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第一章 【七罪の魔王】 カイン・エレイン編
10 街へと向かう
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何故なんだ。俺はただ、家族に振り向いてほしかった。俺も家族の一員だと言ってほしかった。
「お前は我が家には不要だ」
「早くこの家から出て行きなさい」
「お前の様な下賤の血が混じった者が、この家に置いてもらえるだけありがたいと思いなさい」
家族のそんな声が聞こえる。俺は、俺は……
そんな俺の目の前に両親に褒められているアリシアが笑顔を浮かべている光景が現れた。
思わずそこに手を伸ばそうとするが、伸ばせば伸ばすほどその光景は遠くへ行ってしまう。
「どうして、どうしてなんだ!!」
それでも何とかそこに辿り着くために必死に手を伸ばそうとした。だが、俺の手はどれだけ伸ばしても、そこに届くことは無く、むしろ遠ざかっていく。そして、結局その手は届く事が無く、俺の意識は覚醒に向かうのだった。
「はっ、嫌な夢を見た……」
目が覚め辺りを見渡すと、木々が生い茂る森の中にいた。
「ここは……? そうか……」
意識が覚醒していくと、直前までの記憶が蘇ってくる。
奈落を脱出する事を願い、その果てに辿り着いた場所。そこで王を名乗る存在と出会い、七罪武具の封印を解き放ち、奈落を消滅させた。そんな嘘の様な出来事であったが、俺の体の変化がその事が事実であったことを証明している。
意識をすれば体から力が溢れてくる、今なら何でもできそうな万能感に襲われそうになる。
「は、ははは……」
だが、それと同時に自分の中に虚無感と呼べるものがある事に気が付いた。その虚無感が、何処から来た物なのか、今の俺にはわからなかった。
あれから、時が少し経ち、心の中の虚無感は未だ消えずにあるが、力を得た興奮は時間と共に収まっていた。手に入れた力に興奮はしていたが、この力は教会では最大級の禁忌として扱われているのは変わりない。もし、見つかれば捕縛からの死罪となるのは間違いないだろう。
「これからどうすれば……」
今後どうするか困っていた。俺の目標であった奈落脱出は果たしたが、それ以降の事など考えて居る筈も無かった。
「とりあえず、ここから離れないと……」
状況的に考えてここは奈落があった場所なのだろう。
奈落を監視している聖騎士の砦があるのを昔に学院の授業で聞いた事がある。そこでも、奈落が消えた事は把握しているかもしれない。なら、この場に聖騎士が来る可能性もある。見つかる前にこの場から離れなければ。
そして、俺はこの森をすぐさま抜けるのだった。
今、俺は奈落があった森から離れ、辺り一帯に誰もいないだろう場所にいた。奈落で手に入れた七罪剣を試しに具現化してみるためだ。
奈落で手に入れた七罪武具は【暴食】と【強欲】を融合させたものだと言っていた。七罪武具を持つ限り、俺は教会に狙われ続けるだろう。だが、この七罪武具を宿さなければ奈落脱出が出来なかった以上仕方がない。
俺は、七罪剣を具現化させる。昔見た聖騎士が聖武具を具現化させるのを真似て、胸に手を当て、そこから体の中にある剣を引き抜くようなイメージだ。
「すぅ、はぁ、……こい!!」
胸から腕を振り下す。手に持った剣は見た目だけは奈落で見た時と全く同じであったが、剣そのものから放たれる威圧感はあの時を遥かに超えていた。あの時は不完全とはいえ封印されていたからだろう。
「ふっ、はっ!!」
とりあえず何度か試しに素振りをしてみた。俺と同化しているせいか、この剣は手に馴染むどころか、長年親しんでいた武器であるかのような感覚すら覚える。
そして、俺が戻れと念じると七罪剣は俺自身と同化する様に消えていった。
これが、神聖騎士達が持つ七天神具と同格と言われる七罪武具。実際に手に持ちこの剣の持つ能力を知り、何度も振るってこの力の恐ろしさが分かった。
この力は安易に振ってはいけない、そんな気がする。俺の頭の中にはこの剣の持つ能力の全てが知識として入ってきていた。そして分かったのはこの剣の持つ力は人を容易に狂わせる。この時、俺はこの力を安易に使わないことを決意するのだった。
森を抜けた後見つけた街道を進むと中規模の街が見えてくる。街の入り口の門の前では馬車が何台も並んでいる。所々に教会の紋章が着いた馬車が何台もあった。それらに見つからない様に街に入る事にする。
行列に並んでいる人達から聞こえてきた情報によると、この街はラダスと言う名前らしい。
街に入るための行列に並んでいたがドンドン消化されていき、遂に俺の番が来た。
「身分証はあるか?」
「……ないです」
「お前、名前は?」
「カインです」
「ちょっと待ってろ」
そう言うと、門番の衛兵は詰所と思われる場所へと入っていった。
「問題ない、通っていいぞ」
どうやら身分証を持っていなかった為、指名手配されていないか、確認する為に中に戻ったようだった。
「ほら、これが仮の身分証だ。有効期限は三日しかないから注意する様に。街の中にある役所で申請すればちゃんとした正規の身分証を作ってもらえる。まあこの街で犯罪行為をしていなければ、だがな。だから、この身分証の期限が切れる前に申請するんだぞ?」
「はい」
そして、俺は衛兵から仮の身分証を受け取る。
「それで、後聞いておくことは無いか?」
そう言われたので気になっていた事をこの際聞くことにした。
「少し話が逸れますが、あの馬車は何ですか?」
教会の紋章が入った馬車を指さして門番に尋ねる。
「ああ、あれか。何でも、この街に大規模な犯罪組織の幹部の魔人数人がこの街に潜んでいるらしい。それで聖騎士達も追ってきたみたいだ」
「大変ですね」
「おかげで、警備も厳重にしなくちゃならんし、俺達も仕事が増えるしで、面倒な事この上ない。まあ、連中には関わることは無いと思うがあんたも注意しておけよ」
「分かりました」
門番にそう言うと、俺はそのまま街の中に入るのだった。
「お前は我が家には不要だ」
「早くこの家から出て行きなさい」
「お前の様な下賤の血が混じった者が、この家に置いてもらえるだけありがたいと思いなさい」
家族のそんな声が聞こえる。俺は、俺は……
そんな俺の目の前に両親に褒められているアリシアが笑顔を浮かべている光景が現れた。
思わずそこに手を伸ばそうとするが、伸ばせば伸ばすほどその光景は遠くへ行ってしまう。
「どうして、どうしてなんだ!!」
それでも何とかそこに辿り着くために必死に手を伸ばそうとした。だが、俺の手はどれだけ伸ばしても、そこに届くことは無く、むしろ遠ざかっていく。そして、結局その手は届く事が無く、俺の意識は覚醒に向かうのだった。
「はっ、嫌な夢を見た……」
目が覚め辺りを見渡すと、木々が生い茂る森の中にいた。
「ここは……? そうか……」
意識が覚醒していくと、直前までの記憶が蘇ってくる。
奈落を脱出する事を願い、その果てに辿り着いた場所。そこで王を名乗る存在と出会い、七罪武具の封印を解き放ち、奈落を消滅させた。そんな嘘の様な出来事であったが、俺の体の変化がその事が事実であったことを証明している。
意識をすれば体から力が溢れてくる、今なら何でもできそうな万能感に襲われそうになる。
「は、ははは……」
だが、それと同時に自分の中に虚無感と呼べるものがある事に気が付いた。その虚無感が、何処から来た物なのか、今の俺にはわからなかった。
あれから、時が少し経ち、心の中の虚無感は未だ消えずにあるが、力を得た興奮は時間と共に収まっていた。手に入れた力に興奮はしていたが、この力は教会では最大級の禁忌として扱われているのは変わりない。もし、見つかれば捕縛からの死罪となるのは間違いないだろう。
「これからどうすれば……」
今後どうするか困っていた。俺の目標であった奈落脱出は果たしたが、それ以降の事など考えて居る筈も無かった。
「とりあえず、ここから離れないと……」
状況的に考えてここは奈落があった場所なのだろう。
奈落を監視している聖騎士の砦があるのを昔に学院の授業で聞いた事がある。そこでも、奈落が消えた事は把握しているかもしれない。なら、この場に聖騎士が来る可能性もある。見つかる前にこの場から離れなければ。
そして、俺はこの森をすぐさま抜けるのだった。
今、俺は奈落があった森から離れ、辺り一帯に誰もいないだろう場所にいた。奈落で手に入れた七罪剣を試しに具現化してみるためだ。
奈落で手に入れた七罪武具は【暴食】と【強欲】を融合させたものだと言っていた。七罪武具を持つ限り、俺は教会に狙われ続けるだろう。だが、この七罪武具を宿さなければ奈落脱出が出来なかった以上仕方がない。
俺は、七罪剣を具現化させる。昔見た聖騎士が聖武具を具現化させるのを真似て、胸に手を当て、そこから体の中にある剣を引き抜くようなイメージだ。
「すぅ、はぁ、……こい!!」
胸から腕を振り下す。手に持った剣は見た目だけは奈落で見た時と全く同じであったが、剣そのものから放たれる威圧感はあの時を遥かに超えていた。あの時は不完全とはいえ封印されていたからだろう。
「ふっ、はっ!!」
とりあえず何度か試しに素振りをしてみた。俺と同化しているせいか、この剣は手に馴染むどころか、長年親しんでいた武器であるかのような感覚すら覚える。
そして、俺が戻れと念じると七罪剣は俺自身と同化する様に消えていった。
これが、神聖騎士達が持つ七天神具と同格と言われる七罪武具。実際に手に持ちこの剣の持つ能力を知り、何度も振るってこの力の恐ろしさが分かった。
この力は安易に振ってはいけない、そんな気がする。俺の頭の中にはこの剣の持つ能力の全てが知識として入ってきていた。そして分かったのはこの剣の持つ力は人を容易に狂わせる。この時、俺はこの力を安易に使わないことを決意するのだった。
森を抜けた後見つけた街道を進むと中規模の街が見えてくる。街の入り口の門の前では馬車が何台も並んでいる。所々に教会の紋章が着いた馬車が何台もあった。それらに見つからない様に街に入る事にする。
行列に並んでいる人達から聞こえてきた情報によると、この街はラダスと言う名前らしい。
街に入るための行列に並んでいたがドンドン消化されていき、遂に俺の番が来た。
「身分証はあるか?」
「……ないです」
「お前、名前は?」
「カインです」
「ちょっと待ってろ」
そう言うと、門番の衛兵は詰所と思われる場所へと入っていった。
「問題ない、通っていいぞ」
どうやら身分証を持っていなかった為、指名手配されていないか、確認する為に中に戻ったようだった。
「ほら、これが仮の身分証だ。有効期限は三日しかないから注意する様に。街の中にある役所で申請すればちゃんとした正規の身分証を作ってもらえる。まあこの街で犯罪行為をしていなければ、だがな。だから、この身分証の期限が切れる前に申請するんだぞ?」
「はい」
そして、俺は衛兵から仮の身分証を受け取る。
「それで、後聞いておくことは無いか?」
そう言われたので気になっていた事をこの際聞くことにした。
「少し話が逸れますが、あの馬車は何ですか?」
教会の紋章が入った馬車を指さして門番に尋ねる。
「ああ、あれか。何でも、この街に大規模な犯罪組織の幹部の魔人数人がこの街に潜んでいるらしい。それで聖騎士達も追ってきたみたいだ」
「大変ですね」
「おかげで、警備も厳重にしなくちゃならんし、俺達も仕事が増えるしで、面倒な事この上ない。まあ、連中には関わることは無いと思うがあんたも注意しておけよ」
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門番にそう言うと、俺はそのまま街の中に入るのだった。
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