「気になる人」

愛理

文字の大きさ
上 下
9 / 80

第9話「恋をしたけれど」

しおりを挟む
 倉崎さんと映画を観にいった日に倉崎さんに恋をしたんだと自覚してから、私はますます倉崎さんと一緒にいるとドキドキするようになってしまい、仕事中はほぼ今もまだ隣同士で倉崎さんから色々と教えてもらっているので、仕事中は身体も熱くなって仕方がなかった。
 だけど、倉崎さんは仕事中はいつも通りで、映画に一緒に行った時のような雰囲気は職場では一切出さなかった。
 ただ、それでも、仕事中でも優しさを感じることはちょくちょくあったけど。
 でも、それは私にだけ向けたものだけじゃなく職場全員が対象者だった。
 もしかして、倉崎さんのこういう優しさに気づいている人もいるかもしれない。
 だって、この間、偶然に見かけてしまった元彼女さんは別として、倉崎さんは一匹狼だけど、倉崎さんのことを嫌っている感じの人はこの部署にはいない感じだし。
 それに私は最近、気づいた。
 倉崎さんのところにこの職場の女性がわりと仕事のことを聞きにくることに。
 見た目はイケメンで背も高い人だから、その容姿だけでもモテるだろうけど、倉崎さんは誰に対しても決して偉そうに仕事を教えたりはしないし、丁寧に解りやすく教えてあげるから、きっとそれに気づいている人がちょこちょこ倉崎さんのところに仕事のことで解らないことを聞きにくるんだと思う。
 そして、そんな風に誰に対しても接する倉崎さんはとても素敵な人だと思う。
 だけど、今の私はただ仕事を聞きにきているかもしれない女性に対しても、モヤモヤした気持ちを抱えてしまっていた。
 嫌だな。
 もしかして、この気持ちってやきもちなのかな。
 倉崎さんの彼女でも何でもないくせに。
 私はそんなことを仕事中に思ってしまっていたので、その後すぐに、いけない、仕事に集中しよう、そう思った。
 だけど、この日、私は仕事を終えて、職場の事務所から出た時に倉崎さんと小柄でとても可愛らしい雰囲気の女性が立っていて、倉崎さんはこの間の元彼女の時とは違って、その女性には優しい感じで接していた。
 だから、私はこの前と同じようにその場に立って、2人を見てしまっていた。
 するとその女性は目に涙を浮かべて倉崎さんを見上げた。
 倉崎さんはその女性を辛そうに少しだけ見て、その後、その女性の手を取って何処かに行ってしまった。
 そして、私はそんな光景を見て、ああ、もしかしたら、今、一緒に何処かへ行った人は今の倉崎さんの彼女なのかもしれない。
 だったら、私のこの恋は絶対に叶わないんだ。
 そんな風に思って、暫くその場から動けずにいた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。

泉野あおい
恋愛
人の気持ちに重い軽いがあるなんて変だと思ってた。 でも今、確かに思ってる。 ―――この愛は、重い。 ------------------------------------------ 羽柴健人(30) 羽柴法律事務所所長 鳳凰グループ法律顧問 座右の銘『危ない橋ほど渡りたい。』 好き:柊みゆ 嫌い:褒められること × 柊 みゆ(28) 弱小飲料メーカー→鳳凰グループ・ホウオウ総務部 座右の銘『石橋は叩いて渡りたい。』 好き:走ること 苦手:羽柴健人 ------------------------------------------

私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。

さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。 許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。 幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。 (ああ、もう、) やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。 (ずるいよ……) リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。 こんな私なんかのことを。 友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。 彼らが最後に選ぶ答えとは——? ⚠️好みが非常に分かれる作品となっております。

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

人生を諦めた私へ、冷酷な産業医から最大級の溺愛を。

海月いおり
恋愛
昔からプログラミングが大好きだった黒磯由香里は、念願のプログラマーになった。しかし現実は厳しく、続く時間外勤務に翻弄される。ある日、チームメンバーの1人が鬱により退職したことによって、抱える仕事量が増えた。それが原因で今度は由香里の精神がどんどん壊れていく。 総務から産業医との面接を指示され始まる、冷酷な精神科医、日比野玲司との関わり。 日比野と関わることで、由香里は徐々に自分を取り戻す……。

あまやかしても、いいですか?

藤川巴/智江千佳子
恋愛
結婚相手は会社の王子様。 「俺ね、ダメなんだ」 「あーもう、キスしたい」 「それこそだめです」  甘々(しすぎる)男子×冷静(に見えるだけ)女子の 契約結婚生活とはこれいかに。

社長室の蜜月

ゆる
恋愛
内容紹介: 若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。 一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。 仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

憧れのあなたとの再会は私の運命を変えました~ハッピーウェディングは御曹司との偽装恋愛から始まる~

けいこ
恋愛
15歳のまだ子どもだった私を励まし続けてくれた家庭教師の「千隼先生」。 私は密かに先生に「憧れ」ていた。 でもこれは、恋心じゃなくただの「憧れ」。 そう思って生きてきたのに、10年の月日が過ぎ去って25歳になった私は、再び「千隼先生」に出会ってしまった。 久しぶりに会った先生は、男性なのにとんでもなく美しい顔立ちで、ありえない程の大人の魅力と色気をまとってた。 まるで人気モデルのような文句のつけようもないスタイルで、その姿は周りを魅了して止まない。 しかも、高級ホテルなどを世界展開する日本有数の大企業「晴月グループ」の御曹司だったなんて… ウエディングプランナーとして働く私と、一緒に仕事をしている仲間達との関係、そして、家族の絆… 様々な人間関係の中で進んでいく新しい展開は、毎日何が起こってるのかわからないくらい目まぐるしくて。 『僕達の再会は…本当の奇跡だ。里桜ちゃんとの出会いを僕は大切にしたいと思ってる』 「憧れ」のままの存在だったはずの先生との再会。 気づけば「千隼先生」に偽装恋愛の相手を頼まれて… ねえ、この出会いに何か意味はあるの? 本当に…「奇跡」なの? それとも… 晴月グループ LUNA BLUホテル東京ベイ 経営企画部長 晴月 千隼(はづき ちはや) 30歳 × LUNA BLUホテル東京ベイ ウエディングプランナー 優木 里桜(ゆうき りお) 25歳 うららかな春の到来と共に、今、2人の止まった時間がキラキラと鮮やかに動き出す。

完璧美人の私がうっかりスカートを穿き忘れた事がキッカケで恋に落ちた話

春瀬湖子
恋愛
大手商社の受付として働く社会人四年目の久保美月は、ここ最近の同僚からの嫌がらせに辟易していた。 そんな日々のイライラのせいか、ある日熱を出してしまう。 意識朦朧としたままいつものように制服に着替えて持ち場へ行った美月だったのだが、おや、なんだか下半身がスースーする⋯? “こんな失態したことないんだけど!!” スカートを穿いていないことに気付いた美月を助けてくれたのは社会人二年目、営業部の水澄結翔で⋯。 助けられたことをキッカケに少しずつ親しくなる二人は-⋯ ※本編は全年齢、番外編のみR描写ありとなっております。 ※他サイト様でも投稿しております。

処理中です...