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第65話「心の奥底にある想い」
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雪人さんが私のいる職場にやって来て、1ヶ月程経った頃の土曜日のことだった。
水野さんとつきあってから、会社が休みである土曜日と日曜日は殆ど水野さんと一緒に過ごすようになっていたけど、水野さんは木曜日から火曜日まで東京に出張で、久しぶりに予定がないので、水野さんと一緒にいると気を遣ってあまり見れないでいる洋服とかを見ようと思い、私は大阪の中心都部である梅田に繰り出していた。
梅田駅の周辺にはやはり大阪の中心部だけあって、色々なお店がたくさんある。
そして、今、私は洋服専門店が並んでいる地下街を歩いていた。
この並んでいる洋服専門店の何処かで洋服を買って、その後は有名なデパートの地下で今日の分の夕食とスイーツでも買っていこうかなと思いながら。
すると、
「野中さん」
と後ろからとても聞き覚えのある声がした。
私はその声にドキリとして、まさかと思いながら後ろを振り向いた。
するとそこには私が思ったとおり、雪人さんが立っていた。
「雪人さん」
そう名前を呼んだ後、私は、はっとした。
雪人さんは私のことを“野中さん”と苗字で呼んでいるのに私が“雪人さん”と呼ぶのはおかしいと思って。
だから、私は、
「倉崎さん」
と呼びなおした。
名前を呼びなおした時、一瞬だけ倉崎さんが寂しそうな悲しそうな表情をした。
え? どうして?
私は倉崎さんのそんな表情を見て困惑した。
どうして、私が苗字で呼ぶとそんな表情するんですか?
本当はそう聞きたかった。
だけど、そんなこと聞けるはずもなく黙っていると、
「野中さん、1人かな?」
そう聞いてきたので、
「え? はい」
と答えると、
「じゃあ、もし良かったらなんだけど、もうすぐお昼の時間に近いし一緒に何処かでお昼食べないかな?」
そう言ってきたので、私は思わずその誘いにコクンと頷いてしまった。
ジュージュー。
鉄板の上で焼いている音だけでもう美味しそうだと思ってしまう。
いや、勿論、匂いも香ばしくて美味しそうなんだけど。
今、私と倉崎さんはテーブルを挟んで向かい合わせで座っていて、向かい合わせで挟まってあるテーブルの上には鉄板があり、その上にはお好み焼きが2枚分乗っていた。
私と倉崎さんはさっき私達が出会った場所から地下街の道が続いているレストラン街へとやって来て、私も倉崎さんもまだ本場のお好み焼きを食べたことがないからと私も倉崎さんも知っている有名チェーン店のお好み焼き屋さんに入った。
このお好み焼き屋さんは店員さんが焼けるまで全てやってくれるらしく、私達はただ焼きあがるのを待つだけだった。
そして、店員さんがやって来て、こてでお好み焼きをトントンと叩いたりしてから、
「はい、では、お好みに合わせて、そちらに備わっているソースなどをかけてお召し上がりください」
そう言い鉄板の火を止めて、ぺこっと頭を下げた後、私達のところから去っていった。
「じゃあ、食べようか」
倉崎さんがそう言ったので、私はコクンと頷いた。
お好み焼きは凄く美味しけど、凄く熱いので、ほんの少しだけ猫舌な私は食べるのに少し苦戦していた。
そんな私を見て倉崎さんはくすっと笑った。
私はそんな倉崎さんを思わずじっと見てしまった。
「あ、ごめん。何か可愛いなと思って。でも、野中さんが猫舌なのは知らなかったな」
倉崎さんはそう言って何処となく寂しそうな表情をした。
もし、倉崎さんが外国に仕事で行かなければ。
倉崎さんが病気にならなければ。
私達は今頃、まだ恋人同士で、私が少し猫舌なことも倉崎さんはとっくに知っていたんだろうか。
私は倉崎さんを見ながらそんな風に思った。
そして……。
今、私は水野さんとつきあってるんだから、また、倉崎さんにも誰かいるかもしれないと思っても、心の奥底で倉崎さんに対する本当の想いを止められないことを自覚してしまった。
水野さんとつきあってから、会社が休みである土曜日と日曜日は殆ど水野さんと一緒に過ごすようになっていたけど、水野さんは木曜日から火曜日まで東京に出張で、久しぶりに予定がないので、水野さんと一緒にいると気を遣ってあまり見れないでいる洋服とかを見ようと思い、私は大阪の中心都部である梅田に繰り出していた。
梅田駅の周辺にはやはり大阪の中心部だけあって、色々なお店がたくさんある。
そして、今、私は洋服専門店が並んでいる地下街を歩いていた。
この並んでいる洋服専門店の何処かで洋服を買って、その後は有名なデパートの地下で今日の分の夕食とスイーツでも買っていこうかなと思いながら。
すると、
「野中さん」
と後ろからとても聞き覚えのある声がした。
私はその声にドキリとして、まさかと思いながら後ろを振り向いた。
するとそこには私が思ったとおり、雪人さんが立っていた。
「雪人さん」
そう名前を呼んだ後、私は、はっとした。
雪人さんは私のことを“野中さん”と苗字で呼んでいるのに私が“雪人さん”と呼ぶのはおかしいと思って。
だから、私は、
「倉崎さん」
と呼びなおした。
名前を呼びなおした時、一瞬だけ倉崎さんが寂しそうな悲しそうな表情をした。
え? どうして?
私は倉崎さんのそんな表情を見て困惑した。
どうして、私が苗字で呼ぶとそんな表情するんですか?
本当はそう聞きたかった。
だけど、そんなこと聞けるはずもなく黙っていると、
「野中さん、1人かな?」
そう聞いてきたので、
「え? はい」
と答えると、
「じゃあ、もし良かったらなんだけど、もうすぐお昼の時間に近いし一緒に何処かでお昼食べないかな?」
そう言ってきたので、私は思わずその誘いにコクンと頷いてしまった。
ジュージュー。
鉄板の上で焼いている音だけでもう美味しそうだと思ってしまう。
いや、勿論、匂いも香ばしくて美味しそうなんだけど。
今、私と倉崎さんはテーブルを挟んで向かい合わせで座っていて、向かい合わせで挟まってあるテーブルの上には鉄板があり、その上にはお好み焼きが2枚分乗っていた。
私と倉崎さんはさっき私達が出会った場所から地下街の道が続いているレストラン街へとやって来て、私も倉崎さんもまだ本場のお好み焼きを食べたことがないからと私も倉崎さんも知っている有名チェーン店のお好み焼き屋さんに入った。
このお好み焼き屋さんは店員さんが焼けるまで全てやってくれるらしく、私達はただ焼きあがるのを待つだけだった。
そして、店員さんがやって来て、こてでお好み焼きをトントンと叩いたりしてから、
「はい、では、お好みに合わせて、そちらに備わっているソースなどをかけてお召し上がりください」
そう言い鉄板の火を止めて、ぺこっと頭を下げた後、私達のところから去っていった。
「じゃあ、食べようか」
倉崎さんがそう言ったので、私はコクンと頷いた。
お好み焼きは凄く美味しけど、凄く熱いので、ほんの少しだけ猫舌な私は食べるのに少し苦戦していた。
そんな私を見て倉崎さんはくすっと笑った。
私はそんな倉崎さんを思わずじっと見てしまった。
「あ、ごめん。何か可愛いなと思って。でも、野中さんが猫舌なのは知らなかったな」
倉崎さんはそう言って何処となく寂しそうな表情をした。
もし、倉崎さんが外国に仕事で行かなければ。
倉崎さんが病気にならなければ。
私達は今頃、まだ恋人同士で、私が少し猫舌なことも倉崎さんはとっくに知っていたんだろうか。
私は倉崎さんを見ながらそんな風に思った。
そして……。
今、私は水野さんとつきあってるんだから、また、倉崎さんにも誰かいるかもしれないと思っても、心の奥底で倉崎さんに対する本当の想いを止められないことを自覚してしまった。
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