「2人の運命」

愛理

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第43話「やっぱり大切な人」

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  涼子(渡部のことをつきあってすぐに俺はこう呼ぶようになった。そして、涼子は俺のことを章一と呼んでいる)と彼氏と彼女の関係になって約半年が過ぎようとしていた。
  街はもうすっかりクリスマスムードで都内に行くとあちらこちらにイルミネーションが飾られている。
  今年のクリスマスイヴは勿論、俺は涼子と一緒に過ごす約束をしていた。
  そして、今日がそのクリスマスイヴだった。
  大学は冬休みに入っているので、俺はアルバイトも休ませてもらって、午前中から涼子と一緒に出かける約束をしていた。
  一緒に出かけた後は俺のところに来て、涼子は今日は泊まっていく予定になっていた。
  俺と涼子は約半年つきあってきたけど、まだ一緒に泊まったりしたことなくて、そういった意味でも今日は俺と涼子にとっては特別な日だった。
  そして、最近、俺は全然、実家に帰っていなかったので、母さんにクリスマスプレゼントを渡してから涼子と待ち合わせた場所に行こうと思って、朝早く実家に戻った。
  だけど、この行動がきっかけに俺の中でまた色々な複雑な想いを抱いてしまうことになった。

  俺がもうすぐで実家だというところまで行くともう随分と会っていなかった美香の姿が目に入った。
  その途端に俺の鼓動は高鳴った。
   え? 何で。
  何で美香がいるんだろう。
  冬休みだから帰ってきたんだろうか? でも、クリスマスイヴなのに?
  確か美香には今も恋人がいるはずなのに。
  それは本人から聞いたわけではなく、少し前に俺の母さんが美香の母さんから聞いたことだと俺に話したから。
  ああ、だけど、相手が何らかで会えないだけかもしれないしな。
  俺はそう思いながら、実家に近づいていった。
  すると美香も俺に気づいて少し驚いた顔をした後、
「章ちゃん」
  と久しぶりに俺の名前を呼んだ。
  その呼び方と声と口調に俺は凄く懐かしさを覚える。
「美香、久しぶりだな」
  俺がそう言うと美香は俺の顔を真っ直ぐに見て、そうだねと答える。
  だけど、俺は美香の顔を見て、ドキンっとした。
  だって、美香の目は明らかに濡れていたから。
  それは美香が何らかの事情で泣いたことを意味していたから。
「美香、何かあったのか?」
  だから、俺は思わずそう聞いた。
  すると美香は困ったように笑って、
「うん。ふられちゃった」
  そう悲しそうに言った。
「そうなんだ」
  俺は美香の言葉に何て言っていいのか解らずそれ以上何も言えなくて少し黙ってしまった。
  だって、俺には今、涼子がいるし、ここで美香を抱きしめて慰めるわけにもいかないから。
  だけど。
「うん、何かね俺といても美香はいつも違う誰かのことを想ってるからって言われちゃって」
  美香がそう言ったので、俺は思わず美香をじっと見つめてしまった。
  それってもしかして。
  いや、まさか。
  俺が美香の言葉に動揺していると、
「ごめんね、章ちゃん。私、やっぱり章ちゃんが好きみたい」
  美香がそう言ったので俺はさっき彼女がいるから美香を抱きしめるわけにはいかないという想いを何処かに葬むって、思わず美香を抱きしめた。
  そして、俺は美香を抱きしめながら、ああ、やっぱり俺もまだ美香が大切で仕方ないんだ。
  そう思った。
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