再生の熱意: ホットドックからの成功の旅

O.K

文字の大きさ
上 下
2 / 2

教訓の伝え

しおりを挟む
「では次に『魔法師』についてお話いたしますわね」

アリーチェさんが改めて黒板に単語を書いていく。

「『魔法師』とは魔法のスペシャリストとして認められた資格取得者のことですわ。
 この世界における殆どの国がこの制度を採用しておりますの。
 この超大陸『ヴァール』においてはこの数年で『勇者』という新たな称号が生まれましたが、それまでは各国がこぞってこの『魔法師』を輩出することに躍起になっておりましたわ。
 優れた『魔法師』の数こそが国の戦力保有数を、ひいては国力そのものを表しているとされていたのですから。
 まぁ、『ヴァール』以外ではそれは今でもほぼ変わっておりませんがね」

その話なら僕も少し知っている。
この学園に来る時に荷馬車のおじさんとそんな話をしたこともあったっけ。

「『魔法師』にもまた3つのクラス分けが存在しており『下級魔法師』、『中級魔法師』、『上級魔法師』がありますの」

例によって、アリーチェさんが黒板にその3つの単語を板書していく。

「あの、僕の『魔法師』ってものに対する認識は単純に魔法を使える人、ぐらいのイメージだったんですけど、この前の模擬戦を見た限り今この学園に居る生徒の人達って割と普通に魔法を使えてますよね?
 あの人達は『魔法師』とは呼ばないんですか?」
「まあ、魔法に詳しくなければ貴方と同じような認識の者が大半でしょうね。
 ですが『魔法師』を名乗るには国から正式に施行されている国家試験に合格しなければなりませんわ。
 そしてただ魔法が使える、というだけでは『魔法師』にはなれませんの。
 他にも条件がありますわ」
「条件?」

アリーチェさんは黒板の3つの単語に説明文を載せた。

「まず、『下級魔法師』について。
 基本的にただ『魔法師』と呼ばれている人は殆どがこのクラスのものになりますわ。
 この『魔法師』になる為の条件は、『2種類以上の系統の中等魔法が使用可能である』というものですの」
「2種類以上の系統?」

「そう、例えば炎魔法、《ファイアー・ジャベリン》と氷魔法、《アイス・ブレード》を発動出来る、といった具合でございますわ。
 そして、これだけでも相当に困難な条件でありましてよ。
 何故なら、自身の得意系統以外の魔法の発動というものはとても難易度が高いからですわ」
「そうなんですか?」

「ええ、まだ初等魔法程度なら他系統の魔法を使うことは比較的容易な方ではありますわ。
 しかし中等魔法からはそうはいきません。
 10年以上もの歳月をかけて鍛錬し、ようやく下位中等魔法を使えるかどうか、といわれておりますわ。
 ですので、若い年齢のうちで『魔法師』になれる方は非常に稀ですわね」

そういえば『魔法師』候補と言われていたレディシュさんも確かに爆発魔法の他に魔力と体力を吸収する魔法も使えてたんだっけ。
あの人本当に凄い実力者だったんだなぁ……

「『中級魔法師』は『3種類以上の系統の中等魔法が使用可能である』こと、そして『『準』高等魔法を使用可能である』こと、この2つの条件を満たす必要がありますわ」
「3種類以上の魔法……!」

「ええ、ちなみに『準』高等魔法の習得も同じくらい難しいと言われておりますわ。
 単純に『下級魔法師』の2倍困難と言えますわね」
「………………」

改めて僕とそう変わらない歳で『中級魔法師』の資格を持つというキャリーさんの規格外ぶりがよく分かる……
そして、そんな人相手に有利な試合形式とはいえ、完勝してしまったアリーチェさんも……

「そして『上級魔法師』。
 お察しかと思いますが、条件は『4種類以上の中等魔法が使用可能である』こと、そして『高等魔法を使用可能である』こと、ですわ。
 貴方もご存知の『上級魔法師』といえば……」
「アリエス先生……ですよね」

高等治癒魔法、そのうえ解析魔法まで使えるコーディス先生曰く補助魔法を極めた世界最高峰の『魔法師』の1人。
僕も模擬戦の時やレディシュさんとの戦いの時の怪我の治療でお世話になったっけ。

「アリエス先生の母君であるリブラ先生もまた治癒魔法を極めた『上級魔法師』ですわね。
 あの方々スターリィ家は代々強力な治癒魔法を得意系統としておりますのよ。
 得意系統が血筋を通して遺伝するのは珍しくないですからね」

ふむ、そういうものなのか。

「あと、これは余談なのですがこの学園の講師陣は殆どが『魔法師』の資格持ちでしてよ。
 これだけの数の『魔法師』が一堂に会する場所など、世界でもここぐらいしかありませんでしょうね」
「ほえぇ……」

いやはやもう何と言うか……
勇者学園恐るべし、の一言だ……

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「さて、基本的なお話はこんな所でしょうかね。
 という訳で、アリスリーチェ先生の特別魔法講座はとりあえずここまでと致しますわ」
「はい!今日は本当にありがとうございます!
 おかげで魔法について詳しくなれました!」
「んあ……?
 ふわぁー……
 話終わったのー?」

「今回の内容は本当に基礎的な部分だけでして、まだまだ知っていただきたいことはあったのですが……
 まあそれはまた次の機会でお話いたしますわ」
「はい!よろしくお願いします!」
「サラッと次の予定を確約してるけどやるべきことが沢山あるんじゃなかったのか巻貝」

「アリスリーチェ様!
 次の講義での衣装はこのファーティラ渾身の一作!
 『バニーティーチャー ~ 魅惑の補習授業 ~』をどうかご着用ください!
 女教師とバニーガール、方向性の違う2つのエロスをとことんつき詰めてみました!!」
「もうこの際ハッキリ言わせて貰いますね。
 アナタもしかして色々とダメなのでは?」

そんなこんなで今回の特別講義は終了したのだった。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

町の再生: 協力と愛情による駅周辺の蘇り

O.K
エッセイ・ノンフィクション
田舎の村にある衰退した駅を救うため、地元の村人たちが協力し、駅の周りに特産品の露店を立ち上げました。地元の特産品や文化を活かし、観光客を引き寄せ、地元経済を回復させました。この成功は地域社会の結束と協力に支えられ、新たな未来を築く手本となりました。

謙虚のダイヤモンド

O.K
エッセイ・ノンフィクション
「謙虚のダイヤモンド」は、主人公太郎がレンコン農家として村で静かな暮らしを送る中で、ある日畑でダイヤモンドを発見するという物語です。このダイヤモンドの発見により、村と太郎の生活に大きな変化が訪れ、地域の繁栄と名声が広がります。しかし、太郎と彼の家族は謙虚さを失わず、成功と共に他の人々にも喜びをもたらします。この物語は、謙虚さと誠実さが成功につながり、大切な価値観を忘れないことの重要性を伝えています。

どら焼きの再発見

O.K
エッセイ・ノンフィクション
物語「どら焼きの再発見」は、主人公が日常のどら焼きの消失に直面し、その欠如から新たな趣味と成長を見つける過程を描いています。主人公はどら焼きを手に入れることと新しい趣味の両方をバランスよく楽しむ方法を見つけ、物語は失うことの価値と再発見の意味を探求しています。

秘密のステーキ

O.K
エッセイ・ノンフィクション
「秘密のステーキ」は、ステーキの調理方法を知っている主人公が、大手飲食企業からその秘密を売る申し出を断り、自分の原則を守り続ける決意をするストーリーです。しかし、ある日彼の部屋が荒らされ、その出来事が彼の生活に大きな影響を与えます。主人公はセキュリティを強化し、ステーキの秘密を守り続け、自分の価値観を貫く強固な意志を持つことを学びます。この出来事から彼は困難に立ち向かい、自分の道を歩む勇敢な主人公として尊敬を受けるようになります。

困難に立ち向かう:引っ越しの荷物と道路崩落の物語

O.K
エッセイ・ノンフィクション
引っ越しの日、晴天のもと、準備を整えて新居に向かっていたが、途中で予期せぬ渋滞に遭遇。時間が経つにつれて渋滞は悪化し、道路崩落に巻き込まれてしまった。数時間後、道路崩落が解消されるまで混乱が続き、新居にたどり着くことができたものの、地域全体に影響を与えた。その後、地域の人々が協力し合い、復旧作業が進められた。この経験から、困難に立ち向かうことの重要性と、協力と支援の大切さを学んだ。

価格変更の裏に潜む味の革新:焼き魚定食の物語

O.K
エッセイ・ノンフィクション
ある主人公は毎日同じレストランでリーズナブルな焼き魚定食を楽しんでいたが、ある日、価格が3倍に値上げされる。驚きと失望の中、そのお店の新しい取り組みを知り、高品質な食材と調理法に変化したことを理解する。再訪し新しい料理を試し、味の革新に感動。価格変更の理由を理解し、店の取り組みを支持しつつ、新しい食事体験を楽しむことを決意する。

質素な贅沢:心の豊かさを求めて

O.K
エッセイ・ノンフィクション
『質素な贅沢:心の豊かさを求めて』は、裕福な生活を送りながらも贅沢を避け、質素な生活を好む主人公の物語です。彼はある日、自分の貯金を全て寺の賽銭箱に寄付し、その行動が町に良い影響をもたらします。主人公の選択が地域社会を変え、仲間たちと共に慈善事業や教育支援を行い、心豊かなコミュニティを築いていく様子が描かれています。

共感のロウソク

O.K
エッセイ・ノンフィクション
物語「共感のロウソク」は、主人公の悠太が不思議なロウソクを手にし、それを灯すことで他人の寿命を奪える能力を持つことから始まります。最初はその力を楽しむ悠太ですが、次第に他人への影響と自身の寿命の短さに気づき、選択を迫られます。彼は他人との共感と繋がりを大切にし、ロウソクを使わない生活を選びます。その選択は広まり、社会が思いやりと協力に基づいたものに変わり、物語は「共感のロウソク」の精神を称える物語として語り継がれます。

処理中です...