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第46話「最悪な状況」
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「涼子」
俺は青ざめて涼子の名前を呼んだ。
だけど、返事はない。
衝撃音で人が集まり、工事現場に関わっている人がすぐに涼子に直撃した鉄板を退けて、救急車を呼んだ。
鉄板は涼子の首から下の部分に直撃して、涼子の身体の部分の所々からは出血もしていた。
そして、救急車が来て俺も涼子と一緒に病院に向かった。
涼子は緊急で手術をすることになった。
暫くして涼子の両親も病院に来た。
涼子のお母さんとは面識があったので、俺はすぐに涼子の両親だと解り、2人のそばに行った。
そして、
「すいません。僕のせいです」
俺はそう言い2人に頭を下げた。
「涼子さん、俺を庇ってくれたんです」
俺がそう言うと2人は辛そうな顔をしたけれど俺を責めるような言葉は一切言わなかった。
「とにかく今は一緒に涼子の無事を祈ってくれるかしら?」
涼子のお母さんがそう言ったので俺は大きく頷いた。
2時間半くらい経って、手術中を表示しているところのランプが消えた。
俺も涼子の両親もそれを見て息を飲んだ。
その後、少ししてから異動できるベッドに乗った涼子が出てきた。
麻酔で今は眠っているけれど、表情はわりと穏やかそうで俺はほっとした。
だけど。
「手術は無事に成功しました。ただ」
俺と両親の前に涼子の手術を担当してくれた前川と名札をつけた50代前半くらいな感じの先生が来て言った。
「ただ?」
涼子のお父さんが真剣な顔で聞き返した。
「右足が深く傷ついていて、最悪な場合は右足を動かせなくなるかもしれません」
言いづらそうに先生が言った。
俺も涼子の両親もそのことを聞いて青ざめる。
「そんな。それってもしかして歩けなくなるかもしれないってことですか?」
涼子のお母さんが言った。
「本当に最悪な場合はそうなる可能性も否めません」
先生がそう言うと涼子のお母さんはその場に崩れてわっと泣きだした。
そんな涼子のお母さんを涼子のお父さんが立たせて肩を抱きしめ宥めた。
俺はそんな2人を見ながら胸が痛んでしかたなかった。
本当に俺のせいだ。
俺が涼子に話があるなんて言って待ち合わせした駅の周辺を歩いたりしなければ。
そうしなければ涼子が俺を庇ってこんなことになることなんてなかったのに。
ごめん、涼子。
本当にごめん。
俺は心の中で何度もそう涼子に謝りながら、どうか涼子の右足が最悪なことになりませんようにと祈るしかなかった。
俺は青ざめて涼子の名前を呼んだ。
だけど、返事はない。
衝撃音で人が集まり、工事現場に関わっている人がすぐに涼子に直撃した鉄板を退けて、救急車を呼んだ。
鉄板は涼子の首から下の部分に直撃して、涼子の身体の部分の所々からは出血もしていた。
そして、救急車が来て俺も涼子と一緒に病院に向かった。
涼子は緊急で手術をすることになった。
暫くして涼子の両親も病院に来た。
涼子のお母さんとは面識があったので、俺はすぐに涼子の両親だと解り、2人のそばに行った。
そして、
「すいません。僕のせいです」
俺はそう言い2人に頭を下げた。
「涼子さん、俺を庇ってくれたんです」
俺がそう言うと2人は辛そうな顔をしたけれど俺を責めるような言葉は一切言わなかった。
「とにかく今は一緒に涼子の無事を祈ってくれるかしら?」
涼子のお母さんがそう言ったので俺は大きく頷いた。
2時間半くらい経って、手術中を表示しているところのランプが消えた。
俺も涼子の両親もそれを見て息を飲んだ。
その後、少ししてから異動できるベッドに乗った涼子が出てきた。
麻酔で今は眠っているけれど、表情はわりと穏やかそうで俺はほっとした。
だけど。
「手術は無事に成功しました。ただ」
俺と両親の前に涼子の手術を担当してくれた前川と名札をつけた50代前半くらいな感じの先生が来て言った。
「ただ?」
涼子のお父さんが真剣な顔で聞き返した。
「右足が深く傷ついていて、最悪な場合は右足を動かせなくなるかもしれません」
言いづらそうに先生が言った。
俺も涼子の両親もそのことを聞いて青ざめる。
「そんな。それってもしかして歩けなくなるかもしれないってことですか?」
涼子のお母さんが言った。
「本当に最悪な場合はそうなる可能性も否めません」
先生がそう言うと涼子のお母さんはその場に崩れてわっと泣きだした。
そんな涼子のお母さんを涼子のお父さんが立たせて肩を抱きしめ宥めた。
俺はそんな2人を見ながら胸が痛んでしかたなかった。
本当に俺のせいだ。
俺が涼子に話があるなんて言って待ち合わせした駅の周辺を歩いたりしなければ。
そうしなければ涼子が俺を庇ってこんなことになることなんてなかったのに。
ごめん、涼子。
本当にごめん。
俺は心の中で何度もそう涼子に謝りながら、どうか涼子の右足が最悪なことになりませんようにと祈るしかなかった。
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