七罪剣と大罪人と呼ばれた少年の反逆譚

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第一章 【七罪の魔王】 カイン・エレイン編

11 魔人と魔石売却

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 街の中に入ると、いたって普通の街であった。門に面した大通りにはいくつもの屋台が立ち並び、そこで買い物をする為の人で賑わう。
 だが、所々に普段は見かける事が無いはずの、鎧を身に纏いその一部に教会の紋章を付けた聖騎士の姿があった。
 あの様子から恐らくは見回りをしているのだろう。先程門番に聞いた魔人が関係しているのかもしれない。

 七罪武具を振いこの世に暗黒の時代を齎したとされる七体の魔王。それらは七天神具に選ばれた、後の神聖騎士の始まりとされる騎士に討たれた。
 だが、その魔王たちの眷族が全て討たれたわけではなかった。そして残る眷族達が魔人と呼ばれる存在であった。彼等は、暗黒時代の再来を目指し、地下に潜り活動しているという。
 要約すれば、七天神具を所有する神聖騎士の眷族といえる存在が聖騎士達なら、七体の魔王の眷族が魔人といったところだ。
 そして、魔人達の一番厄介な点が、見た目は普通の人間と変わらないという事だ。魔人自らが、魔力を放つような行為をしない限り、魔人か、そうでないかを判別することが出来ない。だからこそ、彼等は聖騎士に容易に見つかる事は無く、人間社会の闇に潜むことが出来ているのだ。



 この街では奈落に隣接している為、時折奈落周辺の魔物がこの街に近づくことがある。強力な魔物は聖騎士の討伐隊が組まれるが、それ程ではない場合、その討伐は傭兵に委託されている様だ。

「さて、行くか」

 奈落で出てきた魔物達、俺はその中から魔石を入手していた。それを売り払い、金を貰うつもりだった。魔物の死体の中で人間が有効に利用できる物の一つが魔石である。
 魔石はその魔物が持つ魔力を蓄える器官だ。魔物の素材を有効活用できないか長い研究を重ねた結果、魔石に込められた魔力を利用する魔道具が開発され、それは長い期間を経て世界中に普及する事になった。
 だが、魔石の魔力が危険な事に変わりは無い為、高い魔力が込められた魔石の取り扱いには教会の認可や様々な手続きが必要になっていた。



「これだけのサイズの魔石がこの量ですか!!」

 俺は魔石を売るために街で見つけた商会に来ていた。受付に奈落で回収した魔石を出すと慌てて受付嬢が裏に戻り、代わりに慌てた様子の商会長が出てきた。

「で、この魔石を全て我が商会に売ってくださるのですか!?」

 興奮した様子でそう問いかけてくる商会長。どうしてもこの魔石を売って欲しいと懇願してくる。その理由を聞いてみると単純な事だった。最近商会の運営が上手くいっていないらしく、資金繰りにも難航していた。そこで、この魔石だ。この魔石をそれなりの所に売れば資金難も凌げる目算らしく、どうしても売って欲しいとの事だった。

「もちろん、お支払いする代金にも色は付けさせていただきますから……」
「……分かった。色は付けなくていい、その代わり即金でなら売ろう」

 俺にはそういった伝手は無い。売る事には異は無かった。

「ありがとうございます!! ありがとうございます!!」

 売ると言った俺に対して商会長は俺の手を強く握り、礼を言い続けた。まあ、此方も当面の資金が手に入るのは助かる。

「では、こちらが代金になります!!」

 そう言って、商会長は硬貨の入った袋を差し出してくる。俺はそれを奈落で拾った道具袋に収納した。
 だが、その事も商会長が驚いた。何故なら空間拡張が施された道具袋は貴重品だからだ。それを俺は無視し、金を受け取った俺はそのまま商会を出たのだった。




「これで当面の資金は手に入ったか」

 手に入った額、金貨換算で五枚。今回の目的、当面の生活資金の見通しはこれで立った。と言うよりも、もしここで金が手に入らなければ食事すら出来なかったところだ。奈落で手に入れた道具袋にも金銭の類は入っていなかった。だからこそ即金での受け渡しを条件にした。
 しかし、殆ど交渉なし、というのは商人としてはどうなのだろうと思うのだが、それ程切羽詰まっていたのだろうか? まあこれ以降、あの商会が発展しようとも、衰退しようとも、結局の所、俺の知った事ではないのだが。それに、あの魔石なら俺に支払った金貨五枚も直ぐに取り返す事もできるだろう。

「さて、いくか」

 長い奴隷生活とその後の奈落での日々、そのおかげで野宿が出来ないわけではないが、せっかく解放されたのだ。流石に宿で寝たい。



 道中見つけた少し高そうな宿で今晩を過ごすことにした。食堂が併設されており、宿と食事をセットにすることによって割引があるようだった。

「宿を一晩」
「食事はどうしますか?」
「付けてくれ」
「では銀貨二枚になります」

 俺は先程商会で手に入れた袋から銀貨二枚を渡した。

「では、二階奥から二番目の部屋になります。それとこれは食券になります。無くさないよう注意してください」
「分かった」

 そして、食券を受け取り俺は部屋へと向かうのだった。
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