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第一章 【七罪の魔王】 カイン・エレイン編
25 ラダスの街の夜 屋敷捜索
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ラダスの街の夜、それも人々も喧騒も全く聞こえなくなった深い夜。そこでは足音を極力立てない様に動く一団がいた。
彼等は全員が揃って黒い外套を着ており、昼間に歩いていれば間違いなく怪しまれただろう。
だが、街の人間の殆どは寝静まっており、彼等に気付く者は殆ど居ない。
「慎重に行くぞ」
「「「了解です、グラス隊長」」」
グラス隊長と呼ばれた男を先頭に、彼等は街の中を進んでいく。彼等が進む先にあるのは貴族達の屋敷が立ち並ぶ貴族街と呼ばれる場所だ。
当然そんな場所であるが故に貴族街の入り口には警備の衛兵達がいる。だが、なんと衛兵達は全員が黒い外套を着た怪しげな一団である彼等を素通りさせたのだ。しかも、それを他の衛兵たちは止める気配すら無かった。結局、彼ら全員が通るまで衛兵達は素通りさせたのだった。
貴族街の一角に存在するとある屋敷、彼等はその屋敷を包囲する様に、集まっていた。
「ここか」
「はい」
彼等は、ここだけではなく敵の他の拠点も侵入する手筈になっている。
だが、情報ではここは敵の本丸の筈。他の拠点に侵入している者達の失敗も許されないが、この場にいる彼等の失敗は特に許されない。
「行くぞ」
彼らを率いるグラスの一言によって彼らは次々に屋敷の中へと侵入していく。そして屋敷の中に入り込んだ彼等は、屋敷内の部屋を次々に捜索していった。
「ここにはいません!!」
「ここもです!!」
「二階は捜索中ですが、まだ見つかっていません!!」
屋敷を捜索中の部下達の報告を聞き彼等を率いている男は舌打ちをする。だが、どれだけ時間が経過しても、一向に見つかる気配がない。
「まだ見つからないのか!!」
「ダメです、何処にもいません!!」
「くそっ、本当にこの屋敷なんだろうな!!」
「綿密な調査の結果ですから間違いがないはずです」
「……まさか、逃げられたのか?」
ここまで追い詰めるのにも、彼等はかなりの時間をかけている。見つからなければ、今迄の苦労が水泡に帰す。
だが、この屋敷を監視していた者からの報告で、この屋敷に出入りしていた者は把握している。彼等にとってはこれまで何度も辛酸を飲まされてきた相手だ。あと一歩と迫りながら逃がした事など一度や二度ではない。だからこそ、今回の監視に関しては細心の注意を払っている。
ここで、奴らを逃せば次に奴らの尻尾を掴むのは何時になるか。だからこそ、ここでなんとしても奴らを討つ。それは彼ら全員の思いだった。
「屋敷をもう一度捜索するんだ、今度は徹底的にだ」
しかし、どれだけ捜索しても見つからず、ただ時間だけが過ぎていく。このままでは夜が明けかねない。だというのに手掛かりすら見つからない。
「隠し扉とか隠し通路、そう言った類のものは無いのか!?」
「探してみます」
彼等は自分達が追っている敵が、魔物を使い何らかの実験をしている事は掴んではいるが、その詳細までは知る事が出来ていない。だが、その実験をこのまま放置しておけばどういった被害につながるかもわからない。だからこそ彼等にしてみれば一刻も早く見つけなければならないのだ。
「隠し通路を見つけました、来てください!!」
ふと、二階の奥の部屋からそんな声が屋敷全体に響いた。手掛かりが見つからず焦っていた彼等にはその声は福音の様にも聞こえた。この屋敷にいる者全員が急いでその声が聞こえた部屋へと向かった。
声が聞こえた部屋はこの屋敷の執務室と思われる場所だった。その部屋その端に備え付けられた本棚の前で声の主が待っていた。
「隠し通路を見つけたらしいな」
「はい」
そして、全員が集まるのを確認した後、声の主は本棚を横に動かした。その奥にあったのは階段だ。こんな風に隠されていたからには、これは隠し階段なのだろう。しかも、階段の先は暗く全く先が見えない。
「グラス隊長、どうしますか」
グラスは悩んでいた。屋敷を捜索しても、現状何も出ていない。唯一残された希望はこの先を進む事だけだ。
だが、それは敵の懐に飛び込むという事にもなりかねない。今日、襲撃をするという情報も極力秘匿し、少し進展があっただけという偽の情報をばら撒いた。これだけ隠密に、そして早急に動いたというのに、屋敷に誰もいなかった。であるなら、この襲撃も何処かから情報が洩れている可能性があった。
なら、この先に罠がある可能性は大きいだろう。だが、自分達は隠密に動く為に、極力身軽にしている。勿論、防具なんてものは自分の急所を守る程度しか装備していない。
そんな自分達が、相手の懐に飛び込むような真似をすれば悪戯に犠牲が大きくなる。
そんな風に悩むグラスに、自分達の部下から次々と声がかかる。
「隊長、行きましょう」
「ここしか、手掛かりがないんです。行くしかないでしょう」
そんな声が次々と部下から上がる。そして、その声に後押しされるようにグラスは決断する。
「……分かった、この先に向かう。お前達、行くぞ!!」
「「「了解!!」」」
そして、彼等はこの部屋に隠されていた階段を下っていくのだった。
彼等は全員が揃って黒い外套を着ており、昼間に歩いていれば間違いなく怪しまれただろう。
だが、街の人間の殆どは寝静まっており、彼等に気付く者は殆ど居ない。
「慎重に行くぞ」
「「「了解です、グラス隊長」」」
グラス隊長と呼ばれた男を先頭に、彼等は街の中を進んでいく。彼等が進む先にあるのは貴族達の屋敷が立ち並ぶ貴族街と呼ばれる場所だ。
当然そんな場所であるが故に貴族街の入り口には警備の衛兵達がいる。だが、なんと衛兵達は全員が黒い外套を着た怪しげな一団である彼等を素通りさせたのだ。しかも、それを他の衛兵たちは止める気配すら無かった。結局、彼ら全員が通るまで衛兵達は素通りさせたのだった。
貴族街の一角に存在するとある屋敷、彼等はその屋敷を包囲する様に、集まっていた。
「ここか」
「はい」
彼等は、ここだけではなく敵の他の拠点も侵入する手筈になっている。
だが、情報ではここは敵の本丸の筈。他の拠点に侵入している者達の失敗も許されないが、この場にいる彼等の失敗は特に許されない。
「行くぞ」
彼らを率いるグラスの一言によって彼らは次々に屋敷の中へと侵入していく。そして屋敷の中に入り込んだ彼等は、屋敷内の部屋を次々に捜索していった。
「ここにはいません!!」
「ここもです!!」
「二階は捜索中ですが、まだ見つかっていません!!」
屋敷を捜索中の部下達の報告を聞き彼等を率いている男は舌打ちをする。だが、どれだけ時間が経過しても、一向に見つかる気配がない。
「まだ見つからないのか!!」
「ダメです、何処にもいません!!」
「くそっ、本当にこの屋敷なんだろうな!!」
「綿密な調査の結果ですから間違いがないはずです」
「……まさか、逃げられたのか?」
ここまで追い詰めるのにも、彼等はかなりの時間をかけている。見つからなければ、今迄の苦労が水泡に帰す。
だが、この屋敷を監視していた者からの報告で、この屋敷に出入りしていた者は把握している。彼等にとってはこれまで何度も辛酸を飲まされてきた相手だ。あと一歩と迫りながら逃がした事など一度や二度ではない。だからこそ、今回の監視に関しては細心の注意を払っている。
ここで、奴らを逃せば次に奴らの尻尾を掴むのは何時になるか。だからこそ、ここでなんとしても奴らを討つ。それは彼ら全員の思いだった。
「屋敷をもう一度捜索するんだ、今度は徹底的にだ」
しかし、どれだけ捜索しても見つからず、ただ時間だけが過ぎていく。このままでは夜が明けかねない。だというのに手掛かりすら見つからない。
「隠し扉とか隠し通路、そう言った類のものは無いのか!?」
「探してみます」
彼等は自分達が追っている敵が、魔物を使い何らかの実験をしている事は掴んではいるが、その詳細までは知る事が出来ていない。だが、その実験をこのまま放置しておけばどういった被害につながるかもわからない。だからこそ彼等にしてみれば一刻も早く見つけなければならないのだ。
「隠し通路を見つけました、来てください!!」
ふと、二階の奥の部屋からそんな声が屋敷全体に響いた。手掛かりが見つからず焦っていた彼等にはその声は福音の様にも聞こえた。この屋敷にいる者全員が急いでその声が聞こえた部屋へと向かった。
声が聞こえた部屋はこの屋敷の執務室と思われる場所だった。その部屋その端に備え付けられた本棚の前で声の主が待っていた。
「隠し通路を見つけたらしいな」
「はい」
そして、全員が集まるのを確認した後、声の主は本棚を横に動かした。その奥にあったのは階段だ。こんな風に隠されていたからには、これは隠し階段なのだろう。しかも、階段の先は暗く全く先が見えない。
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グラスは悩んでいた。屋敷を捜索しても、現状何も出ていない。唯一残された希望はこの先を進む事だけだ。
だが、それは敵の懐に飛び込むという事にもなりかねない。今日、襲撃をするという情報も極力秘匿し、少し進展があっただけという偽の情報をばら撒いた。これだけ隠密に、そして早急に動いたというのに、屋敷に誰もいなかった。であるなら、この襲撃も何処かから情報が洩れている可能性があった。
なら、この先に罠がある可能性は大きいだろう。だが、自分達は隠密に動く為に、極力身軽にしている。勿論、防具なんてものは自分の急所を守る程度しか装備していない。
そんな自分達が、相手の懐に飛び込むような真似をすれば悪戯に犠牲が大きくなる。
そんな風に悩むグラスに、自分達の部下から次々と声がかかる。
「隊長、行きましょう」
「ここしか、手掛かりがないんです。行くしかないでしょう」
そんな声が次々と部下から上がる。そして、その声に後押しされるようにグラスは決断する。
「……分かった、この先に向かう。お前達、行くぞ!!」
「「「了解!!」」」
そして、彼等はこの部屋に隠されていた階段を下っていくのだった。
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