるなら、それはもう仕方のないことだと思っていた。
けれど、彼は私を愛そうと努力してくれた。彼は、恋愛面……こと彼女に関しては救いようのないポンコツだったけれど、決して愚かな人間ではなかったから。政略結婚とはいえ、共に国を守るパートナーとして彼は私を大切にしてくれた。
私が王妃の座についた後も、私と彼女の仲は続いていた。昔のようにほぼ毎日顔を合わせることは出来なくなってしまったが、最低でも週に一度は彼女と一緒に穏やかなティータイムを楽しんだ。
時は経ち、彼女にも私にも子供が生まれた。彼女は私の二人の息子に、ルークとキースという名を贈り、私は彼女の娘にシャルロットという名を贈った。
シャルロットは、髪の色から瞳の色まで、何もかもが彼女そっくりのとても可愛らしい女の子だった。であるから、とある日の夕食の席で、キースが「恋をしました」と言わんばかりの表情でシャルロットについて話しだしたときは思わず笑いが止まらなくなってしまった。
蛙の子は蛙というけれど、まさか親子揃って赤い髪にエメラルドの瞳の少女に恋をするとは。可愛い息子の初恋だとシャルロットとキースの婚約を認めたが、その後キースが好きな人に対してはポンコツに成り下がってしまうという父親の厄介な性質をもそのまま受け継いでしまったということが分かり、親一同は苦笑した。
いくら我が息子とは言え、親友の娘を傷つけることは許さない。しかし、二人の婚約は解消しましょう、と告げる私を止めたのは、他でもない彼女だった。
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