「気になる人」

愛理

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第36話「最後の最後に」

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 結果的にクリスマスイヴとクリスマスは雪人さんと過ごせた。
 雪人さんはクリスマスイヴの日、何処かカプセルホテルでも探して泊まるつもりだったと言ったので、私はそのまま雪人さんに家に泊まってもらった。
 るりかさんと晃さんの話を聞いた後、私は全ての真実が解り、また、雪人さんともまた一緒にいれるということからか、凄く心が軽くなったのを感じていた。
 そして、私達はお互いに会えなかった時にあったことをたくさん話した。
 その間、私はとても楽しくて、また、凄く幸せだった。
 だから、改めて私はやっぱり雪人さんが好きなんだと実感した。
 
 寝る時間になり、私は雪人さんにベッドを使ってくださいと言ったら、雪人さんは私が敷いたお客様用の布団に入り、私においでと手招きしたので、私は素直に雪人さんのところへいった。
 すると雪人さんは私をぎゅっと抱きしめた。
「雪人さん」
「美春とまたこうして一緒にいれるようになって良かった。やっぱり、俺は美春じゃないと駄目だ」
「雪人さん」
「だから、一緒に寝たいんだ」
 雪人さんは笑ってそう言った。
 だから、私も笑って頷いて、2人で布団に入った。
 それから私達はまた他愛もない会話をして、その後、どちらからともなくキスをして、抱き合った。
 

 朝、目が覚めてデジタル時計を見ると7時10分だった。
 私はまだぐっすりと眠っている雪人さんを起こさないように起きて、手を洗い、うがいをした後、台所に行き、昨日、慌てて炊いたご飯があったから、簡単なおかずをつくり、朝食の用意をした。
「おはよう、美春」
 朝食の用意がだいたいできたら、雪人さんがタイミングよく起きてきた。
「おはようございます。朝食できてるんで、食べましょう」
 私がそう言うと雪人さんは嬉しそうにしてくれた。
「久しぶりだな。美春がつくってくれた朝食。でも、そう遠くない未来には毎日、こうして美春がつくった朝食を食べたいな」
 雪人さんのその言葉に私はドキッとした。
 だって、毎日ってことはもしかして。
 私がそう思っていると雪人さんが、
「美春、もう少し落ち着いたら、ちゃんとプロポーズさせてもらうから」
 そう言ったので、私は思わず食べていたご飯を喉につまらせそうになった。
「大丈夫? でも、本当だから」
 雪人さんは咳き込んだ私の背中を優しく叩いてくれながら、そう言った。

 クリスマスの日は雪人さんがせっかくだから、京都の何処かに行こうと言ってくれたので、私達は清水寺に行くことにした。
 クリスマスだけあって、京都は外にたくさん人がいて、また、クリスマスはキリスト教だけど、清水寺も結構、賑わっていた。
 だけど、雪人さんと一緒にいるから、人が多くても、何かに並んでいる時でも楽しかった。
 だから、私は京都に雪人さんと初めて来た時みたいにこのまま時間が止まったらいいのになとまたそんなことを考えていた。
 でも、時間は勿論、止まってくれるわけもなく、あっという間に雪人さんがもうすぐ新幹線に乗るという時間になった。
 私達はまた雪人さんが乗る新幹線が来るまでホームで一緒に待っていた。
「雪人さん、京都に来てくれて本当にありがとうございます。来てくれなかったら、私、雪人さんのこと誤解したままだったし、私も辛いままでした。でも、これからは雪人さんを信じします。東京駅とその後のことは本当にすいませんでした」
 私がそう言うと雪人さんは首を左右に振り、
「だから、それは俺がちゃんと美春に本当のことを言わなかったのが悪いんだから、気にしないで。後、美春、正月は実家に帰るの?」 
「はい、だから、良かったら、お正月、何処かで雪人さんに会えたならなって思ってるんですけど」
「ああ、勿論」
 雪人さんとこんな風に話して、今、お正月に会う約束までできるなんて幸せだなと私は改めて思った。
 でも―。
 雪人さんが乗る新幹線が来て、雪人さんが新幹線に乗り、発車の音が鳴った後、私に綺麗なスタイルのいい私より少し年上かなと思う女性が、
「あなたが雪人の今の彼女ね。悪いけど雪人は返してもらうわよ」
 そう言って、新幹線に乗り込んだ。
 私は驚いて慌ててまだドアのところにいてくれている雪人さんを見た。
 すると雪人さんはその女性を見て、驚いた顔をして、その後すぐに私の方を見て、後でちゃんと連絡すると言ったところで、ドアが閉まり、新幹線は京都駅から発車してしまった。
 私は雪人さんと今日、ずっと幸せに過ごしていたけど、最後の最後で何が何だか解らない出来事が起こり、暫く京都駅のホームで立ちつくしてしまった。
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