七罪剣と大罪人と呼ばれた少年の反逆譚

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第一章 【七罪の魔王】 カイン・エレイン編

13 傭兵ギルドでの依頼

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 この街に来てから、十日が経過していた。今の俺は傭兵ギルドに所属し魔物を狩る事を生業としている。奈落の魔物から手に入れた魔石を売り払って手に入れたお金がかなり手元には残っているが、一生をそれで暮らすには圧倒的に足りない。それに、ただ毎日をダラダラと暮らすのも良くないだろう。



 傭兵ギルドでは戦争への参加依頼や護衛依頼等、様々な物があるが、この街では一番安定していると言われているのが魔物討伐の依頼だ。
 この街は奈落に隣接している為、他の街に比べると魔物の数が多い。だからこそ、安定して魔物討伐で金銭を稼げるのだ。実際この街の傭兵ギルドに所属している人間の殆どは魔物の討伐の報酬が一番の収入源となっているらしい。



「おう、カインか」
「マスター、こんにちは」

 傭兵ギルドに到着して早々声を掛けてきたのは、このギルドのギルドマスターだった。かつては腕利きの傭兵だったらしいが、現役を退いた今でも、その強さは健在だそうだ。顔に無数の傷跡が付いており、その巨躯と併せてギルドマスターは新人から怯えられているらしい。
 ギルドマスターに挨拶を済ませ、先にギルドで待っていた、俺のパートナーの元へ向かった。
 今の俺は傭兵ギルドで出会ったある男と二人でコンビを組んで活動していた。ギルドに登録を終えた時、その男は声を掛けてきたのだ。



「なあ、そこの人」
「……俺の事か?」
「ああ、あんたもこのギルドに入るのか?」
「そのつもり」
「じゃあさ、俺と組まないか? 俺も今日このギルドに登録したんだ。一人より二人の方がいいだろ?」
「わかった」
「じゃ、よろしくな!! 俺の名前はアルトだ」
「俺はカイン、よろしく」



 そんな経緯で俺達は出会った。アルトは俺と同年代の様で気が合い、今も二人で活動している。そして、二人で傭兵として活動する日々を過ごしていた。

「今日はどの依頼を受けるんだ?」
「これにしようと思う」

 手に取ったのは一枚の依頼書。その内容は依頼主の村に魔物が出現している。その魔物が作物を荒らし、村の住人まで襲っているので何とかしてほしいとの事だ。

「この依頼か……、報酬が少なくないか?」
「でも、これ以外目ぼしいものは無いぞ?」

 するとアルトは、依頼ボードを一瞥し、「ホントだ」と一言呟いた。それに報酬が少ないと言ったが、それは他に比べてだ。それも、ダントツに少ないという訳ではない。

「じゃあ、これでいいか?」
「ああ」

 俺達は依頼を受ける事にして、手続きを終え、準備に入る事にしたのだった。



 やってきたのは、俺達が行きつけにしている鍛冶屋だった。この鍛冶屋の店主は強面の男で如何にも熟練の鍛冶師と言った体付きのドワーフだった。
 ドワーフ、亜人族と呼ばれる種族の一種で、山の民とも呼ばれており、その特徴として種族全体が人間よりも低身長であると言われており、ドワーフの身長は同じ年齢の人間の大体三分の二程度しかない。
 代わりに、人間より筋力が優れており、その筋力を生かして代々槌を振るい、結果優れた鍛冶技術を持つようになった。
 そして、その優れた筋力を戦いに使う者も多く、傭兵として第一線で活躍している者の中にもドワーフは少なくないと聞く。
 この鍛冶屋の店主もそのドワーフと呼ばれる種族の一人で、俺達はおやっさん、と呼んでいる。

「おやっさん」
「おう、お前らか。今日はどうしたんだ?」
「今日は、今使ってる武器のメンテナンスをしてもらおうと思って」
「そうかい。じゃ出しな」

 俺とアルトは腰にぶら下げた剣をおやっさんに手渡した。俺の持っている剣は奈落で使っていた聖気を纏っている剣だ。今も俺の中にある七罪剣と名付けられた剣、あれはむやみに人前に晒すべきでないし、晒してはならないものだ。今後も使うつもりはない。

「おいおい、剣の使い方が荒いぞ」
「そんな事までわかるのか!?」

 アルトが驚いて声を上げていた。

「俺はなぁ、この仕事を何十年とやってんだ。それぐらい一目で分かるっての」
「そんなもんなのか」
「お前さんのこの剣は俺が打ったんだぞ? 分からないはずないだろ」

 そう言いながらおやっさんは砥石を取り出し慣れた手つきで、剣を研いでいく。そして、アルトの剣を研ぎ終わった後、俺の剣もササッと研いでいった。

「それ、終わったぞ。代金はいつも通りでいいからな」

 俺達はおやっさんから剣を受け取るとそのまま腰にある鞘に納めた。

「ありがとう」
「おやっさん、助かった」
「まぁ、こっちも商売だからな。せいぜい、野垂れ死なんようにな」

 そして、研ぎ代を渡し、そのまま鍛冶屋を後にしたのだった。




 その後も、雑貨屋や道具屋を巡り、食料やその他必要な物資を買い揃えていく。そして最後に向かったのが教会だった。
 教会では、お布施を支払う事で、武器に聖気を纏わせる処理をしてくれる。奈落で俺が使っていた聖気を纏った武器、あれと同じ物を用意できるのだ。
 実際、傭兵たちは魔物を討伐する前に、愛用の武器を教会に持ち込み聖気を纏わせるのが当たり前となっている。ただし、その聖気は時間を経るごとに減衰していくので、定期的に教会に持ち込まなければならない。
 俺が使っている剣は特別製で他の武器に比べると聖気の減衰が遅くなっているが、それでも減らない訳ではない。奈落にいた時と今迄の傭兵として魔物討伐、その二つで聖気がほとんどなくなっていた。だからこそ、こうして教会に持ち込まなければならなかった。

「今日はどういったご用件でしょう?」
「この剣に聖気を」

 教会のシスターのその言葉にアルトは答えていた。

「そちらのお連れ様もでしょうか?」
「はい」
「では、こちらへどうぞ」

 そう言ってシスターは歩き出した。俺達はシスターに案内されるまま、教会の中へと入っていったのだった。
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