「2人の運命」

愛理

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第5話「再会したのに」

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「美香」
  俺は美香を見て思わず名前を呼んだ。
  美香は一緒にいる男性と話していたから、俺の方を向いて凄く驚いた顔をした。
「章ちゃん」
「こっちに帰ってたんだ?」
「うん、今日のお昼前に」
  今日の昼前に帰ったのなら、俺はその時間はアルバイトだったし、食事会に行くことになって、帰るのも面倒だったから、アルバイトが終わった後は吉住とつるんでいたから、美香が帰ってきたことは知らないのは当然だった。
「そっか。大型連休だから?」
「うん、そう」
  俺と美香はそこで会話が途切れた。
  本当はこの後、会えるかな? とか、一緒にいる男性って一体誰? とか色々と聞きたいことがあるのにそんな言葉達は喉の奥に留まったままで。
  俺と美香が顔を合わせたままでいると、
「ね、本田くん、その可愛い女の子誰?」
  と浅川が明るく聞いた。
「え? あ、俺の幼馴染なんだ。家が隣同士なんだけど、今、美香は大阪の大学に行ってて」
「そうなんだ。私、浅川りるっていいます。本田くんとは大学が一緒で学科も一緒なんだ。よろしくね」
  浅川は笑顔でそう言った。
  美香は浅川の元気な自己紹介に戸惑っているようだった。
  だから、俺は、
「もうすぐ俺の順番回ってくると思うから、早く飲み物淹れて行こうか」
  そう浅川に言った。
「あ、じゃあ、私達はもう淹れたんで行くね」
  美香はそう言い一緒にいた男性と俺達の部屋とは違う方向へ向かって歩いていった。
  俺は美香の後姿を見てまた切なくなった。
  せっかくまた会えたのに。
  会話も続かないし、言いたいことは言えないし。
  何で俺、美香に対してこんな風になってしまったんだろう?
  幼い頃、美香を俺が守り続けていくんだと思っていた強い気持ちは一体、何処へ行ったんだろう?
  だけど、俺は一。
  やっぱり、美香への想いを断ちきることはできないと思う。
  そんなことを思っていると、
「ね、早く飲み物淹れて行こう」
  浅川がそう言ったので、俺は、はっとして、飲み物をグラスに注ぎ、浅川とまた皆がいる部屋に帰っていった。
  だけど、カラオケをしている部屋に戻っても、俺はもう美香のことで頭が一杯になり、隣に座っている浅川が俺に話しかけている内容もあまり頭に入ってはこなかった。
  美香は今頃、あの男性と2人でカラオケの部屋にいるんだろうか。
  もしかして、彼氏なんだろうか?
  そんなことばかり考えてしまって。
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