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第15話「別れと決心」
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日曜日に私は高瀬さんと会う約束をした。
高瀬さんはデートに誘ってくれたけど、私は話がありますと伝えたので、結局、2人の家の中間地点にある駅から降りて歩いて5分くらいで辿り着くことができる小さな公園で会うことになった。
午前10時に待ち合わせをしていて、私の方が早く着いたけど、本当に僅差で高瀬さんもその公園に現れた。
「もう来てたんだね」
高瀬さんが私のところに来て、すぐにそう言った。
「はい、でも、私も本当にすぐさっき着いたところです」
「そっか。じゃあ、とりあえず、そこにあるベンチにでも座る? 今、この公園に誰もいないし、話するなら丁度いいしさ」
高瀬さんの提案に私は頷き、私達は公園にある白い2人掛けくらいの長さのベンチに座った。
きっとお互いに本当に好きな人同士なら、こうして2人でベンチに座るのはとても素敵なシチュエーションなんだろうなと私は今から、高瀬さんには自分の本当の気持ちを伝えようとしているのにそんな場違いなことを少し思ってしまった。
「で、話って何かな。俺と別れたいってことかな」
だけど、私は高瀬さんのその言葉で一気に今、自分が思っていた場違いなことなど何処かに飛んでいった。
そして、高瀬さんの言葉に驚きすぎて私は思わず高瀬さんの顔をじっと見てしまった。
「図星か。ま、ここのとこ野中さんと一緒にいて、他に好きな奴がいるってことは解ったから驚かないよ」
私が何も言葉を発しないからか、高瀬さんは続けてそう言った。
「え?」
でも、私もさすがに高瀬さんの今の言葉には思わず変な声が出てしまった。
「本当はさ、野中さんて俺のめちゃタイプだから、例え野中さんに今、好きな相手がいても頑張って落としたいって気持ちはあるけど、でも、俺の感では野中さんは俺がどんなに頑張っても絶対に落ちないだろうなって思うし」
「高瀬さん」
「それに野中さんの好きな相手って倉崎だろ」
「!」
私は図星のことを言われてまた何も答えられない。
そんな私を見て高瀬さんは少し諦めたような感じに笑って、
「やっぱりな。だって野中さん、会社にいる時、倉崎のことよく見てるもんな」
「え、本当ですか」
「ああ、まあ、最初は野中さんは倉崎から仕事の指導を受けてるからだろうと思ってたけど、途中で気づいたんだ。野中さんは倉崎のこと見るときだけ、何か目が違うなって」
「…………」
自分では全然l気づかなかったけど、だけど、私が倉崎さんのことを特別に思っているのは事実だし、今、高瀬さんが言ったことは本当なんだろうなと思った。
そして、それと同時に少し恥ずかしくなった。
「ま、あいつ容姿もいいし、性格だって本当は凄くいい奴だしな。だから、あいつ相手だと負ける気しかしないから、張り合おうって気にもならないから、素直に別れるよ」
「高瀬さん」
「ということでここからはもう別行動しよう」
そう言い高瀬さんはベンチから立ちあがった。
そして、私を少し見てから、
「でも、もし倉崎とうまくいっても、つきあっていくうちに段々と辛くなるかもしれない。それだけは野中さんのために伝えておくよ。今、別れたとはいえ、やっぱり俺はまだ野中さんのこと好きだし、いい子だとも思ってるからさ。だから、明日、会社では同じ職場の仕事仲間として普通に接してほしいな」
そう言い高瀬さんはじゃあねと私に小さく手を振り、私に背を向けて足早に公園から出ていった。
私は高瀬さんの姿が完全に見えなくなるまで、高瀬さんの後姿をずっと見ていて、その間中、別れる時まで優しくしてくれてありがとうございますと心の中で言っていた。
そして、高瀬さんの姿が完全に見えなくなった後、少しの間、ベンチに1人で座り続け、倉崎さんのことを想い続けるのはもうすでに辛いことなのかもしれないけど、それでも私はもう自分の気持ちに嘘はつかないでおこうと決めた。
高瀬さんはデートに誘ってくれたけど、私は話がありますと伝えたので、結局、2人の家の中間地点にある駅から降りて歩いて5分くらいで辿り着くことができる小さな公園で会うことになった。
午前10時に待ち合わせをしていて、私の方が早く着いたけど、本当に僅差で高瀬さんもその公園に現れた。
「もう来てたんだね」
高瀬さんが私のところに来て、すぐにそう言った。
「はい、でも、私も本当にすぐさっき着いたところです」
「そっか。じゃあ、とりあえず、そこにあるベンチにでも座る? 今、この公園に誰もいないし、話するなら丁度いいしさ」
高瀬さんの提案に私は頷き、私達は公園にある白い2人掛けくらいの長さのベンチに座った。
きっとお互いに本当に好きな人同士なら、こうして2人でベンチに座るのはとても素敵なシチュエーションなんだろうなと私は今から、高瀬さんには自分の本当の気持ちを伝えようとしているのにそんな場違いなことを少し思ってしまった。
「で、話って何かな。俺と別れたいってことかな」
だけど、私は高瀬さんのその言葉で一気に今、自分が思っていた場違いなことなど何処かに飛んでいった。
そして、高瀬さんの言葉に驚きすぎて私は思わず高瀬さんの顔をじっと見てしまった。
「図星か。ま、ここのとこ野中さんと一緒にいて、他に好きな奴がいるってことは解ったから驚かないよ」
私が何も言葉を発しないからか、高瀬さんは続けてそう言った。
「え?」
でも、私もさすがに高瀬さんの今の言葉には思わず変な声が出てしまった。
「本当はさ、野中さんて俺のめちゃタイプだから、例え野中さんに今、好きな相手がいても頑張って落としたいって気持ちはあるけど、でも、俺の感では野中さんは俺がどんなに頑張っても絶対に落ちないだろうなって思うし」
「高瀬さん」
「それに野中さんの好きな相手って倉崎だろ」
「!」
私は図星のことを言われてまた何も答えられない。
そんな私を見て高瀬さんは少し諦めたような感じに笑って、
「やっぱりな。だって野中さん、会社にいる時、倉崎のことよく見てるもんな」
「え、本当ですか」
「ああ、まあ、最初は野中さんは倉崎から仕事の指導を受けてるからだろうと思ってたけど、途中で気づいたんだ。野中さんは倉崎のこと見るときだけ、何か目が違うなって」
「…………」
自分では全然l気づかなかったけど、だけど、私が倉崎さんのことを特別に思っているのは事実だし、今、高瀬さんが言ったことは本当なんだろうなと思った。
そして、それと同時に少し恥ずかしくなった。
「ま、あいつ容姿もいいし、性格だって本当は凄くいい奴だしな。だから、あいつ相手だと負ける気しかしないから、張り合おうって気にもならないから、素直に別れるよ」
「高瀬さん」
「ということでここからはもう別行動しよう」
そう言い高瀬さんはベンチから立ちあがった。
そして、私を少し見てから、
「でも、もし倉崎とうまくいっても、つきあっていくうちに段々と辛くなるかもしれない。それだけは野中さんのために伝えておくよ。今、別れたとはいえ、やっぱり俺はまだ野中さんのこと好きだし、いい子だとも思ってるからさ。だから、明日、会社では同じ職場の仕事仲間として普通に接してほしいな」
そう言い高瀬さんはじゃあねと私に小さく手を振り、私に背を向けて足早に公園から出ていった。
私は高瀬さんの姿が完全に見えなくなるまで、高瀬さんの後姿をずっと見ていて、その間中、別れる時まで優しくしてくれてありがとうございますと心の中で言っていた。
そして、高瀬さんの姿が完全に見えなくなった後、少しの間、ベンチに1人で座り続け、倉崎さんのことを想い続けるのはもうすでに辛いことなのかもしれないけど、それでも私はもう自分の気持ちに嘘はつかないでおこうと決めた。
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