「気になる人」

愛理

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第4話「冷たい人」

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 私が倉崎さんに仕事を教わるようになって半月が経って、倉崎さんは私が本当に疲れている時には必ずと言っていい程、休ませてくれたりするので、仕事に関しては結構厳しいけれど、本当は優しい人なのかもしれなと思い始めていた。
 だけど、そんなことを思い始めていた矢先のことだった。
 私は今日の仕事が終わり、帰ろうと事務所から出たら、出入り口付近のすぐそばに、さっき私に今日の仕事を教え終えてから事務所を出て何処かに行っていたはずの倉崎さんと私には見覚えのない女性にしては背の高いスラっとしたモデル体型で顔も凄く綺麗で、年齢は倉崎さんと同じくらいかなと思うような女性が一緒にいて、
「雪人、この間はごめんなさい。別れようなんて言って。でも、やっぱり、私、まだあなたのこと好きだから別れたくないの」
 そう言い、倉崎さんの右腕を掴んだ。
 だけど、倉崎さんはその手をすぐに振りほどき、
「俺はもうこの前で綺麗サッパリ崎川さんとは終わったと思ってたし、悪いけど俺はもう好きでもなんでもないから」
 と凄く冷たい表情と冷たい声でそう言った。
 私は倉崎さんのそんな姿を見て、倉崎さんが怖くなった。
 そして、崎川さんと倉崎さんが呼んだ女性はそんな倉崎さんに対して凄く怒って、倉崎さんの左頬を思いっきりひっぱ叩いた。
「最低! やっぱりあんたなんて最低よ。この冷血人間」
 崎川さんはそう言い放ち、出入り口付近のそばに立っている私には全然気づかずに何処かへ去っていった。
 だけど、倉崎さんは私に気づいていたらしく、
「嫌なとこ見られたな。まあ、別に誰に何を見られても本当は全然いいんだけど。でも、もう帰るとこだったのに変な場面に出くわせたのは悪かったな。そんな俺が言うのもなんだけど、早く帰れよ。明日は少し難しいことするから、早く帰って早く寝て、明日に備えとけ」
 そう言い、バイバイと手を小さく振り、事務所の中に入っていった。
 私はそんな倉崎さんに対して、せっかく優しい人なのかもしれないと思い始めていたけど、さっきの崎川さんに対する表情と態度を見ていたら、いくら別れたとはいえ元彼女の人なのにあんな風に接するなんて、やっぱり、倉崎さんは冷たい人なんだろうかと思ってしまった。
 ただ、今の私に対する言葉は明日、本当に難しい仕事を教えるから、早く寝て、あまり疲れないようにしろよという気遣いに聞こえて、さらにあんな風にバイバイと手まで振ってくれたりもしたので、心の底からはそうなんだとは思えずにはいた。
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