七罪剣と大罪人と呼ばれた少年の反逆譚

YUU

文字の大きさ
上 下
17 / 33
第一章 【七罪の魔王】 カイン・エレイン編

17 オークキング

しおりを挟む
 ゴブリンの襲撃があった翌日、俺達は村長と共に村の奥の森への道に向かっていた。

「私が案内できるのはここまでです。後はよろしく願いします」
「分かりました」

 そして、村長と別れた俺達は森の中へと歩み出していった。



 この森に足を踏み入れた時から感じていたが、森の奥に進むにつれ段々と濃くなっている。この森には魔力が渦巻いているのだ。勿論、膨大な魔力で異界と化していた奈落などに比べれば圧倒的に少ないだろう。普通の人間ではこの森の魔力を意識しないと感じる事が出来ない程度でしかない。
 だが、こんなある意味何の変哲もない森の中に魔力があること自体が異常だ。奈落然り、魔境と呼ばれる魔力で汚染された地然り、その場所が魔力で汚染されるにはそれなりの理由があるはず。
 この森をこれ以上探索する為には、覚悟が必要かもしれない。

「アルト」
「何だよ、一体?」
「もしかしたら、俺達はとんでもない事に首を突っ込んだかもしれない」
「は? どういう事だよ?」
「アルトは感じないか? この森にある魔力を」
「は!? ……嘘だろ……」

 本来ならこんな所に魔力がある事を教会に報告するべきなのだろう。報告すれば然るべき対処をしてくれるはずだ。
 だが、今はそんな余裕はない。ここから街に戻ったとしても片道五日、往復で十日だ。だがこの計算はあくまで最速である。ここに準備をする時間を取れば、もっと時間がかかるだろう。村長は数日に一度の頻度で魔物が襲ってくると言っていた。最速でも、三回は襲ってくる計算になる。
 そして、村を放棄するとしても、あの村には負傷者が多い。準備と移動にどれだけ時間が必要か分からない。だが、こうなっては村は放棄せざるを得ないかもしれない。

「どうする、戻るか?」
「それしかないだろ」
「結構森の奥まで来たからな。早い内に戻らないと日が暮れるかもしれない。カイン、急いで戻るぞ」
「……いや、そう上手くは行かないみたいだ」

 俺がそう言って首を向けると、そこから棍棒らしきものを持ったコボルトの集団が姿を現した。

「グギァァ」
「グギィィ」
「グゥゥゥ」

 だが、それは前方だけではなく、俺達を取り囲むように四方八方から現れていた。

「ちっ、つまり、こいつらを倒さない限り村には戻れないって事か」
「そう言う事だな!!」

 そして、俺達はコボルトとの戦いに突入したのだった。



「くそがっ!! 全くキリがねぇ!! カイン、そっちはどうだ!!」
「こっちもダメだ!!」

 俺達はこのコボルトの包囲網から抜け出そうと、一点突破を狙っているが全然上手くいく気配がない。包囲網に穴をあけようとしても、後ろから包囲網に開けられた穴を埋める様に次々とコボルトが補充されてくるのだ。

「だけどっ!!」
「もうすぐっ!!」

 それでも、かなりの数のコボルトを倒し続けていた為か、段々とコボルトの数が減っていく。後方からの補充も目に見えて少なくなっていた。包囲網そのものが薄くなっているのだ。
 俺達は顔を合わせて、これなら行ける、と頷きあった時だった時だった。

「ブモォォォォォォォォォ!!」

 そんな、叫び声が森の奥から聞こえたのだ。そんな想定外の叫び声で一瞬アルトは膠着してしまった。

「グギャァァ」
「アルト!!」

 硬直したアルトがコボルトに棍棒の一撃を喰らってしまった。俺は慌ててアルトの援護に回る。

「大丈夫か?」
「あ、ああ。何とか」

 アルトは準備していたポーションを飲み、怪我を治そうとしていた。

「だけど、今の叫び声は一体……」

 そんな時、地面をドンドンと揺らす様な、衝撃がこの場に流れる。

「な、何だ一体……」
「……あれがさっきの叫び声の正体……」

 そう、森の奥から現れたのはオークだった。しかも、その数は一体だけではなく、コボルト達と同じく、俺達を包囲する様に何十体も現れたのだ。

「ふざけんな!! なんでこんな森の中でこんだけのオークがいるんだよ!!」

 アルトは衝撃のあまりそんな叫び声を上げていた。それも仕方がないだろう、オークの強さは俺が奈落で戦ったサイクロプスと同程度だ。一、二体程度ならまだ対処は可能だっただろう。だが、ここにいるのはそんな生易しい数ではないのだ。

「とりあえず、逃げる事を最優先に考えるんだ!!」
「分かってる!!」

 そして、オークとの戦いになると思われたその時、再び叫び声が聞こえてきたのだ。

「ブモオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!」

 聞こえてきた叫び声は、先程聞こえてきた叫び声を遥かに上回る物だった。

「こ、今度は一体なんだよ……」

 森の奥から先程を遥かに上回る程の足音を鳴らしながら一体の巨大なオークが現れたのだ。
 目の前に現れたその一体のオークは、他のオークたちと何もかもが違っていた。周りにいるオークも俺達の二倍以上の体格を持つというのに、目の前のオークはそれをさらに一回りも大きくした様な巨体を誇っている。そして、何より印象的なのがその威圧感、周りにいるオークたちとは桁違いの威圧感を放っていた。

「は、ははは……。嘘だろ……、なんでこんな所に、こんな怪物がいるんだよ……」

 アルトは今にも気を失いそうになっている。俺も意味が分からなかった。何故こんなモノがこんな森にいるのだ。

「オークキング!!」

 そう、俺達の前に現れたのはオークキング、災害級に分類される程の魔物だったのだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます

海夏世もみじ
ファンタジー
 月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。  だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。  彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

家族もチート!?な貴族に転生しました。

夢見
ファンタジー
月神 詩は神の手違いで死んでしまった… そのお詫びにチート付きで異世界に転生することになった。 詩は異世界何を思い、何をするのかそれは誰にも分からない。 ※※※※※※※※※ チート過ぎる転生貴族の改訂版です。 内容がものすごく変わっている部分と変わっていない部分が入り交じっております ※※※※※※※※※

食うために軍人になりました。

KBT
ファンタジー
 ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。  しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。  このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。  そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。  父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。    それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。  両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。  軍と言っても、のどかな田舎の軍。  リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。  おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。  その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。  生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。    剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。

異世界無宿

ゆきねる
ファンタジー
運転席から見た景色は、異世界だった。 アクション映画への憧れを捨て切れない男、和泉 俊介。 映画の影響で筋トレしてみたり、休日にエアガンを弄りつつ映画を観るのが楽しみな男。 訳あって車を購入する事になった時、偶然通りかかったお店にて運命の出会いをする。 一目惚れで購入した車の納車日。 エンジンをかけて前方に目をやった時、そこは知らない景色(異世界)が広がっていた… 神様の道楽で異世界転移をさせられた男は、愛車の持つ特別な能力を頼りに異世界を駆け抜ける。 アクション有り! ロマンス控えめ! ご都合主義展開あり! ノリと勢いで物語を書いてますので、B級映画を観るような感覚で楽しんでいただければ幸いです。 不定期投稿になります。 投稿する際の時間は11:30(24h表記)となります。

処理中です...