「気になる人」

第７３話「職場での嫌がらせの時に」

　倉崎さんの歓迎があった日、また、倉崎さんと恋人同士に戻った私はそのまま倉崎さんのマンションに泊まった。
　２人もお酒を飲んでいたから、倉崎さんの寝心地がいいから、１人だけど、キングサイズにしたんだというベッドで、一緒に横になりながら、少し話した後、すぐに眠ってしまったけれど。
　そして、次の日は２人とも少し遅めに起きて、それでも、恋人同士に戻ったし、せっかく大阪に今は住んでいるんだから、大阪らしいところへデートしに行こうということになり、大阪城や通天閣などに行って、デートした。
　その時に倉崎さんから、もし良かったら、また名前で呼んでほしいと言われて、倉崎さんをまた、雪人さんと呼ぶことにした。
　そして、雪人さんは私のことをまた美春と呼ぶようになった。
　私は雪人さんとまた恋人同士に戻れて、本当に幸せな気持ちで一杯だった。

　だけど、そんな私と雪人さんにまたトラブルが起きた。
　ただ、今度はPCに画像が送られたとか、そういったことではなく、
　湯野さんが職場の女性社員達に何処から知ったのか、私と水野さんがつきあっていたこと、そして、これは完全に湯野さんの作り話だけど、雪人さんが来て、雪人さんの方がいいと思ったから、乗り換えたということを言いふらし、それで、湯野さんの話を鵜呑みにしてしまった、女性社員の人達から、私はあまりいい顔をされなくなり、時には嫌がらせを受けるようになった。
　雪人さんの方は男性だから、そういったことはあまりないようだったけれど、それでも、私とのことをたまに女性社員から、水野さんから奪うなんて、信じられないとか言われているようだった。
　以前の私なら、きっと、こういったことがあったら、もっと落ちこんでいたかもしれない。
　でも、今は雪人さんと一緒にいれることの方が大事だから。
　そう思っていた。

　だけど、そう思っていた数日後に今日の午後から使う大事な仕事の資料が無くなり、誰に聞いても知らないの一点張りだった。
　そして、私は湯野さんの机にその資料の１枚だけが乗っているのを見つけてしまい、湯野さんに聞いた。
「湯野さん、これ私の資料ですよね。湯野さんが私の机から取ったんですか」
　そう聞くと湯野さんは、
「は？　それって、どういう意味ですか。私がわざと野中さんの資料を取って、嫌がらせしたとでも言うんですか」
　と強気な態度で言ってきた。
　すると最近、私にあまりいい顔をしてくれなかった女性社員２人も参戦してきて、
「野中さん、酷い。だって、湯野さんの机にはこれ１枚しかないんでしょ。あなたが落としたのが偶然に湯野さんの机の上に落ちたんじゃないの」
　とか言われた。
　それでも、私が食い下がらないでいると、
「やっぱり、男を手玉に取るだけあるよね。自分が悪いのに引き下がらない性格で」
　と女性社員の１人が言った。
　すると、私の後ろから、
「いい加減にしろよ。野中さんはそんな子じゃない」
　と雪人さんの声がした。
　すると雪人さんの方を見て、湯野さんが、
「倉崎さんが野中さんを庇うのはあたり前じゃない。だって、倉崎さんの大事な人なんだから」
　そう言うと、雪人さんは、
「ああ、大事だよ。だから、君に何度も迫られたけど、断ったんだ。その腹いせにあることないこと、言いふらして、こんな風に嫌がらせして、満足か」
　そう今まで聞いたこともない低い、静かだけど、凄く怒った声でそう言った。