「2人の運命」

愛理

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第37話「気づいた時には」

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  瀬戸から浅川のことを聞いた次の日、俺は大学の帰りに浅川と一緒に帰り、そして、今度は大学の近くにあるカフェに入り、静かに瀬戸から聞いたことを話した。
  すると浅川の顔は段々と青ざめていった。
「浅川、お前、本当に最低な人間だな」
  俺がそう言うと浅川は開き直ったのか俺を見て、睨んだ。
「だって、そうでもしないと本田くんは私のことを見てくれなかったでしょ。私、何でか解らないけど、凄く本田くんが好きなんだもん。だから、どうしても本田くんを手に入れたかったの」
「人として最低なことをして手に入れて……それでお前、本当に幸せになれるって思ってたの?」
「私は本田くんがそばにいてくれるだけで良かったのよ」
「そんな風にしか人を好きになれないなんて可哀想だな」
  俺がそう言うと浅川はまた俺を睨みつけた。
「俺はお前に凄く腹が立ってるけど、だけど、もっと俺が腹が立つのは自分にだ。一番大切なものをまた最悪な形で傷つけて手離してしまったんだからな。だけど、浅川、これだけは言っとく。例えもう美香が俺のことを必要としてくれなくても、俺はやっぱり美香のことが好きだし、あいつの幸せを一番に考えて生きていく。後、お前はその最低な思考をできることなら改めて生きていけよな。じゃあな」
  俺はそう言い席を立ち、伝票を見て、2人分の金を置いてカフェから出ていった。

  その次の日から浅川は大学に姿を見せなくなり、数日経って、瀬戸から浅川は別の大学に編入することになったと聞いた。
  俺はそのことに対してもう何も思わなかった。
  そして、見た目には俺にまた平穏な日々が訪れた。
  もう好きでもない人と一緒にいなくても良くなって、自由になって……。
  だけど、俺の心の中は決して平穏ではなかった。
  ふがない自分のせいで美香を傷つけて手離してしまったという真実があったから。
  きっと美香はもう俺が何を言っても俺のことを受け入れてはくれないだろう。
  そうも思うから。
  でも、瀬戸が俺にこのままじゃ良くないよなと言った意味は浅川のことだけではなくて、美香とのこともこのままでは良くないという意味もあったと思うし、何より俺が美香に本当のことだけは伝えたかったから、また大阪に行くことに決めた。
  だけど、俺は大阪に行くことにした土曜日の前日の金曜日にアルバイトから帰ってきて、美香の姿をもう少しで家に着くというところから、美香が美香の家の前に立っているのを見た。
  え? 美香、帰ってきたんだ。
  何だ。じゃあ、明日は俺、大阪に行くのはキャンセルだな。
  そう思いながら、せっかく今、美香がいるのだからと急いで美香のところに行こうとした。
  だけど、足を速めようとした瞬間に俺はその場に立ち尽くしてしまった。
  だって、美香の他にもう1人の人物がいることが解り、しかも、その人物は男性で、美香のことを抱きしめた後、美香にキスをしたから。
  そして、俺はそんな光景を見て、改めて凄く大事な人を失ってしまったことを実感した。
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