「気になる人」

愛理

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第34話「クリスマスイヴに」

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 それからも何度か雪人さんから連絡があったけど、私は雪人さんからの連絡を取る気にはなれずにいた。
 そして、いつしか雪人さんからの連絡はなくなり、私はこれでいいんだと思っていた。
 だけど、クリスマスイヴのことだった。
 今年は平日で私は普通に仕事をして会社から帰った。
 本当なら、雪人さんと一緒に過ごすはずだったクリスマスイヴ。
 だけど、それは幻に終わった。
 でも、私がマンションに着くとマンションの建物の前で雪人さんが立っていた。
 え?
 どういうこと?
 見間違い?
 私は驚いて思わず立ち止まってしまった。
 すると雪人さんは私に気づいて駆け寄ってきた。
「美春」
「雪人さん、どうして」
「美春、全然、電話もLINEの返事もくれないから来た」
「るりかさんは? クリスマスはるりかさんと過ごすんじゃなかったんですか」
 私は思わず冷たい口調で言ってしまった。
「美春、そのことは本当にごめん。でも、それには本当に理由があったんだ」
「今更、何なんですか」
「美春のこと書いたメールが会社の人達に実際にランダムに流したのは晃の仕業だったけど」
「けど?」
「よく考えたら、晃は俺達の会社の人のアドレスをどうして知ったんだろうって、ずっと思ってて」
 そういえばそうだ。
 晃さんは私達の会社の社員じゃない。
 そして、雪人さんのこの口ぶりからすると多分、私達の会社に勤めている知り合いもいないんだろう。
「晃は俺達の会社に勤めている知り合いはいないはずだしって思ったけど」
 思ったけど?
 じゃあ、もしかして、本当は誰か知っている人がいるんだろうか。
 その人から上手くアドレスを入手でもしたんだろうか。
 私がそう思っていると雪人さんが私を暫くじっと見た後、少しだけ辛そうに、
「でも、るりかは少しの間だけ、俺達が通っている会社にアルバイトに来てたんだ」
 そう言った。
 え? あ、でも、そういえば。
 私がるりかさんの存在を知ったのは、会社だった。
 雪人さんが凄く優しく接していた女性で、私はあの光景を見て、私は絶対に雪人さんの彼女にはなれないって思ったんだっけ。
 色々ありすぎて、すっかり忘れていたけど。
 でも、そうか。
 だから、るりかさんはあの時、会社の構内にいたんだ。
 だけど、さっき雪人さんが私のことを書いたメールを実際に流したのは晃の仕業だったけどって、それじゃあ、その元をつくったのって。
 私は思わず雪人さんをじっと見た。
 すると雪人さんは私が何を言いたのか解ったみたいで、コクンと頷いて、
「ああ、多分、あの文章を書いたのはるりかだ」
 そう言った。
「え? 一体、どういうことですか」
 私はるりかさんは純粋で、そんなことするはずないのでは?
 とか、じゃあ、何で雪人さんはるりかさんと一緒にいたんだろうとか、
 何だか頭がパニックになってきた。
 だけど、雪人さんが、私を抱きしめて、
「美春、色々黙っててごめん。でも、俺は今も美春のことしか愛してないから」
 そう言ってくれたので、気持ちが落ち着いて、
「私の方こそ全然、雪人さんの話を聞かずにごめんなさい」
 そう言った後、
「良かったら、私の部屋でもっと詳しく教えていただけますか」
 そう言い雪人さんを自分の部屋に招き入れた。
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