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序章
1 追放命令
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カイン・エレイン、それが俺の名前だった。メルクリア王国のエレイン公爵家に生まれた。そう言われたら聞こえがいいが、俺は他とは違い父が使用人に手を出して生まれた庶子であった。その生まれ故に家族からは疎まれ続けたが、俺は地位や名誉さえあれば家族は必ず自分の事を受け入れてくれると信じ続けた。そして、自分の全てを賭けるつもりでこの聖種の儀に臨んだ。だが、
「カイン・エレイン、残念だがおぬしに聖種は適合しなかったようだな」
その結果がこれであった。教会の人間が告げたこのたった一言で、将来への希望も信じ続けた未来も砕け散ったのだ。
聖種の儀。それは神聖教会、通称教会が執り行う儀式である。人間の体内に聖種と呼ばれる物を埋め込む事によって、その人間は特殊な力を得ることが出来る。そして聖種は武器という形で具現化することが出来、それは聖武具と呼ばれる。
聖武具を持つ人間は、主に聖騎士と呼ばれ、その力で教会の掲げる理念の元、世界の安寧の為に尽力している。
だが、聖種をその身に埋め込む事が出来ない人間も存在する。平民にならそこまで問題にはならないだろう。だが、とある理由からこの国では上位貴族の血を引く者ほど聖種への適性がある。そんな中に聖種への適性を持たないものが生まれる、即ち俺みたいな人間が生まれるとどうなるか。庶子である俺の立場がどうなるかなど言うまでも無いだろう。
帰宅後すぐに父の執務室に来るようにと言いつけられた。聖種の儀の事は間違いなく既に父の耳に入っているだろう。
「父上、カインです」
「入れ」
「失礼します」
書斎に入ると父、ガレアス・エレインは厳しい顔で待ち構えていた。
「聖種の儀の事は聞いた。お前がこれからどうなるか、分かるな?」
「……はい」
「ふん、分かっているとは思うがお前は追放処分とする。やはり、平民の血が入ると我がエレイン公爵家にも無能者が生まれるのだな」
母を孕ませたのは父上でしょうっ、と心の中で叫ぶが思っていても口にはしなかった。
「あの子、アリシアは神聖騎士にまで選ばれたというのに。それに比べてお前はなんと情けない。せめてもの慈悲にお前を養って学園にも入れてやったというのに。明日まで時間をくれてやる。荷物をまとめて屋敷から出ていけ」
「……分かりました、失礼いたします」
泣きたくなるような感情を抑え父の書斎から退室する。聖種の儀の結果を聞いた直後からからこうなるだろう事は、覚悟はしていた。
俺は荷物をまとめるために部屋に戻ることにした。その途中通路の反対側から金髪の青い眼をした小柄な少女がこちらに向かってくる。その少女は俺の目の前で立ち止まり話しかけてきた。
「あら、あなたじゃありませんか。お父様から聖種の儀の事は聞きましたよ」
そう言って目の前の少女はクスクスと笑う。この少女はアリシア・エレイン、一応俺の異母妹、正妻の娘であった。だが、アリシアは俺とは違い才能の塊で文武両道、才色兼備、そして十二才にして神聖騎士にまで選ばれた将来を期待された天才だった。
神聖騎士、それは教会の最秘宝である七天神具と呼ばれる七つの神具、その一つに選ばれた者の事である。聖種の儀で使われる聖種も元をたどればこの七天神具の力の一部であるらしい。教会でも特別視され、その権限は多岐に渡る。その中には教会所属の聖騎士への命令権もあり、神聖騎士の専用部隊まで存在すると聞いた事がある。
「それで、先ほどお父様の書斎に行っていたのでしょう?どのような事を言われましたの?」
「……追放処分だと、それと翌日屋敷から出て行けと」
「そうですか。正直平民の血が混じったあなたと暮らすのは苦痛でしたが、これで清々しますわ」
その時、分かったのは、結局俺は家族の誰からも望まれていないのだと。アリシアから逃げるように俺は自分の部屋に戻り荷物を整理する。期限は明日までである、その間に準備を済ませるのだった。
「カイン・エレイン、残念だがおぬしに聖種は適合しなかったようだな」
その結果がこれであった。教会の人間が告げたこのたった一言で、将来への希望も信じ続けた未来も砕け散ったのだ。
聖種の儀。それは神聖教会、通称教会が執り行う儀式である。人間の体内に聖種と呼ばれる物を埋め込む事によって、その人間は特殊な力を得ることが出来る。そして聖種は武器という形で具現化することが出来、それは聖武具と呼ばれる。
聖武具を持つ人間は、主に聖騎士と呼ばれ、その力で教会の掲げる理念の元、世界の安寧の為に尽力している。
だが、聖種をその身に埋め込む事が出来ない人間も存在する。平民にならそこまで問題にはならないだろう。だが、とある理由からこの国では上位貴族の血を引く者ほど聖種への適性がある。そんな中に聖種への適性を持たないものが生まれる、即ち俺みたいな人間が生まれるとどうなるか。庶子である俺の立場がどうなるかなど言うまでも無いだろう。
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「……はい」
「ふん、分かっているとは思うがお前は追放処分とする。やはり、平民の血が入ると我がエレイン公爵家にも無能者が生まれるのだな」
母を孕ませたのは父上でしょうっ、と心の中で叫ぶが思っていても口にはしなかった。
「あの子、アリシアは神聖騎士にまで選ばれたというのに。それに比べてお前はなんと情けない。せめてもの慈悲にお前を養って学園にも入れてやったというのに。明日まで時間をくれてやる。荷物をまとめて屋敷から出ていけ」
「……分かりました、失礼いたします」
泣きたくなるような感情を抑え父の書斎から退室する。聖種の儀の結果を聞いた直後からからこうなるだろう事は、覚悟はしていた。
俺は荷物をまとめるために部屋に戻ることにした。その途中通路の反対側から金髪の青い眼をした小柄な少女がこちらに向かってくる。その少女は俺の目の前で立ち止まり話しかけてきた。
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その時、分かったのは、結局俺は家族の誰からも望まれていないのだと。アリシアから逃げるように俺は自分の部屋に戻り荷物を整理する。期限は明日までである、その間に準備を済ませるのだった。
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