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第57話「どんなに妨害をされたとしても」
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「ん」
俺が目を覚ますと真っ白な天井がすぐに視界に入った。
そして、横になったまま周りをぐるっと見回してから、ここがどうも病室らしいということが解った。
それからお腹の辺りが痛んだ。
それで俺はぼんやりと思い出した。
そういえば東京駅の新幹線の改札口付近で俺、ナイフでお腹を刺されたんだと。
俺をナイフで刺したのは……確かあれは女性だった。
とても見覚えのある女性。
だけど、まだ意識がぼんやりとしている俺はその女性が誰だったのかまだ思い出せないでいた。
そんな時だった。
「章ちゃん」
と一番俺が聞きたい声がした。
そっと俺が横を向くとそこには花が沢山生けられた花瓶を持った美香がいた。
「美香」
「良かった。意識が戻ったんだね」
美香はそう言い花瓶を俺が寝ているベッドのサイドにある棚に置いてすぐに俺の顔を覗きこんだ。
「美香、お前大阪じゃ」
「章ちゃんが東京駅でナイフで刺されたって私のお母さんから聞いて飛んできたんだよ」
美香はそう言い椅子に座り、俺の身体に布団越しに顔をつけた。
だから俺は右手を出してそんな美香の頭を撫でた。
「心配かけてごめん」
「ううん、無事で良かった」
美香がそう言った後、俺の母さんも病室にやってきた。
どうやら病院内にあるコンビニに色々買いに行っていたらしい。
「章一、意識が戻ったのね」
母さんは涙目で言った。
「ああ、母さんも心配かけてごめん」
「あなたのせいじゃないもの。悪いのはあの浅川って女の子よ」
母さんの言葉で俺はそうだったと思い出した。
そう。俺をナイフで刺したのは間違いなく浅川だった。
だから、俺は余計に驚いてよける暇もなかった。
「でも、勿論、浅川って子は警察に連れていかれたから。後、章一、目が覚めたんなら、美香ちゃんと色々と話したいでしょうから母さん、一度、家に戻るわね。また夜の面会時間に来るわ。美香ちゃん、暫く章一のことお願いしていいかしら?」
「はい、勿論です」
「じゃあ、よろしくね。章一、美香ちゃんのこともう泣かせたら駄目だからね」
そう言い母さんは病室から出ていった。
そして、ここは個人病室なので俺と美香はまた2人きりになった。
「美香、ごめんな。大阪からわざわざ来てもらって。本当は俺が行くはずだったのに」
俺の言葉に美香は首を左右に振った。
「ううん、章ちゃんが大変な時に来るのはあたり前だから」
「なあ、美香」
「ん?」
美香は母さんが帰ってからは、またさっきのように椅子に座り俺の身体に布団越しに顔つけたので、俺はまた美香の頭を撫でた。
「本当に俺のせいで色々とごめんな。だけど、俺、これから先、もう誰に何をされても俺達2人の仲を妨害されても、絶対にもう美香を離さないから」
「章ちゃん」
「だから、美香も俺から離れないでほしい」
すると美香は布団越しに俺に抱きついて、
「うん、章ちゃんが離さないでいてくれるなら、私は絶対に章ちゃんから離れないよ」
そう言ってくれた。
俺は美香からのその言葉を聞いて、刺された部分のお腹は痛むけど、また最高に幸せだなと思った。
でも、本当にこれから先、何があっても美香を離したりはしない。
それは心に強く思った。
そして、また、俺が退院したら今度こそ、ちゃんとしたプロポーズをしよう。
そうも思っていた。
俺が目を覚ますと真っ白な天井がすぐに視界に入った。
そして、横になったまま周りをぐるっと見回してから、ここがどうも病室らしいということが解った。
それからお腹の辺りが痛んだ。
それで俺はぼんやりと思い出した。
そういえば東京駅の新幹線の改札口付近で俺、ナイフでお腹を刺されたんだと。
俺をナイフで刺したのは……確かあれは女性だった。
とても見覚えのある女性。
だけど、まだ意識がぼんやりとしている俺はその女性が誰だったのかまだ思い出せないでいた。
そんな時だった。
「章ちゃん」
と一番俺が聞きたい声がした。
そっと俺が横を向くとそこには花が沢山生けられた花瓶を持った美香がいた。
「美香」
「良かった。意識が戻ったんだね」
美香はそう言い花瓶を俺が寝ているベッドのサイドにある棚に置いてすぐに俺の顔を覗きこんだ。
「美香、お前大阪じゃ」
「章ちゃんが東京駅でナイフで刺されたって私のお母さんから聞いて飛んできたんだよ」
美香はそう言い椅子に座り、俺の身体に布団越しに顔をつけた。
だから俺は右手を出してそんな美香の頭を撫でた。
「心配かけてごめん」
「ううん、無事で良かった」
美香がそう言った後、俺の母さんも病室にやってきた。
どうやら病院内にあるコンビニに色々買いに行っていたらしい。
「章一、意識が戻ったのね」
母さんは涙目で言った。
「ああ、母さんも心配かけてごめん」
「あなたのせいじゃないもの。悪いのはあの浅川って女の子よ」
母さんの言葉で俺はそうだったと思い出した。
そう。俺をナイフで刺したのは間違いなく浅川だった。
だから、俺は余計に驚いてよける暇もなかった。
「でも、勿論、浅川って子は警察に連れていかれたから。後、章一、目が覚めたんなら、美香ちゃんと色々と話したいでしょうから母さん、一度、家に戻るわね。また夜の面会時間に来るわ。美香ちゃん、暫く章一のことお願いしていいかしら?」
「はい、勿論です」
「じゃあ、よろしくね。章一、美香ちゃんのこともう泣かせたら駄目だからね」
そう言い母さんは病室から出ていった。
そして、ここは個人病室なので俺と美香はまた2人きりになった。
「美香、ごめんな。大阪からわざわざ来てもらって。本当は俺が行くはずだったのに」
俺の言葉に美香は首を左右に振った。
「ううん、章ちゃんが大変な時に来るのはあたり前だから」
「なあ、美香」
「ん?」
美香は母さんが帰ってからは、またさっきのように椅子に座り俺の身体に布団越しに顔つけたので、俺はまた美香の頭を撫でた。
「本当に俺のせいで色々とごめんな。だけど、俺、これから先、もう誰に何をされても俺達2人の仲を妨害されても、絶対にもう美香を離さないから」
「章ちゃん」
「だから、美香も俺から離れないでほしい」
すると美香は布団越しに俺に抱きついて、
「うん、章ちゃんが離さないでいてくれるなら、私は絶対に章ちゃんから離れないよ」
そう言ってくれた。
俺は美香からのその言葉を聞いて、刺された部分のお腹は痛むけど、また最高に幸せだなと思った。
でも、本当にこれから先、何があっても美香を離したりはしない。
それは心に強く思った。
そして、また、俺が退院したら今度こそ、ちゃんとしたプロポーズをしよう。
そうも思っていた。
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