「君としか恋はしたくない」

愛理

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番外編「何処にいても、どんなに時が経ったとしても」― side凉一 ―

第8話「難関のはずなのに」

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  月日は流れて、俺と綾香は大学受験にそれぞれ合格して、後は高校生活を無事に終えるだけという状況になっていた。
  でも、俺と綾香にはそれ以外に今、最大の難関を抱えていた。
  それは高校を卒業した後に俺と綾香の2人での卒業旅行をお互いの両親に認めてもらうということだった。
  俺と綾香は今、18歳で、もう子どもじゃない。
  でも、それなら大人なのかと言われたら、俺と綾香の場合はそうですとは言えない。
  だって、俺も綾香もまだ高校生で、親元で、親の管理の元で暮らしているから。
  だから、俺も綾香も、幾ら結婚の約束をしていても、ずっと小さな頃から知っている仲なのだとしても、やっぱり、お互いの両親の許可を得てからじゃないと2人で旅行にはいけないと思っていた。
  ただ、俺から卒業旅行の話を綾香にした時、綾香はすぐに賛成はしてくれて、それは凄く嬉しかったんだけど。
 
  そして、俺は高校での全ての試験が終わった日の夜に父さんと母さんが揃っていたリビングルームで、
「父さん、母さん、俺、綾香と卒業旅行にいってきてもいいかな?」
  唐突にそう聞いた。
  するとテーブルを挟んで向かい合わせで座って、お酒を少しだけ飲んでいた2人は一斉に真顔で俺のことを見た。
  俺はそんな2人にドキドキしていたんだけど、
「まあ、涼一と綾香ちゃんは形だけとはいえ、結婚式もしたし、将来だって、お互いに気持ちが変わることはないでしょうからいいんじゃない。ただ、綾香ちゃんが泣くようなことは絶対にしちゃ駄目だからね」
  母さんがそう言い、
「母さんがそう言うなら俺もいいよ。ただ、母さんの言うように綾香ちゃんが泣くようなことは絶対にするなよ。それから、涼一と綾香ちゃんは4月からは大学生になるということを忘れるなよ」
  父さんもそう言ってくれたので、俺はほっとした。
  それから俺は、
「うん、大丈夫。絶対に綾香を泣かせることはしないよ。後、俺、今から綾香に2人からのお許しが出たって報告してくるね」
  そう言い家を出て、隣の綾香の家に行った。

  綾香の家のチャイムを鳴らすと綾香の母さんが出てきた。
「あら、涼一くん」
「こんばんは。綾香ちゃんいますか?」
「ええ。部屋にいるから、入って。後、涼一くん、綾香と卒業旅行にいくのよね? 綾香のことよろしくね」
  俺は綾香の母さんのその言葉で綾香も、もう話してくれたんだと嬉しくなると同時にさっき父さんと母さんに言われたことを思い出して、
「はい。絶対に綾香ちゃんを泣かせるようなことはしませんので」
  そう言った。
  すると綾香の母さんは一瞬、驚いた顔をした後、ぷっと笑って、
「やだ。大丈夫よ。綾香は涼一くんが大好きだから、一緒にいれるなら、どうなったっていいと思うから」
  そう言った。
  だから、俺は真っ赤になって、
「とりあえずお邪魔させてもらいます」
  そう言い綾香の部屋へと向かった。
  綾香の部屋に着くと俺はドアをノックして、
「俺だけど」
  そう言った。
  すると綾香はすぐにドアを開けてくれて、俺は綾香の部屋の中に入った。
「ごめんな急に来て」
「ううん、涼一に会えるのは嬉しいから全然、大丈夫だよ」
  綾香は俺の言葉に対して、また可愛いことを言ってくれたので、俺はまた思わず綾香をぎゅうっと抱きしめた。
「俺も綾香に少しでも多く会っていたいよ。後、俺の方も卒業旅行の許可もらったよ。綾香も許可もらってくれたんだろ。さっき、叔母さんに卒業旅行の時、綾香をよろしくねって言われたから」
「うん、そう。案外、あっさりといいよってお父さんもお母さんも言ってくれたの」
「俺も。何だかあんなにお互いに気合い入れて、絶対に認めてもらおうって意気込んでだのに正直、拍子抜けた感じだよな」
「うん、本当。高校生活の中でもかなり難関な問題かもと思ってたのにね」
「ああ。でも、綾香、これで卒業旅行にはいくことができるから、絶対に最高の思い出をつくろうな」
  俺はそう言った後、綾香に少し長めのキスをした。
  そして、俺と綾香は次の日から、早速、卒業旅行への準備を始めた。
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