七罪剣と大罪人と呼ばれた少年の反逆譚

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序章

7 次の階層へ

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 下の階層に降りても辺りの洞窟の様な景色自体は上と変わらなかった。丁度良かったので階段を降りたところで休息を取る事にした。
 昨日と同じようにテントを広げる。今回はコボルトの肉を食する事にする。

「はぐっ」

 今はコボルトの肉を食べているが、前回のサイクロプスの肉を食べた時と違っていた。

「……どういう事だ?」

 確かに自分の中にある魔力が少しだけ増えた様な気がするがそれだけだ。結局、満腹になるまで食べていたのだが、自分の肉体に変化が訪れることは無かった。昨日の様な動けなくなる激痛も、何かに変わっていくようなそんな感覚も、一切訪れる事が無かった。
 何故、このコボルトの肉では何も変化や痛みが無かったのか? コボルトはサイクロプスより格下の魔物だがそれに原因があるのか? それとも、全く別の要因なのか? 
 ずっとそんな事を考えていたのだが、結局、その疑問の答えなど出る筈も無く、その事を考えるのをもう止める事にし、就寝する事にしたのだった。




 目が覚め、今日の探索を開始する。俺が下りてきたはずの階段はいつの間にか消えていた。どうやら一方通行の様だ。階段を下りたことで、より深部へ向かっているのでは? という疑念を抱きながらも、元来た階段が消えてしまった今、先に進む以外に道が無いと、自分に言い聞かせながらこの階層を探索していく。

 途中、魔物と何度も出くわし、その度武器を損傷させていきながらも、この奈落を進んで行く。消耗品も段々と数が心もとなくなってきた。それでも、休息をとりながらも、探索を続ける。階段もあれから幾つか発見できたので、その度に降りて行った。




「ウゴアアアアアアアア!!」
「くそっ、もう少しなのに!!」

 次の下り階段を見つけたと思ったら、その手前でオーガが待ち構えていた。オーガは、サイクロプスよりも格上の相手だ。サイクロプスと同じくパワータイプなのだが、オーガの方が、身体能力全般が上だ。サイクロプスを喰らっていなければ、ここで死んでいただろう。

「くっ」

 攻撃の回転率も速い、なかなか近寄らせてくれない。

「もらったっ!!」

 オーガが拳を振り下した瞬間、紙一重で避け、それと同時にサイクロプスの肉を食べて強化された腕力、そして聖気を纏った武器、その二つを合わせた渾身の一撃を放ち左腕を切り落とす。

「ゴアアアアア!!」

 切り落とした左腕からは血が流れている。それを右腕で押さえつけながら、こちらに咆哮を放ってくる。

「くあっ!!」

 その咆哮は衝撃波。そして、突如強風でも浴びせられたかのように後方に飛ばされてしまう。咆哮から体勢を立て直そうとしていると、その間にオーガの切り落とした左腕の傷口が塞がっていく。そして、左腕の傷が塞がったかと思えば、そこから肉が生えていき、元あった左腕の形を取り戻そうとしていた。

「ちっ!!」

 なら、再生される前に両手を全部切り落として動けなくすればいい。そう考えた俺は、早速行動に移る。
 片腕を落とされたオーガは攻撃の回転率も半分となり、攻撃するチャンスもかなり多くなった。

「しっ!!」

 未だ再生途中で、左腕は完治していない。現状、隻腕状態のオーガの右腕は、容易に切り落とすことが出来た。

「ゴアアアアアアアア!!」

 オーガは思わず耳を塞ぎそうになる様な大声を上げた。だが、その大声が収まると、目の前のオーガは今は両腕を失った相手。そんな相手に苦戦する道理は無い。突進や蹴りといった残った身体を使い攻撃してくるが、大味になった攻撃は回避する事は容易い。

「っらあ!!」

 オーガの胴体に剣を横薙ぎ一閃、そしてオーガの体は上下に分かれ上部はズレ落ちた。だが、力任せに剣を振った事が原因か、今持っている剣が歪み使い物にならなくなってしまった。

「嘘だろ……」

 ここまでの道程で、持つ武器はかなりの数が、刃が欠けたり、剣身が歪んだりと使い物にならない状態になっているのだ。俺も探索の中で度重なる魔物の襲撃を撃退する為に武器をかなり無茶な使い方をした事もある。現状、もう殆ど手持ちの武器が残っていない。
 だが、そんな間にもオーガの死体の血の匂いを嗅ぎつけて、ここに他の魔物が現れるかもしれない。オーガの死体を道具袋に入れ次の階層に降るのだった。
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