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第7話「お誘い」
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もし、倉崎さんが本当に過去に何かがあって、今は誰も信頼しない人になったのだとしたら、倉崎さんのその過去とは一体、どんなものだったのだろう。
誰も信頼できないようになる出来事なんて、誰かとても信頼していた人に裏切られたとか、そういう過去なんだろうか。
私は長谷さんから倉崎さんの過去について聞いてから、そのことばかりが気になっていた。
そして、倉崎さんの過去が気になる気持ちと比例して、今の倉崎さんのこともどんどん気になっていた。
この間、長谷さんが言ったようにやっぱり私の倉崎さんに対するこの気持ちは恋なんだろうか。
そんなことを思っていると、
「野中さんて、映画とか見る?」
とある日、突然、仕事を教えてもらって、少し休憩しようとなった時に倉崎さんからそんなことを聞かれた。
「え、はい。映画を観るのは結構、好きですけど」
私は突然、何でこんなことを聞いてくるんだろうと思いながらもそう答えた。
「そうなんだ。じゃあさ、このチケットいらない?」
そう言い倉崎さんは、倉崎さんが私に仕事を教えるために持ってきていた書類と一緒にあった深い緑色のクリアファイルから、2枚チケットを取り出し私に差し出した。
そのチケットは『僕が守りたかったもの』というタイトルの映画のものだった。
確かこの映画は今、結構、CMが流れていて、恋とミステリーが入り混じっている内容のものだったと思う。
そして、CMで一番、強調しているのは、複雑な人間の心、だけど、とても切ない想いにあなたは涙するとかいうものだったと思う。
まあ、結構、どこにでもあるようなキャッチコピーだなとは思ったけど、でも、それでも私が好きそうな内容の映画なので、時間と一緒に行く友達さえいれば観に行きたいかもと思っていた映画だった。
「倉崎さんはいらないんですか?」
要らないから私にくれようとしているのは解っていたけど、一応そう聞いてみた。
「あー、俺、一緒に映画に行くような人、今いないから」
「この映画に興味は?」
「まあ、面白そうかもしれないとは思うけど、別に観たいってわけでもないから。だから、野中さんが観るなら、このチケット2枚ともあげるよ。というかむしろ貰ってくれた方が」
「じゃあ、一緒に行きませんか?」
私は倉崎さんが私にチケットを貰ってくれた方がいいと言い切る前にそう言った。
どうして、そんなことが咄嗟に口から出たのかは解らない。
そして、そんな私の言葉に倉崎さんは目を見開いて私を見て、驚いた感じだったけど、少ししてから、
「まあ、野中さんが俺と一緒に観てもいいって言うなら、いいよ。一緒にこの映画観にいくよ」
そう、あまり感情の読めない表情でそう言った。
誰も信頼できないようになる出来事なんて、誰かとても信頼していた人に裏切られたとか、そういう過去なんだろうか。
私は長谷さんから倉崎さんの過去について聞いてから、そのことばかりが気になっていた。
そして、倉崎さんの過去が気になる気持ちと比例して、今の倉崎さんのこともどんどん気になっていた。
この間、長谷さんが言ったようにやっぱり私の倉崎さんに対するこの気持ちは恋なんだろうか。
そんなことを思っていると、
「野中さんて、映画とか見る?」
とある日、突然、仕事を教えてもらって、少し休憩しようとなった時に倉崎さんからそんなことを聞かれた。
「え、はい。映画を観るのは結構、好きですけど」
私は突然、何でこんなことを聞いてくるんだろうと思いながらもそう答えた。
「そうなんだ。じゃあさ、このチケットいらない?」
そう言い倉崎さんは、倉崎さんが私に仕事を教えるために持ってきていた書類と一緒にあった深い緑色のクリアファイルから、2枚チケットを取り出し私に差し出した。
そのチケットは『僕が守りたかったもの』というタイトルの映画のものだった。
確かこの映画は今、結構、CMが流れていて、恋とミステリーが入り混じっている内容のものだったと思う。
そして、CMで一番、強調しているのは、複雑な人間の心、だけど、とても切ない想いにあなたは涙するとかいうものだったと思う。
まあ、結構、どこにでもあるようなキャッチコピーだなとは思ったけど、でも、それでも私が好きそうな内容の映画なので、時間と一緒に行く友達さえいれば観に行きたいかもと思っていた映画だった。
「倉崎さんはいらないんですか?」
要らないから私にくれようとしているのは解っていたけど、一応そう聞いてみた。
「あー、俺、一緒に映画に行くような人、今いないから」
「この映画に興味は?」
「まあ、面白そうかもしれないとは思うけど、別に観たいってわけでもないから。だから、野中さんが観るなら、このチケット2枚ともあげるよ。というかむしろ貰ってくれた方が」
「じゃあ、一緒に行きませんか?」
私は倉崎さんが私にチケットを貰ってくれた方がいいと言い切る前にそう言った。
どうして、そんなことが咄嗟に口から出たのかは解らない。
そして、そんな私の言葉に倉崎さんは目を見開いて私を見て、驚いた感じだったけど、少ししてから、
「まあ、野中さんが俺と一緒に観てもいいって言うなら、いいよ。一緒にこの映画観にいくよ」
そう、あまり感情の読めない表情でそう言った。
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