「気になる人」

愛理

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第14話「私の本当の気持ち」

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「本当に? 本当にそれでいいの?」
 昼休み、食堂で一緒に昼食を食べている時に長谷さんが言った。
 実は今、長谷さんに高瀬さんとつきあうことになったと伝えたばかりだった。
「うん」
「うんって、だって、野中さんは本当は倉崎さんのことが好きなんでしょ」
 だいぶ小声で長谷さんはそう言った。
「好きだけど、恋人になるなんて絶対に無理だし、それなら、違う人とつきあってこの気持ちを完全に無くした方がいいかなって」
「私も野中さんがそれで倉崎さんのこと忘れて、高瀬さんのこと好きになって、幸せになるなら全然いいと思うよ。でも、私は野中さんは高瀬さんとつきあっても倉崎さんのことは忘れられないと思う」
「長谷さん」
「それに私は何となくだけど、倉崎さんも野中さんのこと気になってるんじゃないかと思うけど」
「まさか、そんなことあるわけないよ」
「どうして?」
「だって、倉崎さんには特別な女性がいるし」
「その女性は倉崎さんにとっては本当に特別なのかもしれないけど、彼女かは解らないんでしょ」
「でも、普通に考えたら」
「それは野中さんにとっての普通でしょ。世の中には信じられないような関係性を持っている人も沢山いるんだから、倉崎さんのその特別な女性も彼女とは限らないよ。それに私は例え倉崎さんに彼女がいても無理に自分の本当の気持ちを押し殺そうとしなくてもいいと思うよ」
 長谷さんにそう言われ私は頭からパシャっと水をかけられた感じがした。
 長谷さんの言うことは本当にその通りだと思って。

 だけど、その後も結局、私は高瀬さんの彼女として過ごしてしまっていた。
 そして、高瀬さんの彼女になって、1週間が経った頃、
「もしかして、野中さんて高瀬とつきあってるの?」
 と倉崎さんにもうすぐ定時になる時間に聞かれた。
「え?」
「何か最近、高瀬と一緒によくいるしさ」
 確かに私は高瀬さんとつきあってから、仕事の合間の少しの休憩時間とかは高瀬さんと一緒に過ごすようになっていた。
「あ、ごめん、変なこと聞いたかな」    
 私が答えられずにいると倉崎さんが先にそう言った。   
「いえ、大丈夫です」
「でも、野中さんて、高瀬のこと好きだったんだね」
 倉崎さんにそう言われて、私はさっきと同様、返事をすることができなかった。
 そんな私に倉崎さんが、
「もしかして、好きじゃないけどつきあったの?」
 そう聞いてきた。
 その倉崎さんの言葉に私はまた返事ができないでいると、
「俺がこんなこと言える立場じゃないと思うけど、もし、好きじゃないなら、恋人関係にはならない方がいいよ。後々、辛くなるだけだから」
 そう言った。
「倉崎さん」
 それは一体どういうことですか?
 もしかして、倉崎さんも過去にそういうことがあったんですか?
 私は心中ではそう聞いているのに口からその言葉を吐き出せないでいた。
 すると倉崎さんは、
「ごめん、本当に俺、野中さんにこんなこと言える立場じゃないのにな。今のは忘れて。俺、今日はもう帰るから、お疲れ様」
 そう言い倉崎さんはいつの間にか帰り支度を済ませていて、私にそう言い事務所から出ていってしまった。
 私はそんな倉崎さんの後姿を見ながら―。
 倉崎さん、私、本当はあなたのことが好きなんです。
 そして、私は長谷さんが言ったように私はこれからもまだずっと倉崎さんのことは忘れられないんだと解った。
 だから、私はやっぱり高瀬さんに私の本当の気持ちを伝えようと決心した。      
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