「気になる人」

第５４話「意外な展開」

　次の日、私は長谷さんにお昼休みに昨日、早苗さんと会ったこと、早苗さんから聞いたこと、また、雪人さんから言われたことをを話した。
　すると長谷さんはカンカンになって、
「一体、それってどういうことなの」
　そう言った。
　今、私達は食堂で昼食を食べ終えて、構内にあるお庭みたいなところの長いベンチに２人で座って話していた。
「私もよく解らないの。雪人さんが一体、何を考えてるのか。記憶が戻ったのにどうして橋野郁美さんのままでいようとするのか。後、本当に早苗さんと結婚式を挙げるとしたらどうしてなのか」
「倉崎さんのことだから、何か事情があるのかもしれないけど、それでも、私は倉崎さんが許せない」
「長谷さん」
「だって、そうでしょ？　だいたい、野中さんが京都の会社に長い間、行かされたのだって、元はといえば、倉崎さんが女性のことをちゃんとしておかなかったからじゃない。そして、アメリカに行ったのだって、元はといえば、過去の倉崎さんの女性に対する発言とか行動が原因でしょ。その度に野中さんは辛い思いしてきてるのに。例え事情があったとしても、私は倉崎さんは何より野中さんのことを一番に考えるべきだと思うわ」
「長谷さん」
「本当はこんなこと言いたくはないけど、私はもう野中さんに倉崎さんはお薦めしない」
「長谷さん」
「野中さん、可愛いし、いい子だし、他にもいい男の人、いると思うよ」
「長谷さん」
「私だって倉崎さんはここにいた時、クールではあったけど、誠実そうな人だって思ってたし、野中さんと一緒にいる時はクールさもだいぶ和らいでて、本当に野中さんのことが好きなんだなって思って、お似合いだなって思ってた。だけど、野中さんが京都に行ってからの倉崎さんは野中さんの話を聞いてる限り、私からしたら、一体、何を考えてるのか解らないわ。私は野中さんには幸せになってほしいから」
「ありがとう、長谷さん、私のこといつも心配してくれているのよく知ってるよ。でも、私はまだ雪人さんが好きだし、次にいくにしても、もっとはっきりとしたことを雪人さんから聞かなきゃ、雪人さん以外の人にはいけないと思うから」
「野中さんがそこまで言うなら、仕方ないけど、でも、倉崎さんの連絡先は知らないんでしょう？　もう前の連絡先は繋がらないんだよね。じゃあ、一体、どうやって、倉崎さんに話を聞くの」
　長谷さんがそう言った後、
「俺、倉崎の今の連絡先なら知ってるよ」
　と後ろから声がして、振り返るとそこには以前、私のことを好きだと言ってくれて、少しの間だけつきあっていた、高瀬さんが立っていた。