「伝説を超える時」

愛理

文字の大きさ
上 下
104 / 104
番外編「辿り着きたい場所を探しに」(クラウス篇)

第18話「シューマン国へ」

しおりを挟む
「クーガ、まだ起きあがってはいけないわ」
 サリアが言った。
 クーガはサリアを見て、はっとしたような顔をして、
「あなたはサリアさん」
 そう言った。
「私のこと覚えてくださっていたのね。嬉しいわ」
 サリアが言った。
「勿論です!あんなに親切にしていただいた方を忘れるはずありません。では、ここはもしかして」
「ええ、あなたが以前いたハート村よ。そして、ここは私の実家。クーガ、どうしてだか解らないけど、あなたはとても悪い魔物にとり憑かれていたみたいなの」
「魔物に? そうだ、私はソフィアが亡くなったと手紙で知り、だけど、とても信じられずに真相を確かめるためにシューマン国へ向かったのですが、シューマン国へもう少しで着くという場所で、シューマン国の兵士達に見つかり、また、攻撃されてしまい、辛うじて、逃げましたが、傷が酷いので、近くにあった洞窟で少しの間過ごそうと思い、その洞窟にいたのですが、暫くして、とても長い白い髭を生やしたお爺さんが現れて」
「お爺さん?」
 クラウスが思わず聞いた。
「はい、お爺さんでした。そして、そのお爺さんに強い力が欲しいかと聞かれて、はいと答えたら、さらに、それはどんな力だとしても欲しいかと聞かれ、欲しいですと答えたら、急に意識が朦朧としだして」
「解った。そいつの正体は魔物で、きっとどんな力でも欲しいという奴にしかとり憑けなくて、だから、クーガがどんな力でも欲しいと答えた途端にとり憑いたんだな」
 クラウスが言った。
「そうか。私は魔物にとり憑かれていたのか。何てことだ。一体、いつから私はそんなことに」
 クーガが悔しそうな顔で言った。
「それは解りませんが、あなたにとり憑いていた魔物の力が増したのがサリアが病気になった頃なので、もしかするとその頃、あなたが関係があることで、何か起きたのかもしれません」
 リンナが言った。
「じゃあさ、ソフィアの死の真相とそのことも含めて、俺とリンナでシューマン国へ行って、確かめてきてやるよ。ソフィアの死も本当か解らない、どうしてクーガにとり憑いていた魔物の力が増したのか解らないままじゃ、クーガはこの先も苦しみながら生きなきゃいけないかもしれないからな」
 クラウスが言った。
「いいよな? リンナ」
「ええ、勿論です」
 リンナは力強くそう言った。
「それなら、私も」
 サリアがそう言うと、
「サリアは病みあがりだし、ラウルが心配するから駄目。ということで、必然的にラウルもサリアのそばにいなきゃいけないってことで駄目だろ、後、ファルもリリカが妊娠中だから、早く帰ってやらなきゃだから、駄目。ということで、俺とリンナで行ってくるよ」
「そんな、関係のないあなた達にそんなことをしてもらうわけには・・・・・・うっ」
 クーガはそう言った後、ふらついた。
「関係なくはないさ、サリアの知り合いなんだから。それに俺達は鍛えてるから、例え兵士が襲ってきても大丈夫だから。それより、クーガはもうベッドに戻った方がいいな」
 クラウスはそう言いクーガを抱きかかえた。
「わっ! 自分で歩けます」
 クーガが慌てたように言う。
「いいから。じゃあ、俺はクーガをベッドまで運んだ後、また戻ってくるから」
 そして、クラウスはクーガをベッドまで運び、その後、皆のところに戻った。
 それから、皆で色々な話をして、翌日の早朝、クラウスとリンナは皆に見送られながら、シューマン国へと向かった。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

転生墓守は伝説騎士団の後継者

深田くれと
ファンタジー
 歴代最高の墓守のロアが圧倒的な力で無双する物語。

子ども扱いしないでください! 幼女化しちゃった完璧淑女は、騎士団長に甘やかされる

佐崎咲
恋愛
旧題:完璧すぎる君は一人でも生きていけると婚約破棄されたけど、騎士団長が即日プロポーズに来た上に甘やかしてきます 「君は完璧だ。一人でも生きていける。でも、彼女には私が必要なんだ」 なんだか聞いたことのある台詞だけれど、まさか現実で、しかも貴族社会に生きる人間からそれを聞くことになるとは思ってもいなかった。 彼の言う通り、私ロゼ=リンゼンハイムは『完璧な淑女』などと称されているけれど、それは努力のたまものであって、本質ではない。 私は幼い時に我儘な姉に追い出され、開き直って自然溢れる領地でそれはもうのびのびと、野を駆け山を駆け回っていたのだから。 それが、今度は跡継ぎ教育に嫌気がさした姉が自称病弱設定を作り出し、代わりに私がこの家を継ぐことになったから、王都に移って血反吐を吐くような努力を重ねたのだ。 そして今度は腐れ縁ともいうべき幼馴染みの友人に婚約者を横取りされたわけだけれど、それはまあ別にどうぞ差し上げますよというところなのだが。 ただ。 婚約破棄を告げられたばかりの私をその日訪ねた人が、もう一人いた。 切れ長の紺色の瞳に、長い金髪を一つに束ね、男女問わず目をひく美しい彼は、『微笑みの貴公子』と呼ばれる第二騎士団長のユアン=クラディス様。 彼はいつもとは違う、改まった口調で言った。 「どうか、私と結婚してください」 「お返事は急ぎません。先程リンゼンハイム伯爵には手紙を出させていただきました。許可が得られましたらまた改めさせていただきますが、まずはロゼ嬢に私の気持ちを知っておいていただきたかったのです」 私の戸惑いたるや、婚約破棄を告げられた時の比ではなかった。 彼のことはよく知っている。 彼もまた、私のことをよく知っている。 でも彼は『それ』が私だとは知らない。 まったくの別人に見えているはずなのだから。 なのに、何故私にプロポーズを? しかもやたらと甘やかそうとしてくるんですけど。 どういうこと? ============ 番外編は思いついたら追加していく予定です。 <レジーナ公式サイト番外編> 「番外編 相変わらずな日常」 レジーナ公式サイトにてアンケートに答えていただくと、書き下ろしweb番外編をお読みいただけます。 いつも攻め込まれてばかりのロゼが居眠り中のユアンを見つけ、この機会に……という話です。   ※転載・複写はお断りいたします。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

もう一度あなたに逢いたくて〜こぼれ落ちた運命を再び拾うまで〜

雪野 結莉
恋愛
魔物を倒す英雄となる運命を背負って生まれた侯爵家嫡男ルーク。 しかし、赤ん坊の時に魔獣に襲われ、顔に酷い傷を持ってしまう。 英雄の婚約者には、必ず光の魔力を持つものが求められる。そして選ばれたのは子爵家次女ジーナだった。 顔に残る傷のため、酷く冷遇された幼少期を過ごすルークに差し込んだ一筋の光がジーナなのだ。 ジーナを誰よりも大切にしてきたルークだったが、ジーナとの婚約を邪魔するものの手によって、ジーナは殺されてしまう。 誰よりも強く誰よりも心に傷を持つルークのことが死してなお気になるジーナ。 ルークに会いたくて会いたくて。 その願いは。。。。。 とても長いお話ですが、1話1話は1500文字前後で軽く読める……はず!です。 他サイト様でも公開中ですが、アルファポリス様が一番早い更新です。 本編完結しました!

救世の魔法使い

菅原
ファンタジー
賢者に憧れる少年が、大魔法使いを目指し頑張るお話です。 今後の為に感想、ご意見お待ちしています。 作品について― この作品は、『臆病者の弓使い』と同じ世界観で書いたシリーズ物となります。 あちらを読んでいなくても問題ないように書いたつもりですが、そちらも読んで頂けたら嬉しいです。 ※主人公が不当な扱いを受けます。 苦手な人はご注意ください。 ※全編シリアスでお送りしております。ギャグ回といった物は皆無ですのでご注意ください。

結婚してるのに、屋敷を出たら幸せでした。

恋愛系
恋愛
屋敷が大っ嫌いだったミア。 そして、屋敷から出ると決め 計画を実行したら 皮肉にも失敗しそうになっていた。 そんな時彼に出会い。 王国の陛下を捨てて、村で元気に暮らす! と、そんな時に聖騎士が来た

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

処理中です...